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第8話 4人の魔女

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「秋作先輩は確かに私に告白をしました。しかし私はそれを振りました。なぜなら、ある理由があるからです」

その理由を僕は聞いてみるが鳴霞は教えてはくれなかった。

「ただ、1つだけ覚えておいて欲しいことがあります。それは......秋作先輩を轢いたまま逃げた犯人が捕まっていないことです」

「鳴霞?どういうことだよ、僕を轢いた犯人はまだ見つかっていないって事はどういう関係があるんだよ」

鳴霞は黙ったままで何も答えなかった。

人気のないところで待ち合わせしていたため、沈黙が数分間流れる。

その沈黙を破ったのは、鳴霞だった。

「秋作先輩、今日の話は忘れてください。これは、ただ私が深く考えていた事なので」

結局告白のことは忘れてしまったのか、それとも意図的にやめたのかわからなかったが、僕たちはこのあと図書室に行って本のことに関するクイズを一緒に楽しんで問いていた。


「秋作先輩、次は純恋先輩ですよね?」

「そうだよ、じゃあ、最後の劇も頑張ろうね」

「はい、お気を付けて」

僕はこうして鳴霞と離れた。

鳴霞といると気持ちが和やかになり、何より少し癒される。

小動物みたいな鳴霞を見るのが僕は好きだ。

そして、僕は最後のデート?の待ち合わせ場所に向かった。


「きたわね、秋作君」

先に純恋が待ち構えていた。

「えっと、純恋はどこに行きたい?」

僕がそう聞くと

「調理室に行きましょう。文化祭はいつでも入って料理できるようになっているわ。だから、私の料理を披露するわ」

純恋が即答し、僕たちは調理室に向かった。

調理室は1階の南の端にあり、中にはお菓子、カップラーメン、焼きそば、その他屋台で使う色々な料理の匂いが混ざっており、匂いを嗅ぐだけで少し胸焼けしかけた。

「私が披露するのは、ケーキよ」

純恋の両親は有名なパティシェの人で、純恋もパティシェを目指して日々努力しているらしい。

そして、つい最近あった大会でも純恋の両親は優勝したらしい。

純恋は素早い手さばきで、苺を切り、クリームを出しパンケーキを作っていった。

そして、数十分後純恋は苺のケーキを作った。

「おおっ、でかいね!純恋はこんなことができるんだね」

僕が感心して驚いていると、純恋は少し照れくさそうに笑った。

そのケーキの味は文句なしで美味しかった。

「や、やばいよこれ!お店で出せるレベルの美味しさだよ!」

「だって、お店で出しているしね」

純恋がそう言って笑った。

純恋の笑顔が好きだ。

生徒会の仕事をしているときは、凛々しくクールだが、プライベートになるとよく笑う女の子だ。

そのギャップを純恋は持っている。


ケーキを食べ終わった時間と同時に、午後の時間になり生徒全員は体育館に集まるよう招集された。


「先輩、いよいよですね!」

詩織が体育館裏の劇に出る人がスタンバイする場所で声をかけてくる。

「この劇が終わったら、僕達の番だね。がんばろうね」

僕は最後に誰か1人選ぶことができるのだろうか。それが心配だ。もし、選ばないとなると観客からのブーイングが激しく怒ると思う。

いや、生徒会メンバーが1番怒る気がする。だから、僕は4人の中から1人選ばなければならない。

僕は本当に選べるのかなぁ......


劇が始まった。

しかし、学年劇とは比べ物にならないプレッシャーを感じた。

生徒会だからということで、色々と期待されていて、さらに生徒会メンバー4人はこの学校の美女としても人気のせいか、視線を物凄く感じる。

そういえば、この学校祭が始まってから、視線をよく感じる気がする。


僕達がやる劇は細かく言うと、ある1人の男性が4人の魔女を助けることで、4人の魔女は男性に恋をする。

そして、1人妻を選ぶために魔女達はおしゃれをし、1番男性の好みに合う人が妻になるという劇だ。


そして、いよいよこの時が来てしまった。

「さあ、秋作さん!誰を選びますか?」

4人の魔女はセリフを揃えてそう言った。

それぞれ自分で手作りした衣装に着替えている。

純恋は白のワンピースを着ている。

佳織は白のドレスで、少し覗けば谷間が見えるくらい際どい衣装だ。

鳴霞は、どこかのお姫様が着てそうな黒いドレスで、1番魔女っぽく感じる。

最後に詩織は下はミニスカで上は普通の私服でいかにも、デートの格好見たいだ。


「僕が選ぶ人は......」

誰を選べばいいんだよ!全員服が似合っていて可愛すぎる。

学校では凛々しく、プライベートではよく笑う純恋か?

面倒見が良く、いつも細かいところまで見ている佳織か?

清楚で美しく、とても優しい性格をしている鳴霞か?

明るくて、みんなを笑顔にする詩織か?

4人がみんなそれぞれに無いものを持っていて、それぞれに悪いところもある。

だから、みんなが支え合うのが1番いい。

でも、今回はそういうわけにはいかない。

僕はふと4人の顔を見ると、それぞれが自分の手を握りしめ、手をつぶっている。

こんなにも真剣になっている所は、初めて見た。

僕は4人の顔を見て、中途半端な結果にしては絶対にいけないという使命感に襲われた。

4人がここまで真剣にやってきた物を壊したくない!

何を躊躇っているんだ。1番可愛い子を選べばいいんだ!ほら、みんなの衣装を見てみろよ!と自分に言い聞かせる。

「おい、誰だよ?」

「考えている時間長くない?」

少しずつ批判の声が出てきた。

時間がない!迷っている時間なんてない!


『秋作、お前は自由に生きろ。俺たちのような仕事のせいで、人間に嫌われるようなことになるな。お前の判断は自分で納得いくものにするんだ。それを肝に命じていなさい」

ふと、頭にある言葉が浮かんだ。

この言葉は幼い頃父さんに聞かされた言葉だ。

......僕は納得いく答えが決まった。


「僕は、鳴霞を選ぶよ。ずっと一緒にいよう、鳴霞」

そう言って、僕は鳴霞を抱きしめた。

そこで、抱きついたまま劇は終わり、観客の方から拍手が上がった。

拍手は長い時間起き、暗幕のカーテンが閉じるくらいまで続いた。

そこで、僕1人だけ、鳴霞が泣いているのに気づいた……

秋作の決断後、鳴霞の涙の真相は?

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