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64、報告


 翌日、ディアス隊2班の初の集合が掛かった。

 呼び出された騎士団棟の打ち合わせ室に入るとケイが既に席に着いていた。瑞穂とジョーは同時入りであった。お互いマイペースなタイプらしく、ディアスに変わって実質隊を取り仕切るケイはこれから瑞穂というお荷物がついて大変だろうなと、当事者ながらも思ってしまう。


 そして、やっぱり他の隊員は別用で居なかった。当然のごとくというべきなのか、隊長のディアスもいない。

 というわけで、前回に続きこぢんまりとした集まりとなってしまった。


「昨日の件なんだが。今朝、警備隊から連絡が入ってな。妙な話を聞いたから伝えておく」

「今朝見かけたよ。あの警備隊か」

「ああ。あの冒険者達、何故乱闘騒ぎを起こしたか、動機が曖昧なんだよ」

「どういうことです?」


「確かにいがみ合う土壌は前々からあったが、手を出すほどでは無い仲だったんだとさ。だが、言い合いしているうちに次第に憎しみというか、純粋に殴りたいという戦意が湧いてきた――らしい」

「どういうことだ?」

「分からない」

「何か――戦意本能を突くような魔術的な要素が仕掛けられていたとかか?」


「ミズホ、君は気付いたか?」

「いえ、あの場では極普通の喧嘩騒ぎとしか認識出来ませんでした」


 誰かが、何かをしたという印象が残る動きも覚えが無い。瑞穂は手を顎に当て、一考するが思い当たる節がない。


「おまえ、魔術師だろ?こう、感じ取るとか……ないのか?」

「魔術師は便利屋ではありません。ましてや、私は低レベルですので、意図的に魔力を追うことでもしない限り、細かい魔力の流れを感じ取るなんていう高レベルな真似は出来ません」

「自分で言ってて悲しくないか?」

「すごく悲しいですよ!」

 言わせんな馬鹿!という気分であるが、事実は事実だから仕方ない。


 実は魔力の流れを辿ることは前回のテロ騒動の時では出来た。しかし、あれは意図的に意識を展開した時だ。

 勝手に騒動が起きてる空間で、不意におかしな魔力の気配を感じ取れるかどうかはまた別なのである。

(けど、最近魔力の増強もできたし、もしかしたら気づけたかもしれない)


 正直に言うと、一番の問題は戦闘の勘の問題なのかもしれない。咄嗟の修羅場で魔力を追おうとする無意識の、勘。


 これが上手く働く時もあるし、働かない時もある。

 瑞穂のその日の体調によるというのが、今の状況で、恐ろしく適当な設定なので大見栄を切るに切れない。


(勇者に受けた力の封印の弱まり具合が関係しているかもしれない。時々"ほつれ"みたいなものを感じるときがあって、そんな時は恐ろしく冴えているのを実感するんだよなぁ……。うーん、一度、自分自身について洗い直す時期が来ているのかもしれない)


 そんな瑞穂の思考をよそに話は進む。

「最近、メリディシア遺跡の解禁に合わせて街の住人も増え、小さな諍いも増えてきている。人が増えると澱みも増えるからな。用心に越したことはない。来週からは初夏の警備習慣も始まるからな。騎士団の俺たちもくれぐれも警戒を怠らないようにしないとな」


 どこの国の警察だそれは、というツッコミを思わず呑み込んで

「はい」

 と返す。騎士団所属とは言え、その実は彼らの小間使い的な扱いと聞かされたばかりの私ですけれども、給料の範囲内で精一杯頑張りたいと思います、という気持ちを込めて。


 トライディアの騎士団がやっていることは、日本の警察業に近いこともしているのだろう。


「へーい。まあ、適当にやるわ」

「お、おまえら……!頼むから真面目にやってくれよ……!」

 ケイは頭を抱えた。

 

 ジョーと同じくくりでやる気なし隊員とされたことには、微妙に抗議したい気分の瑞穂であった。



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