歩道橋を渡る
その歩道橋は一センチメートルほどわずかに浮いていた。全体が錆付き、コンクリートはひび割れていた。
私が一歩踏み出すと、ゴンと歩道橋が地面を叩き金属の鈍い音が鳴った。私は手すりに手をかけ体を上げる。二段三段と足元に気をつけながら登る。段の角が取れ丸くなっており、細かいコンクリート片が足を滑らそうとしてくる。手すりには私の手の跡が残り、手を黒く汚した。
ギッギッと音を立てる歩道橋を私は登る。ヒビに足を取られないよう気をつけて登る。踊り場で立ち止まり上を見ると、手すりはひしゃげ、段はさらに歪になっていた。
私は頂上に着き、街を望んだ。灰色の景色に音は無かった。鈍く色彩は薄れ、薄墨をかけたようだった。
私は道の上を渡る。不意に突風が吹き、手を伸ばす間もなく帽子が飛ばされた。風が帽子を遥か彼方へ消した。
私は歩道橋を降りる。登ったときと同じように、一歩一歩確かに下る。最後の一段はこちらは存在していなかった。私は軽く飛び降りる。
私は手を叩き鉄粉だか赤錆だか埃だかわからない汚れを取ろうとしたが、手の汚れは落ちなかった。
そして私は再び地面を歩いた。