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死人ちゃん!  作者: 月季夜
永久中立都市ホルツミュンデ
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第1章 白と黒の雪


図書館とは何処か息苦しい場所だと思っている。

読書や勉強目当ての利用客が多い為、静かにしなければいけない。

必要な用件なのに少し喋るだけで赤の他人に睨まれる。

それが嫌だったので図書館は学校のでも県立のでも本の貸出以外では利用はしなかった。

はっきり言えば、重苦しくて居心地が大変悪い。


ズィーベン・ピブリオテカ。


人は皆、ズィーベンと呼ぶらしい。

それは図書館のようで図書館ではなかった。

天井は中央部分ががくり抜かれ、外と繋がっている。

他は魔法陣のような不思議な模様が描かれていた。

太陽光が差し込むため、人工光より満遍なく書庫を照らしている為、温かい日差しと天井から入ってくる心地の良い風に当たりながら読書。

建物は円型のようでそれに沿って本棚が設置されている。

十字には本棚はなく、通路のようだ。

本は綺麗に敷き詰められており、空きは1個もない。


外装は分からないが内装は洋風だが趣のある装飾があり、壁や床は淡黄色で綺麗に掃除されているのか遠目でも目立った汚れはなくつい最近出来たと言われても違和感がない。

壁には所々、正方形の穴が空いておりそこから花や草木地面には溝が掘られ透明な水が静かに流れている。

太陽光が直接差し込む中央部分は水の在処となる噴水が備わっており、囲むようにビストロテーブルとイスのセットが12個、時計のように設置されている。


視界に入るだけの情報だが概念を壊した開放的だが淑やかで美美しい、それがズィーベンのという名の図書館だと思えた。

現在地であるズィーベン右翼3階客間の前、落下を防ぐアンティーク調の黒柵から身を乗り出すと全体が見渡せる。


「危ない。修理費は高いぞ」


「そっちの心配かい。今の体重は多分羽毛より軽いし」


「少なくともあそこにいる黒魔女よりかは軽いだろうがな」


首根っこを掴まれ、乱雑に廊下へ引き戻される。

そのまま引きずられ、湾曲の廊下を進んでいくと柵と同じ柄をした螺旋状の階段の前に到着すると代理を腕膝からすくい上げ、右肩に乗せた。


「紳士っすな」


「どうも」


お礼に照れる事なく無表情のまま、青年は階段を下る。

以前では絶対にされないような異性の肩に乗るという行為にさほど驚く事はなく、蜜を食しにきたであろう蒼い粉と光の尾を引く蝶のような生物に触れようと手を伸ばす。

警戒した蝶はひらりと躱し、青年より早く1階まで降りていく。

それを見た青年は閃いた顔をし、柵の上に乗った。

背が高く、その上に座高の分があれば頭上の階段に頭をぶつけるのは必然である。鈍い痛みが一気に押し寄せた。


「訂正。紳士じゃない」


「そうか」


「あぇ」


「こっちの方が早い」


また首根っこを掴まれ、そのまま空中に投げ出された。

突如きた浮遊感に頭の痛みは消え、これから待ち受ける落下ビジョンを脳裏に浮かべる。

投げ出した本人は変わらず無表情であり、スカしたムカつく顔が遠のいていく。


「ぎぃやあぁぁぁぁぁあ!!」


甲高い悲鳴はズィーベン全体に響き渡り、谺響する。

小さい体は重力の手に引き摺られ抗えず、落ちていく。

1階で経緯を見ていた人物の唇からハーブのように美しい声が2つ、重なって鼓膜を通った。


「「アミュ・レート」」


短い詠唱に反応し、壁に張っていた蔓が急速に成長し代理に向かって伸びる。

素早く腰に巻き付き、落下の衝撃まであと数センチという所で体が吊り上がり、止まった。


「し、死ぬかと思った」


冷や汗が頬から地面に落ちた。

暴れているように脈を打ち、荒い呼吸を繰り返す。

気を落ち着かせている間に代理を助けた2人は本棚の間を縫って、歩み寄る。


「管理人さんに投げられた子がこんなにも愛らしい女の子だったなんて~ギュッてしちゃいますね~」


「ふんっ、相変わらず気持ち悪いですねぇ?見ず知らずの他人に抱擁なんて頭がイカレてます」


雪のような淡い色合い髪をした美少女が微笑みかけ、黒曜石のような美しい髪をした美少女は悪態を付きながらも珍獣を見るような紅い瞳でこちらを見ていた。


「私は白雪って言います~。隣にいるのは黒雪です~。はい、おいでくださいませ~」


白雪は自己紹介をしながら、腰に巻きついた蔓に触れる。すると、蔓は一気に壁まで縮み、本来の姿へ戻った。

支えが無くなった体は白雪に受け止められ、そのまま抱きしめられた。

大胆に開いた胸に顔が挟まれる。

同性同士でもこのマシュマロのような感触は初めてだ。


「はひぃ、可愛いですなぁ~黒雪、この子妹にしませんか~?」


「頭が常にお花畑の馬鹿とは知っていますが呆れますね?というか、別に貴方とは姉妹でもありません」


「えぇ~、姉妹じゃないんですか~?」


「はぁ、貴方と話していたら馬鹿が移りそうです」


「…」


「…あの、私になんの用です?そんな哀れみの目で見るのは辞めて頂きたいのですが」


「あ、いや…いずれ成長するしあんま気にしないで生きて…ください?」


「何処の部位を見ていったんですかね、不服です」


黒雪は眉を吊り上げて、更に睨みつけた。

白雪は豊満な胸であるが黒雪は断崖絶壁という弄りが似合うような胸をしていた。

白雪は胸から代理を離しながらも視線を上に流し、思い出したように口を開いた。


「大丈夫ですよ黒雪~!明日からもっと、沢山牛乳飲みましょうね~?あ、でも、昔から黒雪って私より飲んでますよね~?あれれ、不思議ですね~?」


「二度と口を開けないようにしましょうか?花畑女め」


黒雪の憎悪の矢が白雪に向かっているがふんわりとした彼女のオーラに矢は刺さるどころか消えている、そのような雰囲気だった。

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