幼馴染みのいる町
今から関岡が俺と黒髪の美少女(ここではAさんと書く)を目撃したという話を簡単にまとめる。
関岡は昨日の夜、俺とAさんが手を繋いで、仲良く話しながら歩いていることを目撃したそうだ。場所は練馬区の中村橋駅の近く。俺の家の近所だ。ただあたりは暗く、道路を挟んで目撃したので誰かはわからなかったらしい。男の声が俺であることに気づいたくらいだとか。ちなみに関岡の家は、中野区の鷺宮にある。
「ああ、俺の妹だよ。梅沢菜月。名前言えばお前でもわかるだろ。今日は仕事でいねぇけど、聖峰の中等部に通ってるから会おうと思えばお前でも会えるよ」
「・・・あー、あいつか。一緒に仕事したことあるわ。そうかお前・・・ズルすぎるぞ!まどまどが幼馴染みで、しかも菜月ちゃんが妹だなんて・・・」
ちなみに、『まどまど』とは円香のニックネームである。そして・・・
「彰人のバカ。私がいるのに・・・」
一番廊下側の席に座っていた円香が何か、俺に向かって小言を呟いていた。
◇ ◇ ◇
結局、この日は円香と一緒に家に帰ることになった。学校から家までは歩いて15分ほど。そして、俺と円香が歩いて家に向かう途中、事件は起きた。
「・・・昨日、菜月ちゃんと出かけたんでしょ?」
「ああ、関岡の話聞いてたのか」
「うん。何してたの?」
「夕食の後、菜月から買いたい物があるって言われて、一緒に買いに行ってた」
「へー、そうなんだ・・・手を繋ぎながら、一緒に買い物ねぇ・・・いくら兄妹でも、恋人のようなスキンシップはどうかと思うよ・・・」
円香が俺に向けて目を睨みつける。今にも刃物を向けそうで怖い。
「私と彰人は、ゆりかごから墓場までずっと一緒なの・・・」
「円香、それって・・・」
「うん。私は彰人のことが大好き。世界で一番、誰よりも愛してる・・・って、何言ってるの私!前言撤回!彰人のバカ!アホ!女たらし!」
「やっぱお前怖いぞ!お前みたいなヒステリー女は絶対無理無理無理!」
「誰がヒステリー女ですって?今すぐ撤回しなさい!このもやし男!」
「うわっ、ゴメンゴメンゴメン!お前がそんなに怒り出すとは思わなかったよ。撤回します!」
俺が受け身を取り、何とかかわすと、円香は興奮が冷め、我に返る。そして咳払いをし、俺の方にニッコリと少し怖い笑顔を向けてきた。
「ゴホゴホゴホッ・・・」
「何だよ、円香。急に改まって」
「梅沢彰人くん?この事は今すぐ、全部忘れなさい。これはお姉さんとの約束です。いいわね?」
「・・・はい。もちろんです」
円香は少し、いや結構怒っているっぽい。それに、すごい早歩きをしている。それによく聞こえなかったが、小さな声で何かを呟いているようだった。
俺はそんな円香を横目に、家路につくのであった。




