プロローグ
暇なときに気が向いたら読んでください
もし今日が人生最後の日だとしたら、今やろうとしていることは 本当に自分のやりたいことだろうか?
ー…とは、かの有名な会社の社長、Steve Jobsの言葉であるが、この質問にNOと潔く答えるのは僕だけではあるまい。
例えば。
3年前の今日、ある人に「お前は3年後の今日、死ぬよ」と言われたとして、そしてそれを信じるかどうかは兎も角、果たして僕は今日、いつもの様に高校に行くために家を出ているのだった。
その言葉を聞いて以来、とりわけ新しいことに挑戦しようとする心意気は僕にはなかった。その不吉な言葉を100パーセント信じていないわけではないーー寧ろ、気持ち的にはまるきり信じている方だったが、当時中学1年生だった僕に、一体何ができるのだろう。周りの人間に話しても一笑に伏されるのは火を見るよりも明らかだったし、僕も、これといって死ぬまでに成し遂げたいと思うほどハマっていたものもなかった。
そうして、3年が経った。
僕の、人生最後の日。
いつもよりも早く目が覚めて、いつもより早く家を出た。
当たり前だが周りの景色はいつもと変わらず、今日僕が本当にこの世からいなくなるとは思えない程にありふれていた。
いつもより人気の少ない朝の通学路は、マウンテンバイクを飛ばすには丁度いい。
…とはいえ死亡宣告をされた身なので、いつ死ぬか分からない以上、スピードや飛び出し、横を過ぎる車に細心の注意を払いながら走る。
そして。
そこで僕は出逢ってしまった。
今から思えばこれは全てあの人のお膳立てで、計画通りで、掌の上で転がされていただけだったのだが。
彼女は、
僕の運命を変えたその子は。
長い直線道路を抜けた先の高校名所の地獄の登り坂手前の信号の前で、信号待ちをして、そこにいた。
まるで僕を待っていたかのような奇跡とも言えるタイミングで、隣に立つ白髪の女子高生に手を引かれて、ここの気候ではまだ肌寒いと思えるような大きめの半袖短パン、そしてサイズの合った黄色いショルダーバックを肩にかけた二つ結びの小さな死神は、
同じく信号待ちで自転車を停めた僕を指差し、はっきりと「お兄ちゃん今日、死ぬよ」と3年前にあの人が僕に言ったこととほぼ同じセリフを口にしたのだった。
更新頑張ります