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無重力  作者: 雨世界
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 二人が今いる場所は百花と鏡の通っている大学の(二人は同じ大学の大学と大学院に通っていた)近くに新しく建設された宇宙ステーションの記念館の館内だった。

 この場所には宇宙に関する資料や、二人がさっきまで見ていた引退した人工衛星の実物や、それに本物のもう使われていない宇宙ロケットなども、展示されていた。


 この場所に百花を誘ったのは、鏡だった。(どこでもいいというから、鏡が前からいきたいと思っていたこの場所を百花に提案すると、百花はそこでいいと鏡に言った)

 鏡は宇宙工学を専門にしている大学院生で、もし論文や就職がうまくいけば、将来鏡はこういった宇宙関連の技術開発に関わることになるのだという。(鏡本人は人工衛星の開発に関わる仕事がしたいと思っていた)


 百花が後ろを振り向いて、鏡を見ると、鏡はとても高い天井を見上げていた。百花が鏡の視線を追ってみると、そこには月の周期をあらわしている天体模型が飾ってあった。(本当にすごく高い場所にその天体模型はあった)


「宇宙関連の技術は今、すごい速度で進化しているんだ。本当にすごい。本当に魅力的な分野だよ。いろんな発見も続いているし、もしかしたら、宇宙人と出会えるかもしれないし、まあ、そこまで贅沢は言わないとしても、宇宙の秘密の片鱗くらいは僕が生きている間にわかるかもしれない。もしそうなったら、すごく嬉しいよ。宇宙が本当はどんな形をしているのか、すごく興味があるんだ。宇宙は本当は広がり続けているのか、あるいは知人でいるのか、閉じているのか、あるいは、開いているのか、マルチバースなのか、つまり、多元的宇宙はあるのか、それとも宇宙は一つだけなのか、そういうことを、考えるだけでもわくわくするよね」嬉しそうな顔で鏡は言う。


 百花はそんな鏡の横顔を見ながら、自分の受験のころのことを思い出していた。

 あのころは、毎日のように鏡が百花の横にいて、いつも一生懸命になって、真面目な鏡は百花に勉強を教えてくれた。


 まだ、ほんの一年くらい前の話だというのに、それはもう随分と昔の話のように百花には思えた。百花は「どう、わかった?」と言って、自分に向かってにっこりと笑う鏡の顔を思い出した。それは百花が、今年一年、ずっと求め続けていた風景だった。

 ……そういえばあのころ、私は鏡さんのことを先生って呼んでいたんだっけ? なんだかすごく懐かしいな。

 そんなことを百花は思った。


 鏡が百花の家庭教師をやめてから、(二人は同じ大学にある大学と大学院に通っているにもかかわらず)こうして二人だけで話をしたり、どこかに出かけたりすることは、今日が初めてのことだった。

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