#000F 機械の脅威 / Mechanical Menace
よく考えてみよう、相手は完全武装の戦闘ロボットや防御砲塔なんだ。
技術水準的に第三の文明(最も新しいもので約5000年前)の調査はこんなに危険じゃないです。
十字路を右へ、方角で言うと北へ進むことにしたけれど、
通路にはいくつも閉ざされた扉があるせいで
なかなか思うようには進めない。
出来るだけ永久照明の消費も抑えたいから、
一度追灯の呪文を使って明かりをつけようか。
…………。
> BEGIN CONTROL
> TIMER = "60m"
> execute FloatingTorch(2.5, 20, 200, [255,255,255])
> END CONTROL(TIMER)
意識の内に呪文とその入力値を思い描いて、実行する。
普段それほど魔法を使わない僕だと
どうしても呪文の構築に時間がかかるね……。
宙に浮かんで、指定した相対位置を保ちながらついてくる
明かりを作り出すものだけど、落ち着いているときじゃないと
こうスムーズには発動できないよ。
呪文が処理されると、僕の目の前、少し右寄りに
はっきりとした形は無いけど全方位に光を放つ点が現れた。
明かりが無いとこんな場所では何も見えない。でも、
同時に明かりをつけるということは僕以外のすべてに対して
こちらの存在を知らせる行為でもあるんだ。
正直、気が乗らない……。
ともあれ、視界は確保できたんだ、
閉まっている扉を切断しながら先へ進もう。
さっきは光の色をUVにしたけど、突然戦闘になる可能性も
考えると多分GAMMAのままにしている方がいいよね。
ダイヤルを合わせ直して、再び扉に光を当てる。
そうすると、前回よりも明らかに激しい閃光と共に
短時間で焼き切ることができた。
向こう側には何もなくて、周囲は静かなまま。
防衛用の機械が動いているなら足音くらいはするものだから……
少なくとも巡回しているタイプの機械兵器は近くにはいないらしい。
しばらくして、同じように行く手を阻む扉を切断しながら
北へ進んだところ。壁に書かれた案内表示に
"STORAGE 10" の文字を見つけた。
7番倉庫の北側が10番ということは、
倉庫の並びは南西方向からから一行あたり3つで
北向きに伸びているのかな? 地下空洞から大分距離があるんだ、
もしかしたら完全な状態で構造が残っているかも。これは期待が持てる!
……うん。同時に無傷の防衛機構が
残っている可能性ももちろんあるよ。
でも、これはかなり重要な発見ができる気がするんだ。
だから、僕は目印の永久照明を床に落としながら
十字路を東向きへ曲がって、案内表示にある10番倉庫へと進む。
進むか引き返すか。第二の文明の遺構のような危険な場所へ
潜るときのこの選択はね、正直に言えば
たちの悪い賭けごとのようなものと感じることがある。
勝てば貴重な、役に立つ遺物を見つけられるかもしれない。
でも、負ければ二度と帰ってこれないかも。そんな感じのね……。
……不気味なくらいに静かで、無機質な鉄の通路を
ゆっくりと歩いてついに10番倉庫へ続く扉の前までたどり着いた。
僕が通ってきた道にはいくつもの記録用の永久照明が転がっていて、
まだ断面がオレンジに光っている溶断された扉の残骸も。
軽く丈夫な金属の扉を簡単に切断したこの鉄の光と呼ばれる遺物。
これを作ったのは第二の文明なわけだよね。
つまりは、その文明の残骸を守る機械たちが
装備している武器だって同じような威力があるんだ。
もし倉庫の中に固定式の砲台があったら?
開けた瞬間に塵すら残らずに焼かれるかもしれない。
今までに何度か、実際に攻撃を受けたことがあるよ。
機械たちの狙いは正確で、そして素早い。避けるのはほとんど不可能で、
もし戦う必要があるなら攻撃を受け止められるだけの
防御が無ければ反撃することすらできない。
はぁ…………世間はみんな僕のことを恐れ知らずで、
実績豊富な探検家だと思っているけど……
いつになってもこの緊張感は慣れることが無いんだ。
……よし、覚悟を決めて、賭けに出ようか。
右手に鉄の光を、左手には瞬く壁を持って、扉に狙いを合わせる。
今回は焼き切るわけじゃない。
ドアを切ってからPULSEへ切り替えている暇は無いからね。
引き金に指を掛け、呼吸を整えて、光を放つ。
鋭い破裂音と共にレンズから光の筋が伸びて、
僕の目の前にある扉はオレンジの閃光に包まれ、轟音ととも砕け散った。
──その瞬間、ガラスが割れるような音に続いて
僕の目の前で光の破片が飛び散る。
直後に訪れる激しい胸の痛み。
視界がぼやけて、手から武器を落としそうになる。
でも、敵の姿は見えたよ。
いくつものコンテナが積み上げられた倉庫の奥。
天井付近に逆さまになって取り付けられたあの機械だ。
衝撃で姿勢を崩しながらもなんとか狙いを合わせ、
敵の二撃目が来るよりも早く僕は鉄の光を放った。
……まずは一つ。
これだけの広さの倉庫を守る砲台がたった一つなわけがない。
今の騒ぎで間違いなく他の砲台の注意も入口へ向いたはず。
次仕掛けるときは……そうだね、
エンジンをふかして一気に飛び込んで遮蔽を取る。
他の経路から回り込むことも考えたけど、
その場合はまた扉を破った瞬間に一撃もらうかもしれない。
あれが設置されていた位置は真正面だった。
そして、倉庫は格子状に並んでいるのなら砲台の配置は
部屋を上から見たときの四角形のうちそれぞれの辺の中心。
ここから見えるコンテナの配置から見て、
ちょうど部屋の中央近くの床に置かれたままのコンテナの陰なら
入って左側の砲台からの射線を切れる。
背後にある砲台は灼陽で対処すればいい。
でもまずは、傷の具合を確かめてからだ。
====
手鏡で飛行装具の胸のあたりを見てみると、
貫通はしていないけど表面の装甲に穴が開いて、
軽い多孔質の素材部分に銀色の針のような物体がめり込んでいた。
身体を軽くよじってみても特に痛みは無いから、
単に強い衝撃を受けただけで骨や内臓には異常はなさそうだね。
破砕光盾と貫雲に
それとケーリムに感謝しないと……。
さて、今の感じだと配置されている砲台はたぶん、
連合で使われている多段式磁気加速砲のより強力な形態だと思う。
物理的な飛翔体を使っているようだからね。
高出力の光線兵器じゃなくて本当に助かったよ。
態勢を整えたら、次で決着を付けよう。
もし砲台が部屋の四隅にもあったなら……そうだね、
瞬く壁の出番かな。一つしか持っていないものだから
できれば使いたくないけど、命には代えられない。
使うものは鉄の光と瞬く壁、そして灼陽の三つ。
魔工エンジンのスロットルを最大にして部屋に飛び込みつつ
上向きの突風を起こして灼陽を入口のすぐ上にあるはずの砲台へ打ち上げる。
出来ればの爆発が起こっている間にコンテナの陰まで潜り込めれば完璧かな。
高熱で多少目くらましができるはず。
右側の砲台はコンテナに隠れる前の飛行中に破壊して、
左側はもう一度真っ向勝負かな。
すべての敵を狙えない位置でもたついていたら
ただ不利になるだけだよ。砲台が四隅にあったときは
瞬く壁を突き刺して、防壁の中から冷静に狙おう。
これが一番確実だから。
最初から瞬く壁を使えばいいのにね。
でも、もしそれを使うに値しないような状況だったらと
考えてしまうとどうしても思い切ることができない。
……さっきの例えの通りじゃないか。たちの悪い賭けごとだって。
命がかかっているのになぜこんなことを考えてしまうんだろう?
それじゃあ、行こうか。
室内で床の上を滑るように飛ぶには、しっかりと体を水平に保って、
揚力の強さも安定させないといけない。
地面すれすれでは思った以上に体が浮き上がってしまうし、
閉鎖空間での飛行は体で押しのけた空気が渦巻いて危険だ。
魔工エンジンを始動して、いつもよりずっと低い離陸姿勢を取る。
カタパルトで打ち出されるときのものにも近いかも。
左右の手が塞がっているから灼陽は足でしっかり掴んで、
すぐに投げられるように。
心臓の鼓動のリズムを見計らって、
スロットルを開くとともに勢いよく前へ体を押し出す。
移動の慣性を考慮して灼陽は早めに足から離し、
そのまま部屋へ飛び込んだ。
背後で灼陽が部屋の床を転がったことを音で察して、
その足元に強い上昇気流を作り出す。
巻きあがる気流に周囲の空気が吸い寄せられて
向かい風で体が少し浮かぶけど、もう後戻りはできない。
その直後に背後では青紫の火の玉が弾けて天井を焼いた。
床をこすりそうな低さで一気にコンテナの陰へ滑り込む僕をめがけて
飛んできた金属の針の数は二つ。どちらも運よく当たらなかった。
二方向からのみの攻撃。後ろの砲台は片付いたんだ。
そして予想通り砲台の数は四つ。
ならあとは二つのはず。加速から一気に減速に転じて、
着地のために足を前に突き出しながら胴体を起こし、
部屋の右側の砲台へ鉄の光のレンズを向け、光を放つ。
ああ……さっきと同じ……。二枚目の破砕光盾が割れて、
光の欠片が散らばった……。
向こうの方が少しだけ撃つのが早かったんだ。
今度は翼の付け根の近くに直撃を受けて、
僕の身体は床に強く叩きつけられた。
かろうじて左の砲台からは射線が通らない位置で着地したけど、
右の翼の感覚が無かった。
…………どうしようかな。
すぐに直せる範囲の傷ならいいな。
最初から、瞬く壁を飛行装具に貼り付けて突入すればよかったかな?
今になって判断の誤りを嘆いても仕方がないけど、
もう少し……やりようはあったと思う。
しっかり鉄の光を握ったままだったのは本当によかったよ。
本物の腕じゃないからこそ、
血が通っていないからこそ衝撃で取り落とさずに済んだんだ。
最後の敵を片付けよう。
怪我をした右翼を畳んで、すぐ背後にあるコンテナの方へ向き直り、
エンジンをふかすと同時にそれを強く蹴飛ばして身体を弾き出す。
少しだけ斜めに角度をつけて遮蔽から飛び出したおかげで
砲台が僕に狙いを合わせるまで少しの猶予がある。これで決めよう。
照準を定めて、何度もそうしてきたように引き金を引いた。
見慣れた一筋の光は天井に取り付けられた砲台の根元に突き刺さり、
鏡面風防が無ければ耐えられないほどの
オレンジの閃きと共にこの部屋の最後の敵を粉砕した。
僕は勢いのまま背後にあるコンテナを積み上げる棚へ衝突したけど、
まあこのくらいは防衛機構の攻撃と比べればなんということはないよ。
これで、この部屋を安全に調べられるんだ。
はぁ……息が苦しいし、喉も乾いた。
これだけ騒ぎを起こして巡回の機械兵士たちが
ここまで来ないんだから、しばらくはここで休もう。
傷の手当てとコンテナの中身の調査に……
あとは記憶媒体の類も探さないといけないからね。
最低限価値のあるものを持ち帰らないと大赤字だよ。
いいものが見つかってくれないと困る……。
[装備品: 一八八五式 増幅破砕光盾]
光軸の刻印魔法を用いた個人用防壁発生装置の一種。本来は要人の警護用に少数のみ生産されていたが、後に民間市場にも開放され、現在では高価ではあるもののアジマ王国の中枢地域であればほとんどの軍用装備販売店で購入できる。本装置の最大の特徴は、文字通り光の壁と言える、固体のように振る舞う特殊な力場を発生させ、光線系の攻撃を含むすべての種類の攻撃に対して防御効果を発揮する点である。
また、一八八五式は"不意の一撃"を防ぐことに特化しており、作動時間が極めて短く、かつ最大防御許容量が一般的な防壁発生装置の100倍に迫るものとなっている。
防壁は何らかの物体やエネルギーが使用者へ接近する際、その脅威度が高い場合のみ作動し、約1秒間高強度の光の壁を生成し、壁はその後すぐに消失する。また、この際鋭いガラスの破片のような光の欠片が飛散し、近距離の攻撃者への反撃を行う。この性質上破砕光盾の使用者のそばに立つことは非常に危険である。なお、一八八五式は微細ルーンを使用した受動マナ吸収による動力補充機能を有するが、受動マナ吸収のみを利用して動力枯渇状態から最大まで充填するためにはほぼ一日を要する。最大充填状態からの作動可能回数は3回。
コメント:
爆発反応装甲の魔法。ひとはちはちごしき ぞうふくはさいこうじゅん と読む。
一度に受け止められるエネルギー量は最大で4MJ程度です。
それを超えるものは貫通します。
セルンはこれをそれぞれ前面と背面に防御範囲を制限して二つ装備しています。
こうすれば片方を使い切ってももう片方で受けることができるので。
なお、防御範囲が重なると動作不良の原因になるので非推奨。
マナを格納しているシリンダーを交換すればすぐに再使用可能になりますが戦闘中はさすがに厳しい。
[遺物: 瞬く壁]
楔、または杭のような形状をした第二の文明の防壁発生装置らしきもの。
任意の表面に突き刺すようにすることでそこへ張り付き、装置を中心に球状の防壁を展開する。
防壁の半径は約5メルハで、10秒間持続することが確認されている。
これらの特徴から、定点防御用途などではなく緊急時の退避用に使用される高出力防壁発生装置と考えられる。なお、突き刺すようにするというのは設置する際に必要な動作であり、物理的に刺すことができていなくとも問題は無い。使用者の防具の胸当てなどに押し付けるように設置すれば防壁を纏うようにして移動することも可能。
コメント:
敵味方識別機能付き球形シールド。
使用者の攻撃は通し、それに危害を加えようとするものは防ぎます。
強度は増幅破砕光盾の100万倍の4TJ。多少距離さえあれば核爆発すら防ぎます。(直撃は無理。ちなみにTNT換算1キロトンでだいたい4TJを超える。)
某地球を防衛するゲームのWのシールド系が多分イメージとしては近いです。
ただし全方位防御。
[遺物: 灼陽]
起動させて投擲すると約5秒後、または有効な敵対目標への接触時に超高温の火球を発生させ爆発する、現代の破砕水晶に似た使用法を持つ遺物。危害範囲は第二の文明の遺物の中ではかなり狭く、大量破壊用途ではなく通常の戦闘時に使用する装備の可能性がある。爆発時に発生する火球の温度は現代の技術では測定不可能であり、回収された灼陽の試験時には標的として選定されたすべての機材を完全に蒸発させるという結果を残した。
コメント;
しゃくよう と読みます。
その実態は割と単純にプラズマグレネードですね。温度は12万ケルビン程度。
説明にある破砕水晶とは高温、低温、放電などの一般的な攻撃魔法の効果を周囲に拡散させる手榴弾に相当する武器です。
[旧時代の兵器: コイルタレット]
コメント:
室内警備用の単装コイルガンタレット。
セルンの装備でも防壁と併せないと1発で重傷を負うほどの威力があるので、装甲の薄い部位に当たると防壁越しでも内部まで貫通する可能性あり(今回の最後の方で被弾したのがそれ)
まあ、セルンの防具はあくまでフライトスーツなので、陸上種族用の重装全身鎧として作られたものなら耐えれます。FCSの設定は基本的に命中優先で、射線が通っている部位の中で最も的が大きい部分を狙いますが、ワイバーンの翼の皮膜などの当たっても致命傷にならないような部位は避けます。なので大抵は胴体狙い。ただし、様子を見るために頭だけ出したりすると非常に危険。センサーは赤外線主体で可視光認識は補助。なのでプラズマグレネードで短時間なら目つぶしができます。
おまけ:
最初の方にあった呪文の中身
spell_def FloatingTorch(float DistanceOffset, float AnchorDirection, float Intensity, float[] Color)
float Wavelength
ManaManipulation.SetSource(self.ManaPool)
ManaPolarization.SetAxisAndPolarity("LightAxis", "Bright")
ManaManipulation.SetManaFlow("ALL", EjectionSource.GENERIC_HEAD, Direction.DIR_OWNER_LINE_OF_SIGHT)
ManaManipulation.SetAnchorPosition("Relative", DistanceOffset, AnchorDirection)
Wavelength = Light.CalculateWavelengthByRGB(Color)
Light.SetWavelength(Wavelength)
Light.SetEmissionShape("Sphere")
Light.SetIntensity(Intensity)
end
まあ、厳密に設定作ってるわけじゃないので大体こんな雰囲気程度に思ってね。




