第9話 影
第9話 影
じゃあなと言ったのに、その本人。カズヤは目の前でニヤニヤしている。
「マサオミ、不思議か?カズヤならきっちり向こうに帰ってるよ。実は俺はカズヤの不在時用の人格なんだ。驚いたかい?そしてカズヤとは記憶をある程度共有している。だから、少しは対策を話せる。」
俺から見るとカズヤそのものだ。見た目と声は。
だが少し雰囲気が違う。
「カズヤとどう違うんだ?」
「そうだなァ、俺には危機感があまりない。本体のリアルは俺のリアルじゃないからな。
あと自我もそんなにない。仮想人格に乗っ取られたら困るし、仮想世界の奴らにバレたら困るし、
俺自身はいつも本体の影だから、自我をもたせ過ぎたら可哀想、という判断だ。
受け売りだけどな。本体の。そして今までは、だ。この緊急事態のために、ただの木偶人形だった俺はこの世界の人間並みに、
本体並に思考できるようになった。神の力は行使出来ないけどな。
あいつのこの世界での記憶と、大体のあいつの記憶はもってる。少し、性格は違うけどな
記憶は持ってても細部まで持ってない上にベースが違うから。だから、あいつの状態を客観視してるんだ。」
なるほどこれは助かるな。でもこいつはそれでいいのか?
「そうか、変な感じだな。カズヤであってカズヤでない・・・か」
「まァ、安心してくれよ親友、おッと、親友と呼んじまったな。俺とおまえの話じゃないのにな。
少し悲しいぜ。・・・俺のことはデクとでも呼んでくれ。俺のこともダチ公だと思って欲しい。
ゆくゆくは親友になりたいね。できればサ」
「はは、なれるといいな。まだデクのことは知らないからなんとも言えないけどな」
「俺自身、まどろみから覚めただけの頭でっかちの赤ん坊みたいなもんサ。今までの記憶はあるけど実感はないからな。
ちなみに、この問題が解決すれば、俺はこの役から開放されて新しい体を貰えることになってる。だから本体を乗っ取る可能性は考えなくていいぜ。
なんせ俺は美少女の体が欲しいからな。ヘヘ。どうせならかわいいほうがいい、と思ってるんだよ。ついでに不老もお願いしたいね。
あーそうだ、神の能力は外部世界の干渉だから、この体を乗っ取っても、つかえないのさ。だからメリットがない。
あくまで俺の主張だけどサ」
ちょっと引いたが、デクは生まれたばっかだから純粋な希望なのかな女性化は
「ははは・・・」
「さァて、これで自己紹介はおしまいだ。マサオミも今日はいろいろありすぎて疲れたろう?
ゆっくり休んでこいヨ。お休みな。良ければ明日、本体がいない間、話をしよう」
「それはこちらからお願いしたいとこだったよ。頼んだ」
「よっしゃ。・・・ところで、さっき親友になりたいと言った話だが。少し訂正したい。」
「ん?」
「彼女やお嫁さんを目指すことも考えてるぞ。なんせ俺は女の子になる予定だからな!」
「ちょ」
「第一印象がイケメン実はニートなこの状態の本体じゃ焦るだろうし、初対面で何言ってんだと思うだろうケド、
俺はマサオミのこと、よく知ってるからな。へへへ。ん~この状態じゃ気持ち悪いか。男だもんナ今。
まァ、記憶を持って自我を持ち始めた俺がいきなりマサオミにベタぼれするぐらいマサオミはいい男だし、
本体、カズヤもマサオミを信頼してるんだよ。頼んだぜダチ公兼未来の旦那様!」