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#000B 偽りの青空と鉄の都: その2 / False Skies and Iron City: Part 2

更新が遅すぎる。

着陸誘導灯以外特に何もない、これだけ開けているのにかかわらず

ほとんど風の吹かない発着場を少し歩き、アークタワーの中へ入る。


連合のアーコロジーではどこもそうだけど、相変わらず扉が重たいね。


そんな装甲板みたいな扉を開いた先は、地上40階の副次資料室。

すでに終了済みの研究に関する資料を保管する場所だとか。


逆に、今進行中の研究で使うものはもっと下の方にある

主要資料室に保管されているって話だよ。


上に行くほど床の面積が減るし、あまり重いものも置けないから

実際の研究室はすべて地上に近い部分に集まっているんだ。


何で資料室の隣に発着場をつけたのかは知らないけど、

まあ僕としては空から入ればすぐに資料を探せるのはありがたいかな。


さて、今はここに用はないし、下に降りよう。

道中ですれ違った衛兵に挨拶をしつつ階段を下りて、35階へ。


……待って、何で僕は昇降機を使わなかったんだろう? うーん。




降りた先、35階は衛兵以外誰もいない資料室とは

正反対ににぎやかだった。


大きな窓のある眺めのいい部屋で休憩中の学者や研究員、

技師たちがくつろいでいる。


35階は上層居住区の一番上の階で、食堂と展望台がある階だね。


アーコロジーではフィールドワーク以外で屋外に出ることがないから、

こういう快適さや楽しみを得られる施設は

やっぱりなくてはならないんだろうなぁ。


流光の居住区が充実しているのと理屈は同じかな。


で、ここで用があるのは…………。


みんながこの部屋にいるというわけではないにせよ、

ひとまずは周囲を見回してみる。


これだけ大勢いると探すのが大変だけど、

幸いなことにすぐに見つけることができた。


旅に適した丈夫で動きやすい服を着たあのグループ。


いわゆるフィールドワーク組だ。正式には遠征調査班だったかな?


「あ、セルンじゃない! 例の穴、ちゃんと見つけられた?」


声を掛けようと近づいたところ向こうも僕に気づいたみたいで、

そのうちの一個体が声をかけてきた。


「正直に言うよ。だめだった。」


「あら、あなたでも見つけられないなんて、意外ね」


「いやいやあれは空からじゃまず見えないよ」


僕の素直な言葉を聞いて、特に嫌味でもなく驚く雌の人間が

遠征調査チームのリーダーのカリア。



そして、彼女とは逆に納得の表情を見せる雄のフェルツェが

戦闘工兵のクウェイス。




「ははは……君の忠告を聞いておくべきだったよ、クウェイス。

それで、後でいいからもう一度しっかり場所を教えてくれないかな?

今はちょっと昼食の邪魔をしてしまうことになるし、後で、ね」


「はいはい、それくらいならよろこんで。じゃあ、少し待っててよ」


「それにしても、ワイバーンの目でも見えないものなのねぇ。

まあ正確な位置まで伝えてなかったから、

確かにそういうものなのかもだけど」


呆れつつもしっかり協力はしてくれるクウェイスに対して、

カリアは何というか、僕たちワイバーンの知覚力についての知見の方に

興味をひかれている様子だね、うん。


最初会った時もそうだったけど、彼女はどうも自分の

興味の対象のことを何かと優先ししがちみたいだ。


「はぁ、僕もさすがに少し探せば見つかると思ってたんだよ。

でもクウェイスの言うとおりだった。ちょっと急ぎすぎたね。

じゃあ、向こうで待ってるよ。ありがとう」


カリアの方はどうもまだ少し言いたいことがありそうな

雰囲気だったけど、長話で邪魔をするのは悪いからね。

早々に切り上げて待っていようか。


……待ち時間は窓の外の景色でも見ようかとも思った。

でも僕は一応部外者だし、素直に

邪魔にならない壁際で大人しくしていようね。


部屋の入り口の近く、

通路を塞がない程度の場所まで下がり、しばらく待つ。


この階で今昼食を楽しんでいるのは、当たり前だけど

ここに勤める様々な分野の研究者たちだ。


例のごとく僕の耳ではそれぞれが何と言っているかまでは

わからないけど、でもその中で一部聞き取ることのできる言葉の中には

この近くを通過した流光のことや、どうもいくつかの遺構は地下で

繋がっている可能性があるという話があった。


……地下で繋がっている、というと確かにそれは僕も考えたことはあるね。

砂岩の傷跡には崩落した連絡通路らしきものの残骸が

いくつか残っているから、もしかすると短い距離だけでなくて

もっと遠いところまで伸びている可能性は高いよね?


現に連合の都市国家同士は地下トンネル網で繋がっているものも

あるんだから、現代の技術でできるということは今よりも

優れた技術を持っていたとされる第二の文明なら当然できるはず。


さらによく聞いてみると、なにやら実際に地下通路を見つけた

個体もこの中にいるみたいだ。興味深いね。


これじゃあなんというか盗み聞きみたいだけど、

まあ僕は認可を受けた探検家だからいい……よね? 多分。




おっと、話を聞くのに夢中だったけどそろそろみんな食べ終わるころかな。

人型種族は食事に時間をかけすぎとも思うけど、

同時にいろいろなものを食べられる体はうらやましくも思う。


僕たちは基本肉しか食べられないから。


そんなことを思っているうちにもみんなテーブルに並べられた

ものを片付けはじめ、それぞれ仕事に戻っていく。


「お待たせ、じゃあ詳しい話をしようかしらね。

まあとりあえずついてきて、地図を見ながら説明するから」


他の研究員や学者たちが下の階へ降りていく中、

ようやく食事を終えたカリアたちが壁際で待つ僕の元へ来た。


「わかったよ、ついていく」


素直に返事をして後に続こうか。


僕の言葉を聞くまでもなく先に歩き始めていたカリアの後を追い、

階段で下の階へ。


「カリアはいっつもあんな感じなんだよ、ごめんね」


「まあ、僕も割とそういう強引なのと仕事をすることは多いよ。大丈夫」


その途中、クウェイスは隣を歩きながらこちらを見上げて

彼女のせっかちな態度を詫びる。


彼も大変そうだね。

まさに振り回されているという言葉がふさわしいのかも。


クウェイスに気にしなくていいと伝えつつ彼女の後に続き、

少し歩いて降りてきたのは地上32階にある遠征調査班の控え室の一つだ。


遠征チームは基本的に個人装備が多いし、

それぞれの適性や好みでいろいろなものを使うんで自前の装備を用意して

職場に持ち込んでおくみたいだよ。


派遣の指示を出すのは上だけど、

でも現場で活動するのは遠征チームだからね。




「ここが私たちの……あー、まあ実質の宿舎? とにかく入って、

実をいうとこっちからも話したいことがあってさ」



部屋の入り口の前で一度立ち止まり、

改めて案内をするカリアだけど、話したいこと? なんだろう。

何か仕事の依頼かな? どうせ行くついでに拾ってきて

ほしいものでもあるとか、そんな話に見える。


あまり重たいものは勘弁してほしいけどね。


それ以外に気になることもないので彼女の後に続いて中へ入ると──おおぅ。


そこにあったのは山積みになった資料の写しで埋もれた机に、

壁に貼られた使い古しの地図。開けたままになっているロッカーがあれば

壁際の床に伏せて寝ているグリフォンもいる。


フィールドワーク組ってこういうものなの? 最近はいろいろなものが

次々見つかってるし忙しいのかもしれないけど、ずいぶんと荒れているね。


「えぇと、これはどういう状況なの?」


何食わぬ顔で入ってきた扉のそばに立つカリアに率直な感想を述べる。

察せることは多いんだけど言わずにはいられなくて。


「あー、ごめんねほんと。最近忙しくて部屋の整理もできなくてこの様なんだ」


「そう、忙しいの……。遠征調査班って言ってもずっと外に出てる

わけじゃないし、かといってずっとデスクワークってわけでもないから──ほら、

最近新しい発見が続いてるでしょ? 調査に派遣されて、

戻ってきたら報告をまとめたり結果の分析したりでねぇ」


……二人ともうんざりしてそうな表情で説明してくれた。

正直申し訳ない気持ちになったよ。


「なるほど、ね。で、そこに僕が戻ってきて余計な仕事を増やした、と。

……いや、ごめん、時期が悪かったね」


「まあ、いいの。それに話したいことって言うのも実際のところ

こっちの仕事を減らせるかもしれないことなんだし」


邪魔したことを謝る僕に対し、"仕事を減らせるかもしれない" と話す

カリアは何かいい結果を期待している様子だ。


お互いに気を使い続けていてもきりがないし、

まずはこっちの用事を済ませようか。


「さて、話したいことというのも気になるけど、

たぶんその話を聞くにしても例の開口部の位置は

確認しておかないといけないだろうから説明を頼むよ」


気付かないうちに力が抜けていた翼を改めて畳み、

僕の方から話を本題に移す。


「おっと、そうだね、まずはそのことなんだけど、

ほら、こっち、地図を見てよ」


部屋に入ってすぐ左によけていたクウェイスが

壁に貼られた地図の元まで駆け寄り僕を呼んだ。


使い古されてぼろぼろの地図には今まで発見された第二の文明の施設や

その残骸の位置が記されていて、種類別に異なる印で分けられていることも分かるね。


地図の範囲内には砂岩の傷跡の裂け目から露出する

通路や出入り口の位置も見える。


砂岩の傷跡はこの辺りでは最も規模の大きい遺跡群なんだけど、

調査ができるのは裂け目から露出しているごく一部の構造だけで、

中へ入る試みはいまだに成功していないんだ。


今回の合同調査計画で初めて大規模な調査が行われるし、

今後の動向に注目かな。


で、僕が今見るべきものは例の地面に空いた穴の位置だ。

最初に大まかに教えてもらった位置を地図で見てみると、

すぐに遠征チームが書き込んだ印を見つけることができた。


「ああ、これかな? かなり近いところまでは

来ていたみたいだけど……いやぁ、惜しいね」


「え、そんな一瞬見ただけでわかるの?」


すぐにどの印がそれなのかを見つけた僕に対し、クウェイスは少し驚いている様子。


「まあほら、ワイバーンって地図見なくても

迷わないし、たぶんそういうものでしょ?」


一方でカリアの方は特に意外でもないといった反応だった。


僕たちは方角に関しては体で感じることができるし、

今どこを飛んでいるかは星を見ればわかる。


それにどの方向にどれだけ飛んだかだけで、大まかな位置は把握できる。

だから基本地図はそれぞれの経由地で一度見れば十分なんだよね。


「うん、そうだね。とにかく場所はわかったよ、ありがとう。

さて、じゃあそっちの話を聞こうかな」


当初の用事は済んだし、二人の言葉は流しつつ本題に移ろうか。


「なんか……ものすごいあっさりだったけど、まあ、いいか」


「そうね、じゃあ説明するから。こっちへ来て、セルン」


色々と詳しい位置について話そうとしていたせいか、

拍子抜けした様子のクウェイスのことは気にもかけず、

カリアは部屋の中央の大きな机に積み上げられている

発掘品の山へ案内してくれた。


いや、なかなかの散らかり具合だね、これ。

軽く見た限りでは回収が容易な小物が多いんだけど、

いくつかは机に据え置いて使うサイズの遺物もある。


ふむ、カリアは仕事を減らせる可能性があると話していたけど……

要するにこの地域での遺跡の分布やそれぞれの遺構の位置の記録、

当時持っていたであろう機能や役割の推測に基づいた都市や生産設備、

軍事施設や観測所といったそういう一つのシステムとしての

全体像を組み立てていくために役立つ何か、ということなのかな?


壁に貼られた地図に書き込まれた情報は単なる位置の記録ではなく

種類ごとにしっかり分類されているし、特に目を惹かれたのは

地下構造への入り口の分布、開口部の方向から見た地下部分の範囲や

それぞれの接続に関する考察……。


可能性としては、何かの記憶媒体? これは面白いことになるかもしれないね。

何にせよ、話を聞かないという選択肢は僕にはないよ。

[飛行種族と長距離航行]


ドラゴン、ワイバーン、グリフォンなど、(気流制御に依存するかにかかわらず)飛行することのできる種族はみな方位磁針のように方角を感じ取ることのできる器官を有している。また、こういった種族は長距離を移動する際に夜間の空に映る星の並びや、地表の起伏のパターンを利用して現在位置を大まかに把握することが可能である。星空の見方のような知識は世代をまたいで継承されると同時にそれぞれの共同体、コロニー内で保存の利く形で記録されていることも多く、一部は人型種族の社会においても現在の天文、天測航法分野の資料や図表に統合され活用されている。


// 地形等高線照合と天測航法で長距離を移動するのが飛行種族での常識というわけです。

// 曇っていて空が見えない時は高度を上げて雲の上に飛び出したりすることもあります。

// セルンが長旅をする際は通常出発前に地図を見て、あとは特徴のある地形や夜間なら星を見ながら飛び、そこに方角を知覚する能力が合わされば道を間違えることはありませんね。場合によっては方角、移動速度、移動時間を利用した慣性航法も使います。


コメント:


アーコロジー内部の景色は人工の青空の下に広がる夜景といった感じで、空は明るいのに街は薄暗い独特なものです。ドームに当てられた照明は自然の散乱光ほど遠くまで届かないのでこうなっています。

高層ビル群の谷間で空は見えているのに日光が遮られて陰になっている様子をもう少し極端にした感じでしょうか。ただ、どのアーコロジーもこうというわけではなく、明るいところもあります。

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