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53、今更ながらな知識とか

「ここでしばらく腰を落ち着けることになるみたいだし、僕からの祝いの品を受け取ってくれ」


 女子騎士団寮へ移る数日前にユースロッテの言付けと共に、あさぎ亭の瑞穂宛に手で抱えられる木箱のケース一箱分が送られてきた。


 ケースの上にはメモ書きが添えられていて、前述したユースロッテの言葉に続けて、「しっかり勉強しておくよーに」と付け加えられていた。


 木箱の中身を空けてみれば、旅行者向けの季節の知識本やら金銭の価値についての本が入れられていたのだ。


 いわゆる"アランガルド大陸の歩き方"に関連するものばかりを揃えて投げ入れてくれたようである。


 本の入り方が相当無造作な感じを受けたのはご愛敬。ユースロッテはこれでも気に掛けてくれたのだろう。ここは素直にありがたく受け取っておくべきだ。


---金銭の価値について---


 ルバニア王国の通貨単位はゴールドと呼び、Gと記される。物価も日本とそう変わらないようだ。

 ルバニア王国を中心とした周辺諸国は通過としてはゴールドを広く使用していたり、自国の通過と併用していたり様々らしい。しかしながら、ゴールドが主要通貨として浸透していることは瑞穂にとってはありがたかった。


---気候帯について---


 日本が温暖湿潤気候(最近は異常気象で亜熱帯よりの様相もあるがここでは温暖湿潤としておく)だったのに対して、バーダフェーダの気候はヨーロッパで言うところのイタリアあたりの気候と似通っているようだ。恐らく地中海性気候と似たものだと推測される。とにかく、日本のような湿度の高い地獄の夏はうまくいけば味わうことはない……はずである。 


---季節や暦について---


 季節も大して日本と変わらない。四季があり、現在は初夏に入りはじめている時期らしい。月は十二ヶ月であり、一月は31日(月によりばらつきはある)と瑞穂もすんなりなじめそうだ。


 暦については、瑞穂が今いる大陸(アランガルド大陸)では『ガリアド暦』という暦名が採用されているらしい。ガリアド暦はアランガルド大陸で一番力を持つ宗教の総本山が定義している。


 多くの国々が乱立するこの大陸では、各々の国にて王国暦やら帝国暦などが存在するが、一般人は使いにくいということで、自然と公用暦として『ガリアド暦』が使用されるに至ったらしい。


 国の締め付けが厳しいところでは、自国の暦を強制させるところもあるが、ルバニア王国においてはその点はおおらかで、現在のところは王国暦はあるものの、ガリアド暦を主に使用することを認めているとのことである。


 一方、月の表現は一月、二月、三月……という名称ではないらしい。一月のことを『蒼の月』というように名称付けで表現しているようだ。


 しかしながら、瑞穂には自動翻訳魔術がある。現地人がいかにご大層な名称で月を表現しても、瑞穂には「一月、二月、三月……」と聞こえてくるし、瑞穂が「一月、二月、三月……」と言っても現地語に変換されて楽を出来るのである。


 それに気づいたのは、ユースロッテがくれた本に載っていた文章に、瑞穂にとって不具合がある単語にはきちんとルビが振られていることに気づいたからである。思い返せば、イレナド砦で読んだ本にも、分かりにくい単語には日本語に変換したルビが振られていたのだ。


 瑞穂は翻訳魔術の存在をもはや疑いもしない段階にきている。もし無事帰還し、すべての問題が解決したら、瑞穂の現代魔術士の研究課題として、「翻訳魔術」をテーマにしたいと本気で思い始めていたのは余談である。


「ふうっ……。今日は本を読んだだけで一日が終わっちゃったなぁ。でも、今この世界が"いつ"なのか分かったのは良かった♪」


『つまり今は、異世界トライディア、アランガルド大陸、ルバニア王国が都市バーダフェーダにおいて、季節は初夏の始め、6月5日である』


「微妙に日本にいた季節とずれがあるんだよね~。日本はまだ4月だったからね~。この世界に来てから大体一ヶ月未満と考慮すると、ざっくり一ヶ月ほど季節がずれてるのかな?ふむふむ」


 知りたがりの詮索好きで面倒くさいユースロッテであるが、味方にするとありがたい。知識の輸入は彼を頼ると捗るかもしれないと、瑞穂はちょっぴし感謝したかもしれない日であった。







「へっくしょん!」

「どうした?珍しい。風邪か?馬鹿は風邪引かないというんだが」

「ちょっと!僕は知識人枠なんだけど!?その扱い変じゃない!!??」

「ただの迷惑変人魔術師だろう……」


 瑞穂が本を読みふけっていた頃、こんな会話がユースロッテとディアスの間で交わされたとかないとか。(これこそ不毛な余談)


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