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そりゃ移動魔法ぐらいしか使えないけど空間魔法の特異体質なんだけどなぁと思いながら僕はそうだと答えた。
彼女の穏やかな表情が少し曇り緊張した顔つきへと変わったのが分かった。
「今から言うことは他言しないとお約束してほしいのです」
初対面なのに随分と神妙だな。顔を向けると彼女は僕の顔をジッと見つめ僕の返事を待つ。
依頼人の守秘義務があるので当然言わないけど重い話だったり犯罪の話は嫌だなと思う。実際に僕の能力を使って運び屋に仕立てようとする連中は後に絶たないのだ。
僕は美人に弱い。話だけ聞いても損はないはずだ。ヤバい香りがするのは気のせいだ。これはチャンスかもしれないのだから。
彼女は僕が黙っているのを肯定的に勝手にとらえたみたいで話をし始める。
「私の名前は高森穂乃果と申します。異世界人です」