女子校戦争
こんにちわ、ひじきたんです。
久しぶりの短編は、やっぱりユルい感じでお送りします。
「亡霊×少年少女」もよろしく!
女子校戦争
時は現代の日本、首都圏のとある高校だった。
「おっし要、合コン行こう、合コン!」
ある日突然、幼なじみの大竹千鶴が誘ってきた。中川要はオウム返しする。
「合コン?」
「そう、合コン。隣の男子校に知り合いがいてさ、セッティングしてくれるって」
「ちょっと待ってよ!合コン!?千鶴って彼氏いたよね!?」
「一昨日別れた」
ケロッとしている千鶴に対して、要は混乱している。なにせ要は彼氏いない歴=年齢で、しかも今通っている高校は女子校。男子に免疫がない。
「里香も行くって」
もうひとりの幼なじみ、里香にも彼氏がいたはずだ。
「先週別れたって」
なに?別れの季節なの?秋だけど。
そんなわけで、幼なじみ三人プラスクラスの女子二人の合計五人で、合コンをすることになった。
合コンは学校近くのカラオケ店で開催された。
男女十人、それぞれ自己紹介をする。相手の男子校の生徒は、なかなかに顔が整って……いないのがひとり。
「佐藤優太です」
と名乗る男子は、お世辞にもカッコイイとは言えない……むしろブサイク。デブだし、いいところはひとつもない。当然あぶれたのはその優太と、要。
「中川要さん……でしたよね?」
「はい……」
うわー無理!絶対話せない!誰か代わって!とか思っていたのだが。
「中川さん、アイス食べますか?ここ、ソフトクリームあるんですよ」
「え、ホントに!?食べます食べます!」
「じゃあ行きましょう。ドリンクバーのところにあるんですよ」
一緒にソフトクリームを取りに行って、部屋に戻って食べた。
「中川さん、次になんの曲入れます?」
「わたし、歌下手だから……」
「大丈夫ですよ、例え下手でも笑いません」
YUIを歌った。
「可愛らしい声でしたね」
「え……そんな!」
優太はなんだか話しやすい人柄だった。そこで要は、思い切って聞いてみることにした。
「佐藤くんって、なんで合コンに参加したの?」
優太は笑って答えた。
「人数合わせです。今日は暇なのが僕だけで……中川さんは?」
「わたしもそんなところかな?彼女はいないの?」
「はは、僕のようなブサイクにはいませんよ。あ、飲み物取ってきましょうか?」
紳士。ものすごく紳士だった。帰りがけには、自然な流れでアドレス交換して、早速メールを交わしていた。
翌日の学校。
「佐藤優太……っていいよね」
千鶴が呟いた。
「え……千鶴、別の男の子と仲良くしてたじゃん」
「ほら、昨日帰り道が同じ方向だからって、あたしと一緒に帰ったじゃん?そのとき話したんだけどさ……いいよね」
ライバル!?早速ライバル登場!?しかも相手はお姉さん系モテモテ女の千鶴。絶対に勝てない。
その翌日。
「要ー、佐藤くんのアド教えてー!」
隣のクラスの里香が来た。
「え、なんで?」
「アタシ、佐藤くんが好きなの」
「なんで!?」
「昨日ね、一昨日の忘れ物を届けてくれてね、お話したんだけど……すっごくいい人だよね!!」
ライバル増加!?うっそ!?信じられない!
これはうかうかしていられない、と、要は優太にメールしてデートに誘った。すると快く返事をもらい、いざ人生初デート!!と思ったら。
『大竹さんと小池さんも一緒でいい?同じ日に同じ場所で誘われたんだけど……もしかしてみんなで行く予定なのかな?』
あっかん!!向こうも攻めてきてる!!かといって、ここで引き下がるわけにはいかない。Yesの返事をして、なに食わぬ顔をしている敵を睨みつける。
敵は強力であります!!
デート当日。持っている中で一番可愛い服装で、待ち合わせ場所に行くと、千鶴と里香が来ていた。散る火花、戦争の合図three、two、one……
「お待たせしました」
go!
「全然待ってないよ、おはよう佐藤」
「アタシも今来たとこ!おはよー、佐藤くん!」
「おっおはよう優太くん!」
これでいっぱいいいっぱい。出遅れたかもしれん。
優太はにっこりと微笑んで、全員の挨拶に応じた。
「おはよう、大竹さん、小池さん、要ちゃん。じゃあ行こうか」
それから終始、千鶴と里香と優太の会話を聞くだけ。優太と話すことはできない。しかしチャンスが訪れた。千鶴と里香がトイレに行ったときだった。
「要ちゃん」
「な、なに!?優太くん!」
「もしかして体調悪い?なんかいつもと違う……ってメールでしか知らないけどね」
「そんなことないよ!?ただ……」
気遣ってくれたことが嬉しい。気遣わせたことを悪いと思う。
わたしといてつまらないんじゃないか、とか考えてしまう。つまらない女でごめんなさい。なんでメールと同じようにできないんだろうか。わたしはなんでこんなに、弱気なんだろうか。
出せ……勇気!
「ゆ、優太くん!!」
「なに、要ちゃん?」
優太は優しく微笑む。
「あの……わたしと……!」
勇気……ほんの少しでいい、いつもとは違うわたしになるんだ。
「わたしと付き合ってください!!」
要は右手をぐっと差し出した。
言った……ついに言った。人生で初めての告白。今まで恋をすることがあっても、地味に影から見つめるだけ。いつも好きな人は、千鶴か里香と付き合っていた。
優太は黙ったままだ。嫌がられたのかな?
やがて
「僕……ブサイクだしこんな体型だし……」
「そんなの関係ないよ!優太くん、優しくていい人だし!」
「……そんなことないよ……僕……」
顔を上げて、優太の顔を見る。顔が真っ赤に染まっている。
「僕……初めて会った時から、要ちゃんと付き合いたいって思って、いい人ぶってたんだよ……?」
「え……」
うそ。優太くんが?ずっと好きでいてくれたの?
「……でも……優太くん、みんなに優しくて……」
「要ちゃんだけは……特別だよ」
うそ。信じられない。じゃあ両想いってこと……?
涙があふれる。我慢出来なくて、こぼれた。優太が驚きの声を上げる。
「要ちゃん!?やっぱり嫌だった!?ご、ごめんねごめんね!」
「ちが……ちがう……」
必死に首を振って、涙を押さえる。濡れた声で答えた。
「嬉しいの……好きな人と両想いになるって……こんなにも嬉しいことなんだね……」
優太はまた微笑んだ。
「本当だね」
女子校戦争終戦、結果は見事な初勝利であります!!候う。
女子校戦争 完
いかがでしたか?一昔前の携帯小説っぽくなっちゃいましたが、なんとか形にしました。
ブサイクを取り合う話が書きたくてこうなりました。取り合ってないね!というツッコミは置いておいて。
前回の短編(唯先生とひかりちゃん)は年の差ラブだったので、今回は同い年にしてみました。何気に同い年は初めて!
なにか思うことがあったら、なんでもいいので送ってください。
それでは!
あ、「亡霊×少年少女」もよろしくお願いします!
2015.8.27 ひじきたん