えと、えっと!とにかく大変なんだぁ!
夕です。
ゆーすけはきっとこじ君が大好き。
「こじ君こじくーん!」
大変だよー!
こじ君としんた君のおうちに頭をつっこんでみたら、あれあれ?
「…いないのー?」
おうちにはふたりともいなくて、魚の骨が落ちてるだけだった。
遊びに行っちゃったのかなぁ。それとも、いつもの集会?
ぼくも行きたかったー!
…じゃなくて、大変なんだよー!
おうちを飛び出して今来た道を引き返して走った。
「おや、ゆーすけさん?何を慌てていらっしゃるのですか?」
「あ、ロレンティーノ!」
ロレンティーノは高いところからぼくの頭の上に下りてきた。
「えっと、えっとね。大変なんだー」
「ふむ」
「今日ね、ぼくの家の前でね―――」
そろそろ遊びに行こうかなって思ってた時のことだったと思う。
ゆめのちゃんが開けてくれてるおっきな窓からお庭に出て、あれ?ってなったんだ。
「ねこさんのにおい…?」
こじ君かな、って最初は思ったけど、しんた君のにおいしないし。集会で知ってるねこさんたちは、こじ君のなわばりには入ってこないみたいだし。
きょろきょろしてたら。
「おい」
「う?」
それで塀の上にねこさんがいるのに気づいたんだー。ずっといたのに分からなかったんだー。
ちがうよ、ほんとにぜんぜん気づかなかったの。
「お前。こじろうって野郎知ってるか?」
って聞かれたの。
見たことないねこさんだったよー。
こじ君よりもおっきくてね、黒くてね、声もゴロゴロ雷みたいで怖かったぁ。
「…こじ君のおともだち?」
「まあ…そんなもんだ。場所を教えてくれ」
怖くて怖かったから。
ともだちならいいかと思って。
「今の時間はおうちにいるよ。そこの道曲がったら家の人がいない家があって…その中がこじ君の家」
ぼく教えちゃったんだけど。
そしたらその黒いねこさんがね。ぼくが教えたほうに走っていく前に。
「…覚悟しろ、こじろう」
って言ってるの聞こえたのー!
「それで大変だぁ!でここ来たけど、こじ君もしんた君もいなくてー…。うう…どうしよぉー、もう黒いねこさんにつれてかれちゃったのかなぁー…」
こじ君はすっごく強いけど、あのねこさんもすっごく強そうだった。しんた君なんてパクンてされちゃいそうだったよぉ。
「そんなことがあったのですか」
しょんぼりするぼくの頭をロレンティーノがつついた。
いたた、チクチクしないでー。
「しかしこじろうさんが負けてしまうところなど、私には想像できませんね。心太さんが来てからさらにピリピリしているように見えますし」
うーん…うん…そうだよね。
「私は空からおふたりを捜しましょう。ゆーすけさんは匂いを追って捜すのです」
「わかった!」
ロレンティーノが頭の上から飛び立って、ぼくは地面のにおいを嗅いだ。
ん、しんた君のあったかいにおい。
こっちにこじ君のちょっと怖いにおい。
待っててね!こじ君、しんた君!
ぼく見つけるからね!
もう一話完結できなくなった。
緋絽さんに丸投げ。