Story6ーどうしてそんなに怒っているの?ー
Story6ーどうしてそんなに怒っているの?ー
「大変だーーーーーー!!!!!!」
大きな声を張り上げながら
ピッグ属の男が草原の向こうから走ってくる。
親方ピッグ「ん??何だ?」
ジーク「ン???」
親方ピッグ「おいおい、そんなに慌てて!
いってぇ何があったんてんだ?!ロース!」
ロース「親方!!説明してる時間なんてないんだ!!早くみんなでここから離れないと!!!」
走ってきた『ロース』という名前のピッグ属の男の顔面は血の気が引いており「時間がないんだ!早く逃げないと!」と何度も繰り返すだけで。冷静な状態になれていなかった。
ドッゴォーーーン!!!!!!!!!!
激しい爆音と同時に衝撃と爆風が
土埃を上げて辺りを包む。
赤ずきん「キャハ!ぶたちゃ~~~ん!逃げないでよ~!赤ずきんとお話しよ~よ~!」
ロース「ひぃぃぃぃい…」
赤ずきん「あら?ぶたさんがたくさん~!あっ!オオカミさんもチラホラいるわね♪もしかして赤ずきんをお友達さんのところに案内してくれたのね~!やっさしぃ~♪ありがとう~♪」
ロース「ち、ちがっ!」
ロースが言葉を発した瞬間
赤ずきんがロースの足元に間合いを詰める。
赤ずきん「ごくろうさまっ♪」
赤ずきんの右手には小さな斧が握られていた。
そしてその斧がロースに触れた瞬間…
ロースは小さなパズルのような
《白い文字》になってしまい
その姿を消してしまった。
その《白い文字》を拾い上げた赤ずきんは
赤ずきん「なーんだ違うかぁ…。
まっ♪いっか♪持って帰らないと♪」
そう言って《白い文字》を
エプロンのポケットにしまった。
何が起きたんだ・・・
目の前で仲間が消えた。
どうして、なんで。
ジークは目の前で起こる出来事を理解することが出来なかった。
親方「おい!!!ジーク!!ボケッとすんな!!!」
親方ピッグに身体を突き飛ばされるジーク。
ジークを突き飛ばした後、
飛んできた赤ずきんの小さな斧を身体で受け止め…その姿を《白い文字》に変えてしまった。
ジーク「親方ぁぁぁぁぁぁああ!!!!!!!!」
赤ずきん「やーん!泣けちゃう!!!
身を呈してオオカミさんを守るなんて~!
こういうのを♪お涙ちょうだいっていうのかしら!赤ずきんこういうのすき~♪」
ジーク「ふっざけんなぁぁぁぁぁあ!!!!!」
赤ずきんに殴りかかろうとした時には
既に手遅れだった。
身体が固定されたように動かない。
何故だ…
動かない手足をみた時その理由が分かった。
岩で出来た人形らしき者たちに
手足の自由を奪われていたのだ。
赤ずきん
「ねぇねぇ♪オオカミさん♪
オオカミさんは~
どうしてそんなに怒っているの?
…あ、そっか!
赤ずきんがお仲間さんたち消しちゃったからだよねぇ~!ごめんねぇ~!キャハ♪」
スゥゥゥゥゥゥゥゥ…
ジーク「ハフッ…」
赤ずきん「?」
ジーク「パフッ!!!!!!」
赤ずきん「きゃあ!!!!!」
ウルフの口から放たれた風魔法で
赤ずきんの身体が宙に浮く。
辺りを暴風と土埃が包み
赤ずきんの視界を塞ぐ。
ジーク「今のうちだ!!!お前ら!!!
早く逃げろ!!!!!!」
自分の力では赤ずきんに敵わないと判断し
仲間にも退却を促す。
ジークの声とともに
その場に居たものたちは
森へ向かって走り出した。
ピッグ属もウルフ属も
普段からこの風に触れ慣れているため。
この暴風で視界を遮られても
動くことぐらいわけないのだ。
ジークも全速力で駆け出し
なんとか赤ずきんから逃げることができた。
赤ずきん
「もぅ~!なに~!
フードが汚れちゃったじゃない~!
……で~も♪あのオオカミさん………
……いいなぁ~♪ 」
赤ずきんは不適な笑みを浮かべながら
ジークが走り去った方向を見つめる。
ジークは足を止めることなく走り続けた。
森を抜け【レッキング】の中心街
【煉瓦の街/ブリックタウン】に辿り着いた。
ブリックタウンに入り
三つ目の角を曲がった先にある
煉瓦の家に一目散に飛び込んだ。
ジーク「トト!リル!無事か!?!?!!」
ピノ「おいおい一体なんだってんだい!
いきなり大きな声で飛び込んできて…。」
紺色のオーバーオールに
黄色のシャツを着たこぶたが
少し驚きつつもジークに冷静に声をかけた。
しかしジークにその声は届いておらず…
ジークは部屋を奥まで見渡していた。
だが部屋の中にリルとトトの姿は無かった。
ジークの顔から血の気が引く。
ジーク「おい!ピノ!!リルとトトは!?」
ピノ「いったいどうしたんだい!ジーク!少し落ち着きなよ!」
ジーク「これが落ち着いていられるわけないだろ!!!」
ジークがここまで取り乱す姿を見たことがなかったピノは、何かただ事ではないことが起きたことを理解し語気を強めてジークに向かって言葉を発した。
ピノ「大丈夫!!!!!」
ジーク〈ビクッ〉
ピノ「大丈夫だよジーク…リルもトトも…
奥の部屋で寝ているだけだよ。
ちゃんとここにいるから…安心して。」
その言葉を聞いたとたん全身から力が抜け
ジークは、その場にへたれこんでしまう。
ジーク「…よかった……よかった…。グスッ…」
安堵からかジークの目からは涙が溢れだす。
ピノ「…。ジーク…。
いったい何があったんだい?」
ジークは溢れる涙を右手で拭い上げ
何が起きたかをピノに説明する。
ピノ「なるほど…父さんが…。」
ジーク「すまない!!ピノ…俺のせいで!!!」
ピノ「いや、君が謝ることはないよジーク。君は何も悪くないんだから…父さんは自分の意思で君を守ったんだ。ぼくはその行動をとても誇りに思うよ。」
ジーク「…………ッ。(唇を噛み締める)」
ピノ「起きてしまったことは変えられない。ドライに聞こえてしまうかもしれないが、これからどうするべきかを…すぐに考えなければいけないね…まずは兄さんたちをここに連れてこないと。」
長男ルトと次男バリは煉瓦の街の騒音が嫌で
街から少し離れた所にそれぞれ
藁の家と、木の家を作って暮らしている。
ピノ「とりあえずぼくは兄さんたちを迎えに行ってくるよ!」
ジーク「いや、ピノ…
…おれがルトとバリを連れてくる。」
ピノ「それじゃあ君の身が危ないじゃないか!それにぼくならだいじょう」
ジーク「俺は!!!」
ピノが話終える前にジークが割り込む。
ジーク「俺はウルフ属だ…お前よりも早く走れる…大丈夫だ…必ずルトとバリを連れてくる。だからピノ!頼む!!!俺の代わりにここでリルとトトを守ってやってくれ…頼む…!」
拳を握りしめ震えながら頭を下げるジークにピノは少し呆れた笑みを浮かべる。
ピノ「君の頑固さは、誰よりも知ってる。
…ふぅ…分かったよジーク。……兄たちを頼む。
そして、安心してくれ!ぼくの命にかえても必ずきみの弟と妹を守るよ。約束する。」
ジーク「!!!…ありがとうピノ!!!あいつらを頼む!!!」
ピノ「まかせてよ!」
その言葉を聞き届けたジークは
勢いよくピノの家を飛び出し
全速力で長男ブタ『ルト』の家に向かった。
Story6 ーどうしてそんなに怒っているの?ー
Story6ーどうしてそんなに怒っているの?ー
お読みいただき誠にありがとうございました!
サブタイトル並びに赤ずきんが発したこのセリフは、原作の赤ずきんの「おばあさんのおめめは、どうしてそんなに大きいの?」などのセリフを少しオマージュした形で綴らせていただきました。
次回も過去回想が続きますが、
引き続き読んでいただけたら嬉しく思います!
宜しくお願いします!