第三話 世界の成り立ち
第三話 世界の成り立ち
「俺はこの世界を株や宝くじで儲けるために作ったんだ。この世界は未来を予測演算するソフトだったんだよ」
「未来を演算?」
「そう、いわゆるシミュレータだ。本物そっくりの世界を作り、未来を予測する。これなら株も宝くじも高精度で当てられる。
そんな夢のソフトと騙されて買った」
「こんな世界を作れるソフトが詐欺だってのか?」
「そうさ。たしかにすごいソフトで、俺は飛びついたさ。パソコンもそのために性能がいいものを買った。
でもすぐに問題が起こった。そもそもこのソフトはソフトの入ってるディスク容量の問題で2000年あたりからしか演算開始できないんだ。
そこらへんから爆発的に情報量が増えるからな。そこからはSSDに展開演算することでデータを増やしながら未来へたどり着くんだ。だから俺は2000年から開始することにした。」
「2000年までの世界はただの情報だってのか?俺の父さんや母さんもそれより前は存在しなかったのか?」
「ああ、すまん、いきなりショックだよな。でも俺の世界で実際に起ったことだ。この世界はその粗いクローンなんだ。
だからこの世界がまるっきり嘘だと言うわけじゃないんだ。また別の現実,
パラレルワールドみたいなもので、その心は本物なんだ。
こんな説明で弁明できるかはわからないが、俺がマサオミのことを信頼してるように、マサオミが俺を心で認識してくれてるように
とにかく、おれは同じ人間だと思ってる。今ではな。」
「・・・・ああ」
「話を戻すけど、はじめは良かったよ。あっという間にすごい速度で世界が進んでね。
でも、問題が起き始めた。少しづつ俺の世界の速度に、この世界の速度が近づいてきたんだ。
PCの性能不足さ。どうしようもなくなって、設定を削り始めた。
宇宙人を消したり、霊界を消したり、PCの性能を削ったり・・・な。」
「マジかよ。カズヤの世界じゃ宇宙人や霊界が実際あるのか」
「ああ、宇宙人とは交流をしてるし、霊界との通信装置だってある。
宇宙人のおかげで文明は飛躍的に発展したし、霊界との通信装置で魔法のような霊的エネルギーも使えるよ
でも宇宙人や、霊界を演算するのは大変すぎるんだ」
「でも、そんなものを削ったら、未来を予測演算できないんじゃないか?」
「そう、そのとおりさ。株価もなにもかも俺の世界とズレ始めた。この世界は俺にとって意味がなくなり始めたんだ。
正直ガッカリしたよ。未来を演算できるなんて嘘っぱちだったんだ。俺の世界でもパソコンの性能は行き止まり状態でな。
うちのパソコンで演算出来ないなら家庭用のパソコンじゃ演算できっこないんだ。
そもそも、うちのパソコンをうちのパソコンでエミュレーションして更にその状態をエミュレーションするようなことが出来なきゃ、未来なんて演算できないはずなんだ。
ずーっと処理が合わせ鏡のように延々と奥に奥に続いて処理が膨れ上がるはずなんだよ。はじめから詐欺だったのさ。
俺はこの世界をどうするか考えあぐねてた。処理を計測する理由はなくなった。でもある日、俺はこの世界に入ってみることにしたんだ。
青春を取り戻すために。」