#0003 空を舞う町: 後半 / The Sky City Adrift: Lower Half
X4: FoundationsでMod開発をしていたので大分遅れました。
文章書いて3Dモデル作って効果音の編集してXMLコンフィグ書いてと忙しい……。
ハフィルに会いに行った時と同じように格納庫中央脇の
階段で再び最下層甲板まで降りてやってきたのはこの船の食堂だ。
ほかにも中層と上層にもあるんだけど、
地上の景色がよく見えるからここが一番評判がいいんだとか。
時間が時間だけにほとんど席は埋まっているけど、
それでも一応空きはあった。
ちょうど部屋の端、窓際にある眺めのいい席だ。
……まあワイバーンは椅子には座らないんだけど。
中へ入ってすぐのところには配給用のカウンターがあって、
今来たばかりの他のクルーたちが大勢並んで順番を待っている。
僕もプレートを手に取って後ろに並ぼうか。
機械の腕で人間と同じように物を持つ様子に
少し驚く個体もいたけど、ただ珍しがられているだけで
変な目で見る奴はいないね。
それにしても、種族ごとに体の構造の都合で食べられるものと
そうでないものがあるから、船に積み込む食材選びは苦労しそうだよ。
すでに席について夕食を楽しんでいるクルーたちをみるとそう思うんだ。
いわゆる人型種族というのは共通のメニューでいいみたいだけど、
僕たちワイバーンは基本的に肉しか食べない。
それに必要な食事の量も多いからね。
群れの仲間と一緒にコロニーで暮らしていたころは
こんなことは考えなかった。
おっと、僕の番だ。
順番が回ってきて、プレートに載せてもらったのは──
これはたぶん牛の肉かな。火を通したブロック状の肉に
すりつぶしてから水と混ぜた野菜か何かを練りこんだ感じで、
僕たちが普段食べる獲物の肉を再現したような、そんな感じに見える。
昔は生肉のほうが好きだったけど、最近はもう調理済みの肉を
食べることにも慣れたよ。単独で探索している間は
自分で狩りをすることも多いけど、
町に立ち寄った時はそこにあるものを食べるから。
地域によっていろいろ違いがあるのも面白いしね。
そして、配給を受け取ったらさっき確認した窓際の席まで歩いて
テーブルに料理が乗ったプレートを置く。
ワイバーン用のテーブル……テーブル? は位置が低いから機械の腕で
そこに下ろそうとするとすこしやりづらいな。
周りを見てみると、隣ではほかのワイバーンたちが仲間と
何か話しながらちょうどいい大きさに刻まれた
ブロック肉を口に放り込んでいる。
指令個体ではない僕には周りの話し声のせいで
何を言っているのかは聞こえないけど。
さて、夕食を済ませようか。
……そうするにはまずヘルメットを外さないといけない。
顎の関節のロックを外せばそれでも行けるけど、汚れたりすると面倒だから。
ヘルメットの接続部に機械の腕を伸ばし、
金属製の指先から決められた魔術指令の配列を流して
ヘルメットの固定を解除する。まあ合言葉みたいなものかな。
固定が解除されたらあとは普通のヘルメットと同じように外せばいい。
ただ、先に耳の部分から引き抜かないと引っかかるんだよね。
「あ、お前セルンだろ? ヘルメット外したところ初めて見た」
外したヘルメットを床に降ろして料理を食べようと思ったところで
ちょうど隣にいる同胞から話しかけられた。
身体の色は灰色だから都会暮らしか山岳出身かな? 僕と同じだ。
「食事の時以外は外さないからね。君はこの船の飛行兵?」
「いや、俺は砲手やってる。ほんとはエンジン付けて
飛びたかったけど数的に間に合ってるらしくてなぁ」
少し悔し気に天井を見上げながらそのワイバーンは話す。
僕たちにとって空を飛ぶことは種族のアイデンティティで、
誇りでもあるからそう感じるのはわかるよ。
でも、彼は今の役割に不満を抱いていそうには見えなかった。
「だけど、砲塔の操作も同時に僕たちの得意分野。だよね?」
「そう、だから別に嫌ってわけじゃない。
目がよくて空の飛び方を理解してる俺たちが適任なわけだから。
でもお前の噂は散々聞いててな、
軍用の魔工エンジンで世界中を自由に飛び回って、
今まで誰もたどり着けなかったようなところから新品同様の
遺物を持って帰ってくるとか……
今ここで実際に会って話してみるとやっぱり羨ましく感じる。
砲塔を動かすのもいいがやっぱり空をあきらめるってのは厳しいよなってさ」
こちらを見ながらそう話す彼は、
邪魔にならないよう畳んでいた翼を少しだけ広げてみせた。
自由な流れ者の僕を見て、しまっておいた気持ちがまた飛び出してきた、かな。
──ワイバーンは基本的に群れで暮らす種族だ。
僕も以前は群れの仲間と一緒にいた。
コロニーでの生活は特に不自由もなく外敵はいないし、
食べるものに困ることもなかった。
数羽のリーダーの下でそれぞれが自分に割り当てられた役目を
果たしながら効率的に生きていく。それが僕たちのやり方なんだ。
だから、軍隊での仕事はワイバーンにとっては実際のところ
群れの中での暮らしとあまり変わらない。
全体をまとめる個体がいて、その下により細かな各分野を仕切る個体がいる。
そしてさらにその下に一般個体が。
ワイバーンの指令個体と通常個体の関係は兵と士官の関係に似ていると僕は思う。
佐官や将官は上位の指令個体。
尉官や下士官は現場と上をつなぐ下位の指令個体。
自分の役目を果たすことで群れ全体に貢献できる。
それは別に悪いことじゃないし、むしろ合理的。
でも、僕たちは生き物だ。
違うことをしたいと感じることもある。僕もそうして今に至ったんだ。
軍に努める同胞の言葉は、少し考えさせられるものだね。
「その気持ちはわかるよ。僕も昔は群れの偵察隊にいて、
毎日哨戒飛行の仕事についてた。でもどうせ何かを探して
飛ぶんだったら世界中あちこちを見て回りたいって、そう思って、
そこから年月を経てここにいるわけだから。
でも、今の仕事を黙ってこなす君は立派な群れの一員だと思うよ。
空軍っていう群れのね。自由か使命か、どっちを優先するかは
君の問題だから僕は何も言わないけど、悩み続けるよりは
すぐに決めてしまった方が楽でいいと、僕はそう思うね」
「まあそうだよなぁ。この船で砲手ってかなりの重要職だし、
うん。よし、じゃあ、飯の邪魔して悪かった。ありがとうな」
僕の話に耳を傾けつつしっかり食事を続けていた彼は、
気持ちに区切りをつけると自分の分のプレートを咥えて
配給カウンターへ向かい、それを返却して部屋を去っていった。
軍隊では常に自分がやりたかった職に就けるわけじゃない。
群れ社会では配置転換もリーダーに相談すれば調整してくれるけど、
この辺の堅苦しさは明確な違いか。
さて、僕も早く夕食を済ませて明日に備えないとね。
ほんの少し温度が下がってしまったブロック肉を
口先で咥え、そのまま喉の奥へと放って飲み込む。
…………このくらいの大きさだとどうしても癖でこうしてしまうね。
せっかくの艦内料理なのに。
軍艦は海や空に浮かぶ小さな町みたいなものだから、
そこで出されてる料理も船ごとに違いがあって面白いんだけど……。
まあまだ5つあるから気にしないでいこう。
二つ目のブロックはしっかり口に入れて噛んでみる。
ふむ、人間たちが使う調味料は僕たちにとって有毒な
ものもあるからそういうのは最低限だけど、
問題のない範囲で軽く味付けされているのかな?
退屈はしないししつこくもない、適度っていうのがふさわしい味だった。
味は見たから、あとは窓の外の景色でも見ながらかな。
外はもう真っ暗だ。
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残りの分も食べ終わったので、ヘルメットをかぶりなおしてから
プレートを配給カウンターに返して通路に出る。
もうだいぶ遅い時間だしクルーもみんな部屋に戻っている様子だ。
まだ仕事が残っている整備士が数個体いるくらいで
飛行兵や飛行士の姿はなかった。
ハフィルは空いている部屋を勝手に使えと言っていたけど、
さてどこにしようかな。
ワイバーン用の宿舎は……こっちか。
通路内の案内表示に従って移動する。
いろんな種族が乗っていると宿舎の作りもそれぞれ別になるから、
船という閉鎖空間だとやっぱり無駄はあると感じるね。
同胞たちのいる宿舎の通路をしばらく歩くと、
だれも使っていないのか名前が書かれていない士官用の部屋があった。
この船の指揮要員は人間が多いからこうなったのかな?
ならここを使おうか。
僕たちの足でも操作しやすいように作られた大きな開閉用
ハンドルを掴み、扉を押して開く。
部屋に入ると、ここは本当に誰も使っていないみたいで
中は明かりも消えていて、部屋の備品も元あった位置から動かされた形跡はない。
未使用なのを確認したので、扉をくぐってすぐ左の照明操作盤から明かりをつける。
すると、砂色にも近い光で部屋が照らされた。
内装は上位個体向けなのか豪華だけど、でも落ち着いた上品な質感だね。
僕たちは基本的に寝るとき以外は立ったまま過ごすから当然椅子とかはない。
というよりは人間が使うような家具の類は最小限かな。当たり前だけど。
唯一あるのは鏡と収納、そして寝床だ。
鏡が置いてあるのは正直評価が高いよ。
翼や爪の手入れをするとき助かるからね。
設計した人型種族の技師が僕たちのことをよく
理解してくれているというのがはっきりとわかる。
建築様式、設計思想と機能性。古い文明の残骸からも
いろんな意味を読み取れるけど、現代の建築もまた今ここで
生きている多くの種族の意思が込められているんだ。
感心してしまうよ。町に長居することがない僕の場合、
現代の建築に触れる機会のほうが少ないというのもあるんだろうけどね。
よし、今日はもう寝よう。明日は殺伐とした日になるから。
部屋の隅に置かれた少し懐かしい、
鳥の巣と同じような構造をした寝床に座り、そのまま伏せて丸くなる。
いい感じだ。よく眠れそう。
……コロニーでの夜を思い出すね。
[主要種族: ワイバーン]
ワイバーンは2つの脚と1対の翼、長い首と尻尾を持ち、鋭い爪と牙で狩りをする知的種族である。
4つの脚に1対の翼を持つドラゴンが気流制御の魔法無しでは離陸することができないのに対しワイバーンは羽ばたき推進のみで離陸、上昇が可能であることから飛竜とも呼ばれる。全長は大きくとも6m以下で、体重も70-90kgと軽い。通常時の姿勢での頭の高さは2m前後である。
ワイバーンの表皮は居住環境に適応して少しずつ色が変化するという特性を持っており、体色で出身地の環境を推測することが可能。寒冷地出身であれば白や明るい灰色、山岳出身は灰色、砂漠や荒野出身は砂色や橙色というのが最も一般的とされる。
一部を除き群れで行動する種族であり、ほとんどの場合群れの全固体が居住できるコロニーで集団生活を送り、数百分の1程度の確率で発生する優れた知覚力を持った"指令個体"の下に小グループを連ねて指揮系統を形成してそれぞれのグループリーダーの下で最下層となる一般固体が働くという軍事組織に似た社会性を持つのも大きな特徴となっている。指揮官や部隊長に当たる指令個体は通常固体と比べ明確に大きな耳を持つため容易に判別可能である。
異種族との協調政策を掲げるアジマ王国においては都市部でも日常的に目にする種族であり、攻撃的、または獰猛な印象を受ける外見を持つ彼らを警戒する国民は現代においてはほぼ見られなくなっている。
人間の生活圏内で共存するワイバーンたちの多くは伝令や配達、通信中継に捜索救難、兵士や保安隊員など彼らの強みを活かせる職業についており、傭兵として活動するものも存在する。
また、人型種族とペアで行動する陸空両用の特殊兵科である"空中騎兵"の存在も特徴的だろう。




