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第32話 前と今

授業開始のチャイムが頭に強く鳴り響いた。

なぜか頭に激痛が走り、頭部を触ると血が少しだけ出ていた。

そして、なぜか沙耶香が校舎の方へ向かって走って行っていくのを見ていた。

記憶がなぜか飛んでいた。こんな経験は前にもあった。

それは、体育館で新聞部と戦った時だった。あの時は椅子に頭をぶつけて記憶を失う僕と記憶が失われた今の僕が入れ替わっていた。

だから、今も記憶を失う前の時の僕が生活していた?

でも、記憶を失う前の僕は今の僕の置かれている状況を分かっていたのか?もし分かっていなかったら、何をやらかしていたのかわからない。

少し不安になりながら僕は教室に戻った。


1時間目終了後の休み時間になると、雅也に話しかけられた。

「秋紗、美優ちゃんと仲直り?的な、前みたいな仲に戻れたのか?」

そうだ、美優だ!

僕は今美優の問題を解決しようとしていたんだ。そして、そこで記憶が途切れていたんだ。

僕が眠っていた期間は、携帯を見て分かったが1日だけだ。

だから、‘僕’がその1日の間に何もやらかしていないことを祈るしかない。

「いいや、多分まだだよ。でも、ちゃんと解決してみせるから......」

雅也は頭がいいから、僕のことを少しは察してくれてるとは思う。

美優の問題がいかに大きいか分かっていてくれているはずだ。

僕、美優、生徒会メンバーが今の美優の状況に関わっている。第3者である雅也が意見を出すことによって、客観的な意見を得られ、少しアドバイスがもらえる。

雅也にはそれをしてほしい。いや、口で言う前に雅也は分かっている。


そして、次の関門がここだ。

生徒会室の前で僕は立ち止まった。

もし生徒会メンバーといろいろと関わっていたりしたら、もう手がつけられない。

恐る恐る扉に手を当て、開けようとした瞬間中から話し声が聞こえた。

「秋紗君は......私達のことまだ分かっていないのかしら?」

「今の先輩は鈍いですからねー」

「でも、今の秋紗先輩も嫌ってわけじゃありません」

「秋紗は前とのギャップが激しくて、あまり強く言えないのよね」


4人の話し声が聞こえた。

でも、4人の会話が僕の話で、何を話しているのかよく理解することはできなかった。

「や、やあ。みんなきたよ」

つい動揺して言葉が詰まってしまった。

これじゃ、焦っているみたいだ。

「秋紗君、昨日言ってたわよね?全て説明するって」


え?まってまって!

何?昨日説明って?何の話?

「先輩ー、私たちは沙耶香さんのことも知りたいけど、今は美優のこと心配してるんです。いい加減何があったのか知りたいんですよー!」

生徒会室に入って早々純恋と詩織にいい寄せられて、困惑した。

「え、えっと......何の話?」

僕がこう言うと4人は呆れた顔をした。

それもそうだ、僕が明日話すって言ったことを、4人にその内容を聞くんだから。

そりゃ、僕だってその内容を知っていたら話すよ。

でも、何について話せばいいのかわからないなら別だ。

ただでさえ記憶がなくて少し嫌な気分なのに生徒会室に行っても嫌な気分にはなりたくない。

「あのさ、秋紗。今から私たちは2つのことを聞くいいわね?」

「うん、いいよ」

「私たちが聞きたいのは、美優ちゃんはどうなったのかってことと、沙耶香さんとどういう経緯で付き合ったのか知りたいの。今まで秋紗は沙耶香さんと面識があったとは思えないの」

まあ、沙耶香とはその場の勢いで僕は了承してしまった。

いや、その場の勢いでというのは言い訳かもしれない。


ただ、僕はあの時心が病んでいて、それを癒すために付き合ったのだから......

これを面と向かって言えるはずはなかった。

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