Story8 ーブック・エンドー
Story8 ーブック・エンドー
ピノ「ジーク…すまない…苦労をかけたね。
兄さんたちに言って聞かせたよ…ふたりとも理解してくれた。もう大丈夫だよ。きみも早く中へお入り。」
ジーク「あぁ………ピノ。ありがとな。」
ピノ「…いいや…こちらこそ。………
…(すこし格好つけた返事をしてしまったが…ぼくは、ただ家にいただけだから結局のところ何もしていないんだよ…強いて言うなら取り乱してうるさい兄さんたちを叱って状況を説明しただけなんだ…すまない…ジーク…ほとんどきみの弟と妹の寝顔を眺めていただけだったんだ…本当にすまない…。)」
ピノの煉瓦の家に入り、
暖炉の前の大きな椅子に腰掛け
ようやくジークはひと息つくことができた。
ルト/バリ「「ジークごめんよぉ…」」
両手をモジモジさせ俯きながら
ルトとバリはジークに近づき謝罪の言葉を述べた。
ジーク「…まぁ…俺も焦ってて、ちゃんと話せてなかったからな…悪りぃ…。」
双方の歯切れの悪いやり取りに
三男ブタ『ピノ』は
やれやれとひと息した後、
手に持っていた4つのマグカップを
テーブルの上に置く。
ピノ「とりあえず温かいミルクでものんで」
ジーク「すまないピノ」
ピノ「ジークはさっきから謝ってばっかだね、いつもの自信満々はどこにいったんだか!…まぁ、いまはそんなことより。
これからどうしていくかを話し合わないと。」
ホットミルクを手に持ち全員が頷く。
ピノ「ジークの話を聞く限り、ここにもいずれ赤い頭巾を被った少女が攻めて来るだろう。街の建物のほとんどがぼくの防御魔法を加えた煉瓦で出来ているから、しばらくの間は被害を抑えることが出来るとは思うけど…それもそう長くは持たないはずだ。何か対抗する手段を考えないと…」
ジーク「……………」
少ない情報の中、全員が策を捻り出そうと
考え込み無言になる。
部屋の中ではパチパチッという
暖炉の火花だけが音を発していた。
ギィ…
静かな空気の中、
奥の部屋の扉が開く音がした。
トト「…おにい…ちゃん?……ムニャムニャ…」
奥の部屋から寝ぼけた様子のジークの弟
『トト』が脱げかけたサスペンダーを
引きずりながら出てきた。
ジーク「悪りぃトト起こしちまったか。」
トト「…うん……もう…帰るの…?…」
ジーク「いや、まだ帰らないからもう少し寝てて大丈夫だ。」
トトをヒョイと抱き上げ
もう一度寝かしつけようと
背中をトントンと優しくたたく。
トト「………スゥ………グー…グー…zzZ…」
眠りにつき夢の中に戻るトト。
ルト「奥の部屋にぼくの防音魔法かけておくね~♪」
長男ブタの『ルト』は、
自身が演奏する笛の音色で任意の対象物の音を消すことが出来る《防音魔法》が使える。
ジーク「ありがとうルト。」
トトを奥の部屋のベッドに寝かし直し、
幸せそうに眠っているトトとリルの表情を見て、優しい笑みを浮かべるジーク。
そして、その表情は決意の表情に変わる。
再び、三匹のこぶた達がいる
リビングに戻ったジークは、
身支度を整えはじめる。
ピノ「おい、ジーク。いったい何をしているんだい?!」
ジーク「…俺が、あいつを食い止める。」
ピノ「食い止めるったって!君はさっきの戦いで彼女に敵わないと判断して逃げてきたんだろう!?無謀だ!!」
ジーク「じゃあ!!どうする!!!!!」
ドォーーーーーン!!!!!
突如として家の外から
爆発音が聞こえてきた。
ジーク「!!!!まさか!?!?!」
窓から音が聞こえてきた方角を見ると、
街の中央通り【セメントストリート】辺りで土煙が上がっていた。
ー【煉瓦の街 中央通り/セメントストリート】ー
赤ずきんを先頭に
数百体もの小さな岩で出来た人形
《ゴーレム》たちが
その後ろで隊列を組み
セメントストリートを埋めつくしていた。
赤ずきん『オオカミさ~ん♪どこにいるのかなぁ~♪隠れてないで出てきてよ~♪』
そう言いながら赤ずきんは
手に持っている木のかごから
さまざまな大きさの形の赤い岩を取り出して
次々に通りに並ぶ建物に投げつけていく。
投げた岩が建物にぶつかる度に激しい衝撃音と土煙が街中に響き渡る。
だが、赤ずきんが投げた岩が
あたった建物にはキズがつく程度で
一戸も倒壊はしていない。
赤ずきん「へぇ~…(そこそこ強い防御魔法が付与されてるってことね)。」
ニヤリと笑みを浮かべる赤ずきん
赤ずきん「キャハ♪面白いじゃない♪…でもいつまで持ってくれるかなぁ?!!!」
先ほどまで分散して投げていた岩を
街の左奥に建っている教会に狙いを定め。
一点集中で投げ始める。
赤ずきんに続くように後ろのゴーレムたちも
赤ずきん「キャハハハハハ♪」
ー 時は少し戻り
最初の衝撃音が聞こえた後の煉瓦の家 ー
ドォーーーーーン!!!!!
ジーク「!!!!まさか!?!?!」
ジークはすぐさま家を飛び出そうとするも、
ピノに服を引っ張られ静止させられてしまう。
ピノ「行っちゃだめだ!!!!!」
ジーク「んなこといっても!!このままじゃ街が!!!」
聴覚に長けたウルフ属・ジークの耳は、
爆音の中から赤ずきんのカン高い声を聞き取った。
赤ずきん『オオカミさ~ん♪どこにいるのかなぁ~♪隠れてないで出てきてよ~♪』
ジーク「…!?!!………あいつ…俺のことを探してやがる…」
ピノ「なんだって!?」
ジーク「聞こえたんだ…爆音の間に俺を探すアイツのカン高い声が……やっぱり俺が…行かねぇと!!!」
ピノ「それでも駄目だ!君にもしもの事があったら、リルとトトは…君の弟と妹はどうするんだ!!」
ジーク「わかってる…!!
んなことわかってるんだ…
けどやっぱり俺はこのまま隠れて、
街が壊されていくとこを
ただ黙って見ているだけなんて…
出来ねぇんだよ!!!」
ピノ「ジーク…。……!」
ジークの熱い思いを聞いたピノの手が緩む。
ジーク「…ありがとう、ピノ。
…あいつらを頼む!」
ジークは街の中心に向かって走り出した。
ピノ「………兄さん、ジークが戻るまで必ず…
僕らでリルとトトのことを守るんだ!
兄さんたちの力を貸してほしい!」
バリ「もちろん!!」
ルト「お兄ちゃんたちに~任せなさい~♪」
そう言う二匹の兄ブタたちの足は
生まれたての小鹿の様に震えていて
言葉と身体が合っていない。
その情けない姿を見て呆れつつも
少し安堵するピノであった。
ー セメントストリート 教会前 ー
赤ずきん「キャハハハハハ♪壊れちゃえ!
壊れちゃえ~!」
赤ずきんとゴーレムの激しい岩魔法の猛攻に
教会の煉瓦にヒビが入り始める。
ジーク「やめろぉぉぉぉぉおおおお!!!」
赤ずきん「キャハ♪オオカミさん!
やっと出てきてくれた~♪」
スゥゥゥゥゥゥゥ
ジーク「ハフッ!!!!!」
赤ずきん「ざぁんねん…」
息を吸い始めたジークのすぐ横に
赤ずきんは、またもや一瞬で距離を詰める。
メリッ
ジークの腹の辺りで骨が軋む音がした。
赤ずきん「ちょ~っと遅かったかな?」
ジーク「ガハッ…」
ジークの身体が教会の向かいの家の壁まで
吹き飛ばされる。
赤ずきん「お~いオオカミさん、大丈夫~?」
ジーク「………お前…らの目的は…いったい…
…なんなんだ……」
赤ずきん「あ♪よかった生きてた♪
目的?う~ん…そうね…簡単に言えば~
この国、私たちにちょうだい?キャハ♪」
笑顔で赤ずきんはそう答え、話を続けた。
赤ずきん
「赤ずきんたちは
《ブック・エンド》。
…あるお方と共にこの世界を
〖私たちにとって、幸せな世界〗にするために集まった同志。」
ジーク「ブック……エンド……?…。」
赤ずきん「そこでオオカミさん♪
赤ずきん、オオカミさんに提案があるの!」
ジーク「提…案…?」
無邪気にクルクルと回りながら赤ずきんは
ジークに提案をもちかけてきた。
赤ずきん「赤ずきん、
オオカミさんのこと気に入っちゃったから♪
…ねぇ、オオカミさん?
赤ずきんたちの仲間にならない?」
ジーク「………は……?………」
Story8 ーブック・エンドー
Story8 ーブック・エンドー
お読みいただき誠にありがとうございました!
いよいよ存在が明らかになりだした
悪役の組織
赤ずきんから《ブック・エンド》へ勧誘された
ジークは一体どうなってしまうのか!
引き続き読んでいただけたら嬉しいです!