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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

三丁目の赤

作者: 月唄





深夜二時くらいでしたっけ。

そうそう、こんな感じに月も雲に隠れていたある夜の事でした。

私は制服を身に纏い、下校中のどさくさで鍵を壊していた窓から職員室に侵入し我がクラスの住所録等を拝借したのです。もちろん、後日きちんとお返ししましたよ。


彼の連絡先を入手した後に、ね。


さて、その入手した電話番号にかけるのは63回目です。なぜかけるかって?そんなの決まってます。私の痕跡が彼の家の電話に残るんですよ?こんなお手軽で素敵なことしないわけがないじゃないですか。


もちろん彼は出てくれません。部活、忙しいのかな。


その後、既に入手している電話番号や今使えるだけの情報網を駆使し住所を知りました。

駅を出てすぐの公園を抜け、突き当たりを右折。ああ、見つけました三丁目です。彼の名前の書いてある表札です。赤いお屋根のお家は真っ暗で、なんだか少し寂しく感じました。


現在午前三時。

本当ならおはようのオーディション会場をここにして朝一番に視界に入りたいのですが、昨晩からずっと見ていたのでシャワーなども浴びていない状態です。こんな姿じゃ彼に会えない!断腸の思いでこの場を離れ家に帰ります。


「待っててくださいね…」


帰宅後。寝ているカゾクを起こさない様に静かにバスルームへ行きます。しゃしゃっとシャワーを済ませベットにダイブ!二時間だけ仮眠を取りましょう、クマが出来ては顔を見せられませんからね。


彼のお家を知ってからというものの、こんな感じの生活が続いています。学校帰りに三丁目へ行き彼の部活が終わる時間までうろうろして、お家に帰るのを見届ける。彼のお部屋の電気がつくのは午後八時くらい、そして消えるのが午前零時を回る頃です。帰宅は午後七時なのに、リビングにでもいるのでしょうか?あ、もしかしてお風呂?それともご飯でしょうか?ああ、なんとミステリアスな彼でしょう。とっても魅力的です。


毎日新発見と疑問が見つかるこの新習慣。


歪み出したのはついこの間です。


いつものように学校帰りに三丁目へ行きうろうろしていました。すると突然の大雨。私は彼のお家の側の公園へ行き、木陰に駆け込みました。ギリギリ彼のお家が見える位置です。


「雨降ってるから、帰り遅くなっちゃうかしら」


時間は午後七時。

木陰とはいえ雨水は滴り落ちて来るので制服はもうびしょ濡れ。少し寒いかな。

今日はもう帰ろうと心が折れかかった矢先、彼の足音が聞こえてきました。


「帰ってきたわ…!」


私は今まで巡らせた思考を全部止め、彼の方へ視線を動かしました。そこには、妙な人影があったのです。


今この場所で私の視界に入るべきは彼オンリーのはず。なのに彼の半歩後ろを歩く女の子がいたのです。


誰。


知らない子。


誰。


女の子。


誰。


同じ学校。


誰。


誰誰。


誰誰誰。


誰誰誰誰。


初めての経験。

その見知らぬ女の子は彼共にお家の中に消えていった。

なんで、どうして。

頭がまっしろになる。いつもはすぐにはつかないお部屋の電気もすぐについた。あの子と部屋に、二人きり?


「嘘よ…そんなことって」


ありえない。

彼が私の知らない女の子を連れているなんて。しかもお家に入れるなんて。


「きっと、なにかの間違いよ…そうよ…」


自分に言い聞かせるけど、すごくモヤモヤする。やっぱり直接聞こうかな。でも、まだ浮気と決まったわけじゃないし。


そうこうしている間に女の子は家から出てきました。大事そうに何かを抱えて、駅の方へ。私は見逃さなかった、女の子の首に真新しい包帯が巻かれているのを。なに、キスマークでもついたの?


もう、いてもたってもいられないわ。


ドアノブを引くと何かが引っかかっている様な感触。鍵ね。私知ってるよ?ここだよね?

玄関脇の植木鉢を持ち上げ鍵を取り出して開ける。中は真っ暗。さっきまであんなに明るかったのに。


「ねぇ、いるんでしょ?」


ガタッ、と物音がした。廊下の軋む音、間違いなく彼の足音。


「…君」


暗がりから現れた彼は驚いた顔をしてた。当然よね、あんなところ見られてたなんて夢にも思わないでしょう。


「さっきの女の子になにしたの」


困ってる顔。ああ、可愛らしい。でも今は心を鬼にしてめいっぱい睨むの。私を怒らせたんだから。


「見てたか」


「見てたわ」


彼の赤く血走った目が私を捉える。初めて真っ正面から見た彼の瞳。真っ赤で、とても綺麗。


「…おいで」


なにかを諦めた様に目を伏せ廊下の奥へ消えていく彼の背を私は追いかけた。




その後なにが起こったかって?


私ね、彼と一つになったの。

真っ赤で綺麗な瞳が私を見つめて、ちょっと荒っぽかったけど全身に口づけしてもらって。もう私のカラダは動かない。もう四肢の感覚どころかなにも感じない。私と彼が真っ赤に染まる。私は彼の中に溶け込んだの。


幸せよ。

とっても幸せ。

でもとっても寒いの。



全部分かったの。



だからあの女の子にも知らせてあげないと。


タベラレチャウヨって。



「やっぱり、ヒトは脆いな」


私の記憶はそこで尽きた。

























「うちの生徒、行方不明だって」


「確か二年生の女子が…」


「そうそう、舞降とか近いし…」


「三丁目ですよね…私もこの間そこにいて…」


「まじか!あぶな…大丈夫だった?」


「はい!大丈夫だからここにいるんですよっ」


「そだよねー、よかったー。てか十神くんそっちの方だよね?なんか知ってたりしちゃう?」




「…いいえ、俺はなにも」


赤い瞳が、見えた気がした。





はい!お察しの通りかと思います!

後々どう影響してくるのでしょうかね…

お楽しみに!



S.a.d 番外編

月唄

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