昆虫の力(トンボ)
私たちは巣の中に入っていく。
すると、目の前には大量のハチがいた。槍を構え、こちらを睨んでいる。
「侵入者か! お前ら! 出合えー!」
と、目の前の男が号令をかけると、ハチたちが襲い掛かってくる。
私はナイフを構え、他の三人も武器を構えた。すると、女王バチが突撃していって、目の前のハチの首をもぎ取っていく。
その目は怒りの目のように感じた。振り向くとその怒りは消え、にっこりとほほ笑んでくる。
「申し訳ございません。うちのオス共が」
「あ、いえ…」
「でもいいのか? 働き手がたくさん死んだぞ」
「ハチは蜜集めるのはメスの仕事だよ。オスはただただ巣でニートしてるんだよ」
「はい。こいつらはただ巣に住んでるだけですので一応守らせてはいたんですが…。どうにもずさんで乗っ取ろうと考えていたんですよ。この巣を」
ニートって怖いよな。
ほとんど何も失うことないもん。差別してるわけじゃなく。
「ほえー」
「ハチのオスは生殖するためだけに必要なだけだからね。生殖方法はちょっとあれだから言えないけど…」
「はは。では、こちらへどうぞ」
と、頭がなくなって動かなくなった死体たちをまたぎ、私たちは奥へ進んでいく。
不思議なハチの巣で、奥に行くととても広い空間が現れた。ハチノコとかは見かけないが…。でも、この部屋はすごい。
蜜がだらりと壁から垂れている。
「ここは蜜貯蔵庫なんです」
「へぇ。スズメバチみたいな見た目してるのにあんたらミツバチなんだ」
「スズメバチとミツバチって何が違うんだ?」
「スズメバチは蜜を作れないんだよ。蜜を作れるのはミツバチだけ」
「ほえー」
ミツバチということは花粉が主食そうだが、肉を食ってるというのがあるんだよな。
私たちを襲おうとしたのも食べるためだとする。
「ねぇ、女王バチさんたちってもしかして雑食?」
「はい。花粉も肉も食べますよ。ああ、蜜を作るハチは蜜作るために花粉だけしか許可してませんけどね」
「はえー」
やっぱりか。
私は壁に触れてみて、一口舐める。
「うわっ、すっげえ甘い。けどさらさらしててとても食べやすそう」
「お、マジだ。ワグマとビャクロもなめてみろ。甘くておいしいぞ」
この蜂蜜はいいな。パンケーキとかにかけて食べてみたい。
私たちがそれに気を取られていると、女王バチさんはこほんと咳払いをした。
「では、その蜂蜜にちょっと手を加えますね」
と、蜂蜜を掬い、なにか粉を入れる。
そして、私に手渡してきた。にっこりとほほ笑んで渡してきたので思わず受け取るが…。なんだこれは。怪しすぎるだろ。
何の粉だそれは。
「何入れたんですか?」
「昆虫の化石を砕いたものです。あなた方に力を授けるために入れました。本当はこの粉だけでもいいんですけど、如何せん苦いと思うので」
「なるほど、シロップの代わりか…」
私は手渡された蜜を飲み干してみる。
すると、なんだか体が光り始めた。私の背中から何かが生えてきている気がする。その生えてきたものは、トンボの羽根だった。
「うおっ、羽根!」
「トンボの羽根です。トンボがいいとおっしゃってましたよね?」
「おほっ、すげえ!」
飛べるのだろうか。
《スキル:高速飛行 を取得しました》
《飛行が可能となります》
《飛ぶときは羽根を出すと念じてください。しまう場合は羽根をしまうと念じてください》
私は早速飛んでみる。
飛びたいと願うと、羽根が動き出し、飛び始める。すると、結構なスピードが出ていた。なるほど、これは感覚で操作した方がいいな。
私は右に、左に飛ぶ。おほっ、これはいい! すごくいい!
とどまるときはどうすればいいのだろう? とどまることはもしかしてできない、とか? いや、できるはず。
私はスピードを緩める。私は浮いてる状態になったのだった。
「滞空もできると。おっけー。大体感覚は把握した」
私は、三人の元に戻った。




