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52、服を買いに行こう!

本編とは関係無いのサブエピソードです(^^)読み飛ばしても全然問題なしです。

 騎士団から正式に呼び出されるまでの宿滞在中に、瑞穂は服を揃えに古着屋へと向かった。


 フランス人は七着で着回せるらしい。

 では異世界の地で何着あれば、瑞穂は生活を回していけるのだろうか。


(哲学、哲学だわ私……)

 瑞穂は古着屋店内ででかなり悩んでいた。手元にあるお金は決して多くはない。その中で当面の生活費を捻出していかねばならないわけで、しばらくは寮に滞在出来るとはいえ、決して無駄遣いは出来ない状態である。


 騎士団の事務局から案内書が届いていたので、それによると、瑞穂には騎士団で働く者の一員として、制服が支給されることになっている。制服は二着でそれをローテーションして使い回せとのことだった。中に着るブラウスなどは自前で用意して良いとのことだったので、まずは白いブラウスを三着購入するのは決定済である。


(あとは、普段着を三着は欲しいよね。学校の制服もこの際だから着回しに含めよう……。となると、四パターンは確保ね。これでなんとかやっていくしかないわね……)


 家のタンスを異世界召喚したい(無理だが)衝動に駆られるのをグッとこらえ、瑞穂は良さそうなものが無いか店内を物色していった。


 偶然入ったこのお店は品揃えが良く、必要な衣服以外にも目が向いてしまうくらい楽しい空間であった。本気を出してチェックすれば、三時間くらいは居座れるかもしれない。


 この地域の特徴だろうか、衣服は中世ヨーロッパの民族衣装を織り交ぜたようなデザインが多かった。ただし、機能面も重視して作られており、その点においては現代的な意匠も垣間見られる気がしないでもない。


 とにもかくにも、ファンタジー世界が大好きな乙女心を持つ瑞穂は、随分好奇心を刺激されたのは言うまでも無い。


 ざっと小一時間ほど経った。


 さんざん悩んだ末に、町娘風の上下の組み合わせをなんとか見つけ、それら一式を抱えて瑞穂は精算台へと向かったのだった。


 

 店番をしていたお兄さんが手際よく折りたたんで纏めてくれ、瑞穂に確認してきた。


「自前の買い物袋持ってきてる?」


(あ、しまった!)


 この世界は中世ヨーロッパほどの文明だ。まだナイロン製の使い捨てレジ袋なんてものは存在しない。最近は地球も環境問題でマイバッグが流行っているが、こちらではマイバッグこそが主流である。


 焦っている瑞穂みてクスクス笑うと、店番のお兄さんは戸棚から布袋を出してくれた。


「お客さん、初めて来てくれたでしょ?今日はサービスさせてもらうから、この袋使ってよ。意外と耐久性は良いから、また今度ここにくる時に利用してくれると嬉しいな」


 そう言って、店番のお兄さんは爽やかに微笑んでくれたのである。そして、よくよく見てみれば、肩まで無造作に伸ばしている栗色の髪と整った癒やし系の目鼻立ち、そして長身という三拍子の青年であることに気づいた。

(性格も顔もイッケメェエエエエエン!)


 瑞穂は三本以上の矢で心臓が打ち抜かれた気分である。


 この世界に来て、幾星霜……。かつてここまで裏表なし(に見える)の爽やか優しいイケメンに出会えただろうか?


 否!


 癖のある厳しい騎士団の男性陣に、瑞穂の心が癒やされたことは未だかつて無い。(やや誇張)


 もちろん、このお兄さんも商売だからという仮面を被っているのかもしれない。


(それでもいいのよ~。まさに干からびた心を潤す一滴の清涼水!)


「あ、僕はここの古着屋の店長で、ニスマンっていうんだ。じゃあ、再度ご来店をお待ちしております♪」


 そう言って、ニスマンは瑞穂の手の上に手を重ねてから商品を渡したのだった。


「はいいいいっ(目がハート)。ありがとうございますっ」


 商品を受け取ると、思わず瑞穂は小走りで店を出て行ってしまった。

(あれはマズい、中毒になる。男性アイドルにハまる心理だ、コレ)


(爽やかイケメンに優しく手を重ねられるなんて、一応乙女なのでたまりません!ありがとうございます!これからここに来ることをを目標にして不肖魔王の右腕、騎士団勤めを頑張らせて頂きますっ)



「ありがとーございましたー」

 照れて走る少女の姿を見送りながら、ニスマンは軽く手を振って見送る。


「いや~、かわいいなぁ。あれくらいの年のコって、思わずからかいたくなる」


「おい、また純粋な女の子誑かしてんのか?」


 店の奥から暖簾越しに現れた青年が、呆れがちにニスマンに声をかけた。


「いやいや、ちょっと毛色の違うお客さんが久々に現れたからさ。ついつい声を掛けたくなっちゃって♪」


「その爽やか面でイイ性格してるのは、卑怯だよな……。いつか、天罰下るぞ、おまえ……」


 バイトの同僚は遠い目をして、罪悪感の無さそうなチャラ男ことニスマンにチョップを入れるのであった。

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