30 眼に刺さる
アフィフさんと駐車場で別れて、寺院に向かいます。
遠くに見える尖塔が、近づくにつれ大きくなり、細部に施された彫刻がはっきり見えてくます。その高さに首の角度も大きくなります。
プランバナン遺跡が横の広がりとすれば、プランバナン寺院は縦の広がり。
チケットを見せて、フェンス内に入りました。
崩れた尖塔が、碁盤目に積み重なり、修復を待っています。
石段を登ります。
競って空を突き刺そうとする寺院に囲まれました。
正面のナンディー寺院は、修復中のため足場が組まれています。写真を撮るには、ちょっと残念ですね。
その後ろにそびえるシヴァ神殿に入ります。回廊を巡りながら、暗い神堂で破壊神シヴァやガネーシャ像を見ます。
あいにく曇っていて、夕陽は見えませんでした。
次の神堂へと歩いていると、一陣の風が階段下から吹き込みました。
「痛っ!」
娘が、叫びます。
「痛たたっ!」
眼を押さえている。風が砂埃を運び、眼に入ってしまったようです。
風を避けられる場所に移り、目薬を差します。
「あぁ、だめ。コンタクトの中に入ったみたい」
「コンタクト取るか?」
「取ると何も見えないから、目薬で流してみる」
予備のコンタクトを持ってきていなかったのは大失敗でした。
この後、ラーマ・ヤナ舞踏を鑑賞する予定です。何時間も眼が痛いままにしておくわけにはいきません。かといって、コンタクトを取ってしまっては観られません。
二度、三度と目薬を差します。
「取れたかな……」
娘は、ハンカチを眼に当て、涙を拭っています。
まだ風は強い。
眼を細め、慎重に回廊から降りました。
降りた先にブラフマ神殿が見えましたが、入口は閉ざされています。17時以降は、神殿に入ることはできないようです。
入れないものは仕方ない。周囲をぶらぶらしながら、フェンスの外に出ます。敷地の北側にあるミュージアムに行ってみますが、やはり閉まっています。
仕方なく入口に戻ろうと歩いていると、鹿がいました。フェンスに囲われて、何十頭もの鹿が飼われています。なぜ?
出口に連なるお土産屋さんも店仕舞いに忙しいようで、わたしたちに構ってくれません。
やはり、早めに来るべきだったと思いながら駐車場に戻ると、アフィフさんが手を振って笑顔で待っていました。
まっ、いいか。
ここに書かれているのは、令和7年7月から9月にかけての情報です。渡航される方は、入国審査等の手続や必要な書類、イベントのスケジュールが変更されている可能性がありますので、必ず最新の情報を確認してください。ネット上の古い情報に注意してね。




