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ブックマーク・ヒーロー ~旅の相棒は三匹のこぶたの悪いオオカミ~  作者: 狼越 佑
第1章~【三匹のこぶた】と【赤ずきん】編~
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Story7ーWho's Afraid of the BIGBADWOLFー

Story7ーWho's Afraid of the BIGBADWOLFー


ピノ「君の頑固さは、誰よりも知ってる。

…ふぅ…分かったよジーク。……兄たちを頼む。

そして、安心してくれ!ぼくの命にかえても必ずきみの弟と妹を守るよ。約束する。」



ジーク「!!!…ありがとうピノ!!!あいつらを頼む!!!」


ピノ「まかせてよ!」



その言葉を聞き届けたジークは

勢いよくピノの家を飛び出し

全速力で長男ブタ『ルト』の家に向かった。






煉瓦の街【ブリックタウン】には

続々と藁の草原から逃げてきたピッグ属やウルフ属が到着していた。藁の草原で何が起きたのか話はどんどん住民達に伝わり…次第に街全体に不安や恐怖が伝播していた。


ジーク「まずい…急がねぇと…!」








ー長男ブタ『ルト』の藁の家ー


ドンドンドンドン!


ジーク「おい!!!ルト!!いるか?!」


ルト「ふぁ~あ…むにゃむにゃ…

…?おやおや~ジークじゃないか~

そんなに血相を変えてどうしたんだ~い?」



扉が開くと中から大きなあくびをしながら

黄色のオーバーオールに黄緑色のシャツを着た

長男ブタ『ルト』が出てきた。



ジーク「おい!!ルト!寝ぼけてねぇでさっさと俺についてきてくれ!!ピノの家に行くぞ!!!」


ルト「いきなり押しかけてきてなんだい?

なんで僕がピノの家に行かなきゃいけないんだい?」


ジーク「説明してる時間がもったいねぇんだ!!頼むから早く来てくれ!!!」


焦るジークと

反比例するようにお気楽なルト。


ルト「う~ん。眠たいからまた今度~。」


ガチャリ。

そう言ってルトは扉を閉めてしまう。


ジーク「おい!!お前何いってんだ!なんで閉めるんだよ!開けろ!!おい!開けろって!!!」


ドンドンドンドンとドアを叩くも反応は無い…

数秒後。

家の中からルトの寝息が聞こえてきた。


ジーク「くそっ!!………」


少し呼吸を整え

何かを決意したジーク。


ジーク「ルト………悪りぃ……」


スゥゥゥゥゥゥゥゥ…

ジークは思いっきり空気中の空気と魔力を

腹の中に吸い込みだす。


スゥゥゥゥゥゥゥゥ…!!!



ジーク「ハフッ………パフッ!!!!!!!」


その声とともにジークの口から

暴風魔法が放たれる。

吹き荒れる風にルトの藁の家は

たちまち吹き飛び

扉とルトだけがその場所に残される。


ルト「………………え?」


何が起きたのか分からず呆然とするルトに

ジークは追い討ちをかける。




ジーク「ルト…お前…美味そうだな…ジュルリ…」




ルト「た、た、た、た、助けてぇぇぇえ!!!!!!」



そう叫びながらルトは少し離れた所に見える

次男ブタ『バリ』の木の家に向かって

全力で走り出した。



ジーク「…ふぅ。この脅しの方が今のあいつには効くだろ。」


ジークは動物の逃走本能を利用するために

わざと悪い演技をしたのだ。

もちろん食べようなんてつもりは毛頭ない。









トントントントントン

ルト「バリ!!!お願いバリ!!!早く!早く開けて!!!」



ガチャリ



バリ「なんだい兄さんいきなり…いまちょっといそがし…」

言い終わる前にルトが

ものすごい勢いで部屋の中へ飛び込む。

そしてその勢いのまま、

水色のオーバーオールに白いシャツの次男ブタ『バリ』の身体にしがみついた。


ルト「バリィィィィィィイ!!!!」


バリ「ちょ…ちょっと兄さん、イタイ!イタイ!なに?なに?!」


ルト「ジークが!ジークが僕を食べようと!」


バリ「ちょっと兄さん落ち着いて!ジークがなんだって?」



ジーク「…リーーーー…バリーーーーーーー!!!!!」

遠くからジークが走ってくる。

だが走ってくるジークの余裕がないその表情は、とても恐ろしいものであった。

血走ったイエローゴールドの瞳に

よだれを垂れ流す大きな口は

野生に戻ったオオカミそのものであった。

それ程までに恐ろしい顔を今まで見たことがなかったバリは、咄嗟に恐怖を覚え

全力でドアを閉めてしまう。


ビターーーーーン!!!!!

止まることが出来なかったジークは

ものすごい勢いで扉にぶつかる。


ジーク「な………なん……で…………」

扉の前で伸びるジーク。




バリ「なになになになに!!!なにあれ!なにー!!!?」


ルト「だからジークがいきなりぼくのことを食べようとしてきたんだってー!!!」


バリ「だからなんでそんなことになってるんだよー!!!!」


ルト「ぼくにもわかんないよー!!!」



ドンドンドンドン

扉を叩く音が二匹の背筋を再び凍らせる。


ジーク「おい、バリ!!ドアを開けてくれ!時間がないんだ!」


バリ「だ、だれが開けるもんか!!!開けたとたんぼくたちを食べるつもりなんだろ?」



ジーク「食べる?何をバカなことを言って…」

そう言いながらも先ほどのルトにした行動を思い出して、額に手を当てる。


ジーク「あぁー…えーっと…あれだ。ルトさっきのは演技だ。すまん。お前が中々出てきてくれないから、強行手段に出たというか…なんというか…」


ルト「うそをつけ!だまされないぞ!!」

バリ「そーだ!そーだ!」




ジーク「……だぁぁぁぁあもうめんどくせぇ!!!!」


頭を思いっきりかきむしった後

ジークは再び思いっきり息を吸い込みだす。


スゥゥゥゥゥゥゥゥ…



ジーク「ハフッ……パフッ!!!!!!」



再び吹き荒れる暴風を前に

木の家も藁の家と同様に

扉とルトとバリの身体だけを残し

きれいサッパリに吹き飛んでいってしまった。



ルト/バリ「「ひいぃぃぃ食べないでぇぇぇぇえ!!!!!」」


ジーク「だから食わねぇって!!…って全く聞いてねぇな………はぁ…仕方ねぇな…。」




ジークは一際大きな声で…


「(棒読み)あー!やっぱり藁の家も木の家も簡単に吹き飛ばせるなー!これがピノの煉瓦の家だったら吹き飛ばせなかっただろうなー!」


それを聞き逃さなかった二匹は

すぐさま立ち上がりブタとは思えない速度で一目散にピノの家に向かって走り出した。


ルト/バリ「「たすけてぇぇぇぇぇぇえ!!!!!」」



ジーク「…………………あいつら、あんなに早く走れたんだな…下手なウルフ属より早ぇぞありゃ。よし!何はともあれ、とりあえずこれでピノの家にあいつらを連れていける。」


そう言うとジークは

ルトとバリにギリギリ追い付かないスピードで走り、後ろからルトとバリを見守りながら

無事にピノの煉瓦の家まで送り届けた。





二匹がピノの家に入ったのを確認すると

街の様子を確認する為

少しだけ街を走り回った。


先ほどまで騒がしかった街が

静まり返っている…

誰一人として歩いていない。


ウルフ属は耳が良い。

その聴力を活かして

ジークはすぐに状況を理解した。

それぞれ家の中から微かに音が聞こえる…

住民たちは皆それぞれの家の中へ避難していた。


ジーク「良かった…家の中ならとりあえず大丈夫だろう。」


煉瓦の街の家の煉瓦のほとんどは

三男ブタ『ピノ』が強力な防御魔法を加えて作った特別なレンガを使用している為、

並大抵の衝撃や攻撃では

びくともしない最強の建築物なのだ。


そう…お気づきな方も多いと思うが…

三男ブタ『ピノ』は

実はとんでもなく凄いこぶたなのだ。



住民たちの安全を確認したジークは再び

ピノの煉瓦の家の前に戻る。


ガチャリ

煉瓦の家の扉が開く


ピノ「ジーク…すまない…苦労をかけたね。

兄さんたちに言って聞かせたよ…ふたりとも理解してくれた。もう大丈夫だよ。きみも早く中へお入り。」


ジーク「あぁ………ピノ。ありがとな。」


ピノ「…いいや…こちらこそ。………

…(すこし格好つけた返事をしてしまったが…ぼくは、ただ家にいただけだから結局のところ何もしていないんだよ…強いて言うなら取り乱してうるさい兄さんたちを叱って状況を説明しただけなんだ…すまない…ジーク…ほとんどきみの弟と妹の寝顔を眺めていただけだったんだ…本当にすまない…。)」







Story7ーWho's Afraid of the BIGBADWOLFー

Story7ーWho's Afraid of the BIGBADWOLFー

お読みいただきありがとうございました!

「三匹のこぶた」をオマージュした今回のお話、

いかがだったでしょうか?

僕自身一番大好きなお話なので精一杯リスペクトの気持ちを込めました!

次回も読んでいただけたら嬉しく思います!

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