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#0005 出撃に備えて: 後半 / Preparation: Lower Half

次回がおそらく初戦闘シーンです。セルンはどんな装備で戦うんでしょうかね?

さて、今回の標的は一体どんな奴だろうね。

部屋の外の様子も落ち着いたことを確認したハフィルは、

僕の方へ向き直り口を開く。


「うむ、落ち着いたようだな。ではお前が探すべき

個体がどのようなものか説明しよう」


ハフィルはそう言うと、壁に貼られた地図のそばにある

机から会議中には使われていなかったいくつかの書類を取り出し、

近くにある別の机に並べた。

あんなに長くて鋭い爪と嘴があるのに紙を破かない彼の

器用さには感心するね。


ここからでは見えないので机に近寄り、資料に目を通してみる。


「これは撮像機で撮られたものかな? ぶれてるけど、

大まかな特徴はわかるね」


並べられた資料の中には景色を記録できる機械で作られた絵が

いくつかあり、構図を見る限りは地上から撮られたものに見えた。


中央に映っているずっしりした体形のドラゴンは、

首と尻尾に特徴的な3本の縦縞があり、白黒で映っているから何とも言えない

けど背中側は黒っぽい色、腹側は白で、縞模様の色はおおよそ腹の色と同じだ。


「この写しはロカウルに住む考古学者の一人が撮影し、

我々に提供してくれたものなのだが、近隣での目撃情報にある集団を

率いていると思しき個体、そして以前にエーテルヌムの勧誘を

受けたことのあるとあるドラゴンの協力者からの証言に見られる特徴と

一致しているのだ。この件と他地方での目撃情報とを統合し、

我々はこの個体が広報官に当たる役職についていると推測している」


ハフィルの話を聞きながら彼の視線の先にある別の資料や報告書にも

目を通していくと、この情報の確度が十分なものであると

僕自身でも確信できた。


ドラゴンは基本的にそれぞれの個体が全く異なる色や模様を持っている

独特な種族で、たとえ色を塗ったりして他の個体の真似をしたとしても、

体形や角、ひれやとげといった細かいパーツまでは合わせられないし、

他の個体の姿を真似るのは彼らの間ではかなり嫌われる行為なんだ。

それに、写しに描かれている姿からしてあまり飛行能力は高くないから、

実働部隊よりは指導者向きだということも分かる。

これがまず、僕が探すべき一つ目の標的だね。


「なるほど。となるとこっちはリーダーの方かな?」


資料の中にあるまた別の姿をしたドラゴンは、

一つ目の標的と比べると正反対の体型を持った指揮官らしき個体だ。


体は全体的に細く、頭部はとがった形状でいかにも飛べそうな

見た目をしているけど……無数に生えた角や棘のせいで台無しだね。


──彼らの体のつくりは正直言ってよくわからないよ。

飛びたいのか飛びたくないのかどっちつかずな個体がいれば、

地上を走るのに特化して翼が退化したような個体もいる。


それ以外の特徴といえば、尻尾の先端かな? メイスみたいな形をしていて、

おそらく戦闘時に使うものかな。ただ、写しがそれほどきれいじゃないから

これが体の一部なのか装備品なのかまではわからない。

道具を使うことを嫌う彼らのことだからさすがに本物かな?


「ああ、察しの通りこの個体が砂岩の傷跡に展開する

エーテルヌムのリーダーだ。こちらに関してはすでに確認が取れている」


文書や写しを見ながら特徴を整理する僕の背後からハフィルが教えてくれた。


「わかったよハフィル。僕が殺すべきはこの2個体、手段は不問でいいよね?」


「うむ。お前が持つ最大の火力で交戦してかまわない」


場所が場所だけにあまり派手にやると問題が起こる可能性もあるから、

一応確認をとる。──まあ、ハフィルの答えは予想通りだったけどね。


「じゃあ僕は出撃に備えて装備を確認してくるから、流光の方の統制は頼むよ」


「──ふん、任せろ」




そうして、ハフィルと僕はお互いの任務のためそれぞれの持ち場へと向かう。


====


出撃まではあと4時間。朝食を済ませたらそう遠くないうちに始まるね。

全額向こう持ちで食事も装備調達も自由っていうのは助かるよ。


さて、作戦中以外のクルーの生活というのは基本的に訓練や演習で、

合間にいくつかの自由時間が挟まる形でね。

その中でも、朝昼晩の食事の前後は特に長い時間がとられていて、

みんなはそういう時間で気分転換をしたり、

ほかのクルーと世間話をしたりするんだ。


水上の船だと定期的に海で泳いだりして精神的な疲れを和らげる

みたいな催しもあるね。以前テンペストに乗った時は

ちょうどそれを見たことがある。


まあ、空を飛んでいる流光だと泳ぎに行くのは無理だけどね。

ただ空中母艦に乗るなんてめったにないこととはいえ、

少しくらいは艦内生活になじみたいものだよ。


とりあえずは昨夜と同じように最下層甲板で時間をつぶそうかな。


航空戦会議室を出て下層甲板への階段を降り、

そこからまた底部飛行甲板に降りてさらに最下層甲板へ。


昇降機も一応あるんだけど基本的には貨物用で

生き物を運ぶのには使えないんだよね。


最下層まで降りてきてみると、昨日よりもだいぶにぎやかで、

特に操艦クルーの数が多かった。

航空隊のほうは出撃に備えて忙しいからかな。


道中で飛行甲板を通った時も飛行機械への武装の搭載作業が

すでに始まっていたし、まだ時間はあるとはいえいよいよという雰囲気だね。

僕も食事を済ませたら装備の最終確認をしておかないと。




その後、昨日夕食を食べた時と同じ食堂で朝食の配給を受け、

開始時刻までしばらく時間をつぶす。


人型種族用のメニューと違って僕たちワイバーンが食べるものは

基本的に量の違いくらいしかないけどね。


肉以外も問題なく食べられる体だったらなとよく思うよ。


作戦開始まではあと1時間。もうそろそろ飛行甲板に

出ておいた方がいいかな。


慌ただしく常にだれかが上り下りする階段を通って、

すでにいくつもの飛行機械が壁際のカタパルト

に装填されている底部飛行甲板へ。

中央の通路では僕の同胞たちも空戦用の装備を身に着けて待機しているね。


魔工エンジンで普段よりもはるかに早く飛ぶ関係で、

みんなゴーグルやノーズコーンをつけている。

僕たちも魔法で風を操れば翼だけに頼るよりずっと早く飛べるけど、

それほど長い間は維持できない。


でも、魔工噴進機関は長時間にわたって高速を維持できるから、

前方から強く吹き付ける風が目を傷つけて、早すぎる風がうまく

鼻に飛び込んでくれないことがあるんだ。


こういう飛行兵の装備も、僕たち自身の要望や

飛行に関する理論に基づいて人型種族の技師が設計してくれている。


こんな……素晴らしい技術を受け入れようとしないどころか、

拒絶して、排斥しようとするエーテルヌムの

やつらの考えは僕には理解できないよ。


まあ、考えても仕方がないね。装備の確認をしておこうか。


飛行装具と噴進機関自体は整備士たちに見てもらった通りに問題無し。

信号弾発射器に煙幕や防壁装置もよし。ヘルメットのバイザーにも傷はない。

機械の腕を伸ばして腰や背中に差している

武器類を引き抜いてみても特に配置に違和感はなし、と。

予備の燃料缶は左右合わせて4本。

これなら装備中のものを使い果たしてさらに2本まるまる使ってもまだ余る。いいね。


燃焼時間にして80秒ってところかな。

……燃料そのものより燃料缶の方が高いんだよね。

正直重いからと言って空になったものを捨てるのはもったいないよ。


うん、あとは時間が来るまで待機だ。

僕自身がやることだけを考えていたけれど、

よく考えてみればこの作戦はちょっとした戦争だよ。


流光がいるこっちが圧倒的に有利とはいえ、

本当なら数十個体が集まったエーテルヌムの戦闘部隊なんて

並みの戦力じゃ止められない規模だから。


彼らと争うことが無くなってからはあまり意識されなくなったけど、

ドラゴンたちが一つの生き物としては最も強力であることは変わらないからね。


[セルンの飛行装具]


設計と開発を担当したフェルツェの技師によって

"貫雲"(クラウド・ピアース)と名付けられた高性能飛行装具。


セルンが常に身に着けている黒い飛行装具は

第二の文明の遺物に由来する非常に軽量かつ高強度、

そして優れた断熱性を持つ素材で構成されており、

物理衝撃だけでなく温度の変化と電気に対しても高度な防御性能を発揮する。


また、装着した状態で日常生活が可能な特別設計により、

セルンは少なくとも3年以上は一度もこれを外したことがないという。

この飛行装具は胴体、足、尻尾、翼、首、頭の部位に分けられた構造で、

それぞれの接続部を魔術指令で固定、または固定解除することで着脱が可能である。


外装表面には様々な追加装備を取り付けられる空軍標準規格のハードポイントが

配置されているため、魔工エンジンのような推進装置や防壁発生装置、

武器を携行するための鞘やスリング、ホルスターなど、

旅の目的に合わせて幅広い装備品で機能を追加することもできる。

セルンが用いている機械の腕もこの機構によって固定されている。


さらに、ヘルメット部分には空気の存在しない環境でも短時間の

生命維持が可能な予備空気タンクが備えられており、

ワイバーンの頭部のシルエットをなぞるように滑らかに

視界確保用開口部と接合された風防は透明な微細ルーン強化型樹脂に加え、

二層目として鏡面加工の遮光バイザーも搭載。


コメント:


セルンの装備は割と量産品が多いのですが、これは交換部品の調達や整備の関係での選択です。長時間の一人旅をするうえでこういった部品や消耗品の補充は大きな問題になりますからね。フライトスーツと機械の腕に限っては素材の強度が桁外れなためそれほど問題になりません。なお、腕の方は遺物由来の素材ではなくナノラティス複合材と呼ばれる海の向こうの超大国からの輸入品です。

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