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#000A 偽りの青空と鉄の都: その1 / False Skies and Iron City: Part 1

そもそもこの話のメインコンテンツは何か? と聞かれたら、少なくとも序盤はセルンがあちこちを旅して、遺物を探しつつ世界の様々な土地や文化に触れていく、といったものになるかと思います。


題名から察せる通りずっとそういう平和な展開とはいかないのですが。


……もともとはこれ世界設定も適当でやってたんですが、やっぱり設定を先に考えないと書けない民なので現状本文より設定メモの方が長くなっています。


高さ3.2kmの防空基地に設置された戦略防衛レーザー砲なんて元は出る予定が無かった。

高高度の薄い空気の中を今までにない速度で突き進む。

はるか下に見える地面はとてもゆっくりと流れていくけど、

速度計の針が指しているのは300メルハ毎秒。

いきなり汚れ仕事を押し付けられたことへの対価としては

文句のつけようがないよ。


さて、そろそろ高度を落としながら着陸に備えようか。


今の高度は高すぎるから、スロットルを絞り、

翼を畳んでいつも通りの巡航高度まで一気に降下する。

これだけ長時間自由落下したことなんて今までにあった?

そう思うくらいに僕は高いところまで来ていたみたいだね。


アーコロジーまではもうそう遠くない場所なのに、

街道を往来する者たちをはっきりと視認できないのは初めてだよ。

まあ、人よりもずっと大きい馬車や自動車は見えるけど。


そのまま風を切りながらしばらく落下を続けて

ようやくいつもの高さまで戻ってきた。


魔工エンジンの有無に関係なく、僕たちワイバーンが飛ぶのはこのくらいだ。

地上の様子も良く見えて、それでいて十分な見通し距離が確保できる。


ある程度高いから狩りをするときでも獲物に気づかれないし、

自然とみんなこの高度に落ち着くんだよね。


気づけばロカウルももう目の前だ、町に入ったら情報収集と、

必要なら消耗品も買っておこうかな。


====


ゆっくりと高度を落としながら飛び続けることおよそ10分。

町の天蓋ももうすぐそこだ。連合のアーコロジーはどこも

基本的な構造は同じで、外壁と天蓋部分の土台を兼ねる

円形の構造の上にいくつか着陸用の足場がある。


僕たちみたいな飛行種族は基本的にそこから出入りするね。


街道がつながっているのは地上にあるメインゲートの方で、

通常の出入りと大掛かりな荷物や物資の搬入はここから。


「ああ、セルンじゃないか。遺物探しはうまくいってるかい?」


翼を大きく広げて減速しながら外壁部分から突き出している

足場へ緩やかに滑り込んで着地すると、すぐに衛兵に出迎えられた。


自分でいうのもなんだけど、僕はまあいろいろと異質だからね。

こういう大きな町だと大抵みんな僕のことを知っている。


「残念ながら。もう少ししっかり情報を仕入れてから出ればよかったよ」


畳んだ翼を左右に軽く広げ、

人間でいうところの"お手上げ"のポーズをとりつつ衛兵に返事をする。


「へぇ、あんたでもうまくいかないことってあるんだなぁ。

おっと、余計な事聞いてごめんな、通っていいぞ」


「気にしなくていいよ。君の方も、警備業務ご苦労様」


こうやって何気ない質問をするのも、

一応相手の様子をうかがう手段の一つではある。

完全に密閉された都市だから、出入りするものには

しっかり注意を払わないといけないし当たり前のことだね。


彼には無難な返しをして、発着場と

アーコロジー内部とを隔てる重たい金属の扉をくぐって中へ入る。


外部に面している一つ目の扉を抜けた先は税関だ。

街に入るだけで税関を通らないといけないなんて変な話だけど、

"都市国家" 連合だから王国とはちょっと事情が違う。


こういうのは向こうだとエーティルの港くらいでしか見かけないかな。

あそこは軍港と造船所まである重要拠点だから。


税関では所持品検査はもちろん出入りの目的の調査とかも行われて、

それらが問題なければようやく抜けられるんだ。


「やあ、検査の方を始めてくれるかな?」


通路に入って、めったに出入りがないからなのか

椅子に座ったまま眠そうにしている職員に声をかける。




「……ふぁ、ああ、すいません、えぇと……検査ね、はいはい」


……本当に暇なんだろうね、彼。

まあロカウルに出入りする飛行種族なんて

ほとんどいないから仕方ないんだろうけど。


周りを見てみると、他の職員もみんな半分寝ていたり、

机に突っ伏しているのもいる。


「えー、まず所持品の方を調べさせていただきます。

その場を動かずにお待ちください。」


耐衝撃ガラスの向こうの彼がそう言うと、

所持品検査を担当する職員が遅れて出てきて僕の装備を調べ始めた。


前回街を出入りした時に武器について質問されたし、

許可証を見せる準備でもしておこうかな。


「特に問題はなさそうですねー。あ、武器の所持許可証はお持ちですか?」


「ほら、これだよ」


「ふむふむ、これも問題ありませんね」


予想通り聞かれたので素早く許可証を提示して、所持品検査を終わらせる。


「えぇと、すべて異常なしですね。通過を許可します、お進みください」


眠たいからなのか、それとも僕のことを知っているからなのか、

検査は何というか大雑把だったけど、無事に通行許可はもらえた。


……実際のところ、飛行種族に対してこういう関所や

それ近い類を設けているのは都市国家連合だけなんだよね。


人型種族は地上を移動するから国境や領境を超える経路を

制限できるけど、飛行種族の場合はそうはいかない。


王国でもそのうち飛行機械が軍事用以外でも普及したら

こういうことになるのかな?


その場合、僕たちも自由に空を飛ぶことはできなくなりそうな気がする。


でも、王国は今までも種族の違いからくる問題とうまく付き合ってきたんだ。

これからもずっとそうであるといいな。


さて、考え事をしつつ税関を抜けた先。

そこは、巨大なドームの下に広がる大都市を見下ろす絶壁の上だ。


高いところから入ってきたんだから、高いところに出るのは当たり前だね。


何度か来たことがあるとはいえ、やっぱりこの景色は見てて飽きないよ。


急ぐ必要もないし、少し街を眺めてから行こうか。

ちょうど目の前にいい感じの高さの柵もあることだし。


軽く羽ばたいて転落防止用の高い柵の上に乗って、

ゆっくりと町を見下ろしてみる。


都市国家連合の技術は驚くようなものばかりだよ、本当に。

防衛のために壁で囲まれた町なんていうのはどこにでもあるよね?

高い壁の上からなら近づいてくる敵にも気付きやすいし、単純に侵入を防げる。


町へ入る経路も限定できるから小さな村とかでも簡易な防壁くらいは

建てられていることは多いよ。それに、

壁で視線をさえぎれば中の様子を隠すこともできる。


対してこのアーコロジーは町全体を巨大なドームで覆って、

完全に密閉してしまっているんだ。


そんな街の中での暮らしはいったいどういうものになるだろう?

まずこの景色を見てすぐにわかるのは、限られた床面積の中で

隙間なく敷き詰められた背の高い丈夫な建物。


これは高さで広さの制限を回避する工夫だね。次に町の外周部分へ

視線を向けてみると、たくさんの農場がある。


ドームと防壁には換気用の送風扇や空調設備が。

町の空気は屋外とは違って少し薄暗さがあるけど、

ドームに当てられた空色の照明と街の明かりのおかげでそこまで閉塞感はない。


閉鎖空間だからこそなのか、無機質であると同時にとても清潔なようにも見える。

数百年でよくここまでのものを作ったと、本当に感心するよ。

思えば、こうやっていろいろな町でその土地の様式や文化に触れられるのも、

遺物探しの旅をしているから……か。


ただ旅をする、世界を見て回るだけというのも楽しいかもしれないね。


よし、そろそろ降りよう。


町まで降りるにはあちこちに設置されている階段や

昇降機を使ってもいいんだけど、僕の場合は必要ない。


柵の上から身体の重心を前に傾け──そのまま体を前へ投げ出すようにして飛び立ち、

翼を狭めて速度を稼ぐ。


そして、少しずつ頭を起こしながら再び翼を広げ、しっかりと空気を捉える。


これで一応室内だから仕方ないけど、もうすこし風があったらよかったな。


さて、まず目指すのは……いや、先に食事を済ませようかな?

……だけどこの時間帯なら学者たちも暇だろうし、

今のうちに詳しい話を教えてもらうのがいいか……。

悩むけど、ここは先に情報収集といこう。

昼が過ぎたら学者たちの研究の邪魔をすることになってしまうからね。


行き先が決まったのなら、描かれた青空の下、

煌めく街の明かりの上を滑空して貿易会社や研究機関、

それに行政施設の集まる中心街へ。


ロカウルの町は中心部に近づくほど建物は高くなり、

外側は低くなるんだ。農場とかの平坦な部分が必要な生産施設が

外周に集中しているからこうなっているんだとか。


僕が今目指しているのはそんな中心街にある高層建築の一つ、

考古学関連の研究施設と研究者たちの住居を兼ねる "アークタワー" だ。


名前は考古学(Archaeology)という単語の頭3文字かららしいよ。


====


防壁部分から飛び立って数分進み、

高層建築が立ち並ぶ中心街ももう目の前というところまできた。


王国では背の低い建物が多いから、こうやって僕たちが飛ぶ空に

建物が下から割って入ってくるような光景はなかなか新鮮に感じるね。


さらに町の中心への距離が縮んでくると、

見下ろすことのできる建物よりも僕の翼に並ぶような高さの、

そして首を上に向けなければ最上階を視界に収められない建物の数が増えてくる。


そんな石と鋼の林の中で、いくつもの高層建築の合間を縫い、

時々窓から覗くことができる中心街での暮らしを横目に流しながらさらに奥へ。




──目的地である中心に近づくごとに辺りの建物のが高さを増してくる中、

目の前の建物を避けて奥へ抜けたとき、唐突に視界が開ける。


開けた視界に同時に飛び込んでくるのは、ドームの最上部に

届きそうなほどに高い、行政区でひときわ目立つ巨大な塔。中央省庁複合施設だ。


この、他の建物が場所を譲るようにして円形に開けた場所が

町の中心である行政区で、場所が開いているのは、

将来の拡張を見越してのものだって、学者の誰かが言っていたかな。


そして中央省庁複合施設の周囲を取り囲むように並ぶ

少し背の低い建物が各分野の研究機関が入った建物だね。


で、アークタワーはそのうちで一番南にあるものがそれ。


さて、アークタワーには入り口がいくつかあって、

まずは地上、次に屋上で、最後は上層階の発着場の三つなんだけど、

前回は地上の入り口から普通に入ったし、

せっかく飛んでいるんだから上から入ろうかな。


密閉空間特有の停滞した空気を押しのけるように羽ばたき、

上層階の発着場に向かって高度を稼ぐ。

本当は魔工エンジンを使ってもいいんだけど、今はそういう気分だった。

ここはとても静かな空だし、騒音を立てたくなかったのかも。


地面から飛び立つ時と同じくらいに激しく羽ばたいて上昇し、

体の動きが上へ向いたことを確認したら少しの間慣性に任せ、

山なりの軌道を描いて自分自身を発着場の足場に放り出すようにして接近。

重力と抵抗による減速で僕の体はほぼ完璧な軌道で発着場へ降り立った。

うん、とてもいい感じだね。計算通りに行けた。


この発着場は確か40階と繋がってるから……ええと、昨日フィールドワークの

学者たちと話したのは35階。どっちみち少し歩くのは変わらないか。

今度はしっかりと正確な位置を教えてもらわないとね。

──正直あれだけ探して見つからないとは思わなかった。


ワイバーンとしての視力を過信せず謙虚に行くべきかな。うん。



[都市形態: アーコロジー]


アーコロジーとは、バーゼル都市国家連合のすべての居住地で採用されている密閉型かつ完全な自給自足が可能な都市、または居住施設を指す。どのアーコロジーも生活に必須となる水と食料の生産施設に加え、町の地下には複雑かつ大深度の採掘場を有しており、この採掘場はアーコロジーの自重による負荷を考慮して都市の直下からは離れた地点に配置されている。また、山脈よりも高くそびえたつ巨大な防壁と装甲ドームの上にはいくつもの長距離砲が配備され、都市であると同時に要塞を兼ねる。


規模はそれぞれのアーコロジーで異なるものの、研究アーコロジーのロカウルは高さ1000メルハ、円形の防壁の半径は5000メルハ程度である。


連合で最大となる要塞アーコロジー、メイギオルでは高さ4000メルハ、都市半径10000メルハにもなる。


[軍事施設: "ルミナス・ランス" 発射施設]


ルミナス・ランスとは、アジマ王国の首都、王都エトゥスと中枢地域を完全に囲む巨大な山岳の "防壁山地" の間に複数建設された巨大な防空光線砲である。本兵器の出力は流光の主砲の4倍以上になり、どのような標的であってもほぼ即時に崩壊させることが可能とされる。ルミナス・ランスは高さ4000メルハの巨大な呪列鋼製の塔の最上部に最終反射鏡を持ち、塔の長大な垂直構造を利用して光線を形成、複数の光学系を通して最適な波長や光線直径へと収束、反射鏡にて再指向し、目標へと照射される。


この巨大な光線砲を稼働させるには途方もない量の液化マナと定期的な刻印部分の点検、整備が必要であるためルミナス・ランス発射施設には大勢の技術者が配置され、さらに小型目標に対しては過剰火力となる主武装を補助するための無数の副武装や、施設の巨大さを活かした航空基地が併設されているのも特徴である。塔の基部のさらに下、地下部分には光線発振機構の冷却用設備が存在し、冷却液プールや循環用の高出力ポンプなどが該当する。また、冷却配管はポンプの負荷を軽減するために力軸の刻印による補助循環機構を有する。


王都周辺には計8基のルミナス・ランスが配備されており、それぞれは第1から第8戦略防空複合施設という名称が使用されている。主砲の有効射程は100,000メルハ以上。


「アーコロジー」と「レーザー砲」が登場するファンタジーはまあ少数派なんじゃないですかね、おそらくは。すでに「コイルガン」も登場してますし、セルンの防具は「グラフェンエアロジェル」と「単層カーボンナノチューブ」製です。ちなみにヘルメットの遮光バイザーは金の蒸着処理がされています。なんかレーザーっぽい魔法じゃなくてちゃんとしたレーザーなのですが、魔法自体が1世代前の文明からのリバースエンジニアリング品なのでレーザーの性質そのものはまだ解明されていない部分も多いです。


レーザーと言えば大抵は継続照射で目標を焼いたり切ったりする描写が多いですが、ここも技術的に未熟な現在の兵器類は継続照射レーザーで、優れた技術を持つ"第二の文明"のレーザーはパルスレーザーです。実際のレーザーはパルスの方が強いんですが、CWの方が見栄えがいいからかこっちが優遇されがちですよね。

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