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66、拠点その2

もの凄く説明回です。

 瑞穂はポットの湯で紅茶を作り、香りを楽しんでカップに口をつけた。

 続いて手元に広げたクッキーも、もれなく堪能する。


「ふむ、満足……♪さてさて……」


 持ってきた地図をゆっくりと見下ろしてみた。

 この地図はバーダフェーダを中心とした近辺の地方状況が記載してあるものだ。


 指で位置をなぞりながら確認していく。


「地図はトライディア、ルバニア王国の都市が一つ、バーダフェーダが中心に描かれている。そして北西にあるのが話題のメリディシア遺跡。遺跡"群"とも言われているけど、みんな適当に言ってるみたいなのよね……。ま、いっか。さらに山の峰を越えたところにあるのが幻影都市リズクレイム」


 リズクレイム――この世界の住人が名付けた前世の母国(リーダルハイム王国)の都の名。

 真の名はエルディンという。



 最初、幻影のように空に映し出されたリズクレイムを見たときは驚きを隠せなかった。

 

 大気の特異な魔素の流れの影響で、北方にあるはずのリズクレイムが映し出されるのだろうということだった。



 その後、この街で生活していくにあたり、そこそこの頻度で街から拝むチャンスができた。おかげで、最近では慣れてきた。


 

「城、城か……」

 信じたくはないが、件の幻影都市で一番に輝き目立っていた城は、リーダルハイム王国の王城――ルーデンベルグ城であると思われた。


「トライディア(この世界)とエンフェリーテ(前世世界)の関係性……」

 瑞穂は騎士団で仕事=小間使い=雑用する最中に、情報という情報を本、人々の会話、街の人々の流れから手に入れることに専念していた。

 地球にいたころには考えられないほどの働きぶりに自ら感嘆するくらいだ。

 そんな自分の働きによって、今このトライディアという世界に何が起こっているのか仮説が立ったのだ。


 小さな欠片の情報を繋ぎ合わせ、且つ、自身の魔道知識から出した大凡の結論は――。


 前世で崩壊したリーダルハイム王国は、異世界にその一部を干渉させる形で散ったような状態にある、ということだった。

 つまり、数ある異世界の一つであるトライディアにそのリーダルハイム王国一部分が切り取ったような形で現出しているのだ。


 付け加えるならば、あのルーデンベルグ城が本物であるならば……。

 そして、辿り着けたなら……。


「私は、恐らく地球に帰還できる」


 それこそ、この異世界を東奔西走して新たな帰還の手がかりを探さずとも、富士山のごとく見えるあの幻影の城に辿りつける方法さえ見つければ……。


(あの城には前世の私が残した様々な魔導遺産が沢山ある。束縛の石版の術の解呪も王家の宝物を取り出すことが出来れば可能なはず。もちろん、世界を"跳ぶ"のに必要な材料も……ある)

 


 さすがに異世界を渡る魔道具の完成品はなかったが、作る材料は揃っていたはずなのだ。


 当時、前世の瑞穂は興味が無かったから手は出していなかったが、可能な材料は研究室にごろごろしていたような――気がするのだ。

 若干うろ覚えなのはご愛敬。何しろあれから生まれ変わりを挟んでいるので、細かい記憶が曖昧なのだ。

 とどのつまり、ルーデンベルグ城に到達出来れば打開策が講じられる。


「ふうっ、やっと希望が見えてきた」


 残念ながら、ルーデンベルグ城到達には相当な労力が必要だろう。


 ルーデンベルグ城はエルディンと呼ばれるリーダルハイム王国の王都にある。


 しかし、この世界ではリズクレイムという都市名が付けられている。

 しかもリズクレイムの端々に当たる場所がメリディシア遺跡群と呼ばれ、王家の管轄土地となっている。

 


 瑞穂がこの世界に初めて降り立った時、森を抜けて見つけた左右に延々と続く壁と中心にある閉ざされた門。

 あの時は騎士団と盗賊の戦いに巻き込まれて、冷静に分析できなかったが、どこかで見たといった既視感だけは抱いていたのだ。

 

「さすがに久方ぶり過ぎて、すぐに気づけなかったけど、あれが王都エルディンの基幹街を守る城壁だったのよねぇ。あの城壁は特殊な魔術フィールドが展開されていたから、恐らくこの世界の人々はまだ中には入れていないはず」


 元々、エルディンの基幹街周辺だって、中心部じゃないほどにしろ、様々な魔術実験街が立ち並んでいたのである。

 ちょうどその基幹街の外れ、端々の一帯が、この世界の人々がメリディシア遺跡群と呼んでいるところと重なることに気づいたのは数日前だった。


(恐らくだけど……)


 エンフェリーテの者にとっては魔術フィールドに入れる必要性も感じられていなかったレベルの場所が、リーダルハイム王国が滅び埋もれて遺跡化した。

 王都エルディン一帯が現出し、この世界の人々が唯一足を踏み入れられるその辺りの地域にまずはルバニア王家の探索隊が入った。そこでこの世界の人々にとっては高レベル戦力となる遺物を発掘してしまった。しばらくはルバニア王家がその知識と財産を独占しようとしていたのだが、元々ルバニア王家にエンフェリーテに匹敵する魔術学があるわけでもなく、低レベルでも得られる遺跡の力の上澄みのみを得て運用していたのだろう。


 けれど、それも長くは続かない。

 元々、あのリズクレイムがある一帯はただの野山だった。

 そこにある日突然リズクレイム一帯が出現したのは、多くの国民が目にしている。

 王家は長年、その端々を探査しているのは隠し切れない。


 となれば、遺跡の遺物の噂は遺跡には宝があるぞという話になって、世間を巡る。

 いよいよ隠し切れなくなったわけだ。


 盗賊も盗掘に来る。騎士団が追い払うのにも限界がある。

 それならいっそのこと、ある日突然出現したリズクレイムの端々一帯の『メリディシア遺跡群』を開放し、冒険者にでも何でも一般人に探査させる。

 そして、余程の宝を探し当ててしまった者には王家が干渉し交渉し、その遺物をもらい受ければよい。

 例え、嫌がられても、王家の力でもってして、"交渉"すれば良いのである。


「安易な考えだけど、思いつきやすい話だし、あり得るわよね」



 そして、ついにルバニア王国がメリディシア遺跡群を開放することを決めたとお触れが出た。

「遺跡探査解禁日は明日だっけ」


 このバーダフェーダという都市に縛られている瑞穂は行けない。

「普通に冒険者やってたら行けたのに、ほんとにもうっ」


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