婚約破棄された悪役令嬢の私はもふもふなダンジョン経営でスローライフを目指します!
その日、私は婚約破棄を言い渡された。
私が悪役令嬢として、婚約者の思い人を害したというのが理由だそうだ。
はっ! ちゃんちゃらおかしいっての。侯爵令嬢である私が、王国の第二王子の婚約者におさまったのは7歳の時。年齢も近いし家柄も十分とかどうでもいい理由で決められて、それでもそのためにいろいろと勉強をして、それに相応しいと思ってもらえるような令嬢になれたと思う。
それをだ。衆人環視の卒業式も兼ねた舞踏会でぶちまけると言うのだから、底意地が悪い。どっちが悪役だって話だ。可憐な乙女である彼女は、弱弱しく私の婚約者――元婚約者だな。――に寄り添ってぱちぱちと瞬きするたびに涙をこぼしていた。女優か!
「あーあ。こんなことなら、もっと早くから自分の好きなことをして生きておけばよかった」
そして私は今、領地に戻ってダンジョンのひとつを任されている。
このダンジョンにはもふもふの毛並みの子たちが発生することで有名で、発見者はなんとこの私なのだ。私の生まれ育ったこの国では、ダンジョンは発見者に第一の権利がある。もちろん見つけたお宝などがあれば、発見者にその権利は渡すのだが、うちのダンジョンにはお宝はない。いや、あるにはある。
このもふもふの毛並みの魔獣たちこそが、このダンジョン唯一にして無二のお宝なのだ。
「ぐりー、元気にしてた?」
グリフォンのぐりは私の相棒だ。大事な仲間であり、私が初めて契約を結んだ魔獣でもある。わしわしと頭を撫でてあげると気持ちよさそうにグロロロロと喉を鳴らした。
愛玩用に羊型の魔獣は大人気だし、私はたまにダンジョンに入って魔獣の生息地域の確認や現状の維持のために必要なものの確認をして一日を過ごす。
まさに憧れていたスローライフ! あくせくとして人の顔色をうかがって過ごす令嬢生活には飽き飽きしていたのだ。
「……婚約破棄してもらって、よかった」
こちらから破棄することは出来ない婚約だったから、渡りに船だった。だってこんなに幸せなのだもの。
私は今日も笑顔で頑張れる。もふもふとした毛並みにうもれて過ごすのは、本当に楽しいし幸せ。多分、私にとってこのダンジョン経営は天職なのだ。
月狼のるーが私のお尻をスカート越しにつんつんと突くので、みんなが待っているのが分かる。
「今日もいっしょに頑張ろうねっ!」
そして今日も楽しくて幸せな一日が始まろうとしていた。
キーワード、盛りに盛ってみました。
むしろどこまで盛れるか試しました。すいません。
1000文字という制限のため、名前は省略。
ちゃんと書くと面白くなりそうな話だな、と思ったりなんだり。