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涙目で体を震わせる少年を見て僕は思った。
この少年は何をそんなにも絶望しているのか。僕には決して絶望的な状況だとは思わない。
魔法封印の錠でもないし結界が張られている牢でもない。
むしろ逃げて下さいと言わんばかりの守りだ。
監視員だっていない。
咄嗟に思った一言を口走らないでいられない。
「逃げれば良いじゃないか」
少年は憤怒を通り越した何とも言えない顔を僕に向けさっきとは違って落ち着いて問いかけてきた。
「おじさん俺達に喧嘩売っているの?」
ゴミを見るような目で見ないでくれとも思うし
さっきも思ったけど僕はおじさんじゃない。
「魔法使えば脱出なんて余裕だろ なぜ使わない?」
夢見がちな痛いおやじが目の前にいるよ。
お前何言っているのという空気感がビシビシ伝わってくる。
もうお前と話す事はないと言わんばかりだ。
僕と少年の間に入った少女の一言があるまでは……
「おじさん 私達を助けてくれませんか?」