6話.母を征服する者
だいぶ表現を抑えたつもりですが、それでも本文には性的な描写が含まれています。
特にNTRが苦手な方はご遠慮ください。読み飛ばしてもストーリーは通じます。
(なお無修正版が気になる方はカクヨムへ)
その頃、敵国の古びた屋敷では、薄汚れた絨毯の上に、金髪を血で汚したカルシオンが転がっていた。
「あっん、そんなに乱暴になさらないで……」
しかもそのすぐ横、天蓋が付いたベッドの上には男女が横たわっている。
あれから三年、母シンシアは休み無く黒獅子ガイオスに身体を求められ、拒絶するも相手し続けてきた。
それが最近では、愛する息子の前でも、平然と相手するようになってしまった。
初めてガイオスと母が交わったのは、敵国へ向かう途中の宿屋であった。
つまり父アクシス=カストールが死んだ日だ。
まだ10歳であったカルシオンは慣れない長旅で疲れていたというのに。
隣室から響く音を聞き、そこで起きている惨状を想像してしまい、眠ることが出来ない。
母の拒絶する声。
母が涙声で必死に懇願するも、布が破かれてしまう音。
そして最後には白鳥が絶命する時にあげるような悲鳴……
王族として生まれ育った母の心を踏みにじり、誇りを粉々に砕き、そして為す術もない女性を……。
カルシオンは粗末なベッドにうずくまり、布団を頭から被って耐えていたが、いつしか少年の中にあった母という存在が霧散していた。
カルシオンが物心のついた頃、兄は習い事で忙しかったので、弟であるは少年は、若くて綺麗な母を独占することが出来た。
転んで膝に擦り傷を作り泣き叫べば、母は慌てて駆け寄り、優しく抱き寄せて頭を撫でてくれた。
慰めてもらっているうちに眠くなり、膝枕をしてもらったのだって一度や二度ではない。
それに雷が鳴った夜などは、母の寝室に忍び込み、一緒に寝てもらった事だってある。
そして成長してからも、どんなに頑張ろうとも跡継ぎではない少年は、父に特別扱いをしてもらえず。
悩み落ち込んでいると、必ずと言っていいほど、母が彼の頑張りを褒めて励ましてくれた。
その優しく温かな眼差しがあったからこそ、少年は厳しい訓練に耐え、剣術で兄を超えるまでになれたのだ。
それなのに……
夫ではない、いや、それどころか夫を殺した張本人を相手にして、母が喜んでいる。
貴族のそれも子爵の家に生まれた誇り高き少年にとって、それは信じられない、許しがたい愚行であった。
しかも母は王族の血筋を引く女性なのだ。
誰よりも品格を保ち、高貴で有り続けなければならない存在。
それが今、安宿の外まで聞こえるほどの大きな声を響かせている。
結局その日、カルシオンは朝まで眠ることが出来なかった。
一方の母シンシアも、夫の仇であるガイオスの事を、初めの一年間は拒絶し続けたが、二年目になると逆らうことを止め、 そして三年目になると……
別に夫を殺した野蛮人に心を許したわけではない。
今も隙きあらば殺したいと考えている。
それでも逆らわないのは、息子を、カルシオンを殺すと耳元で囁かれ脅されたからだ。
しかも息子には、その事実を言うことを禁じられている。
演技とは言え、父の仇に媚びを売る母を、息子はきっと恨んでいるに違いない。
あの日、シンシアが進んでガイオスの相手をした時、男の手下が音を忍ばせて息子を部屋に連れて来ていた。
そうとも気づかずに、彼女は不潔で酒臭い男に”もっと奥を〇〇てください。そして中に出して〇〇せてください”と、哀願してしまったのだ。
それが男に教え込まれた言葉だとしても、息子の前で言うセリフではない。
そして身体で覚えてしまった肉欲に満たされて、それでも恥ずかしさのあまり横を向いた瞬間。
見てしまった。
絶望に染まる愛する息子の顔を、彼女は一生忘れることが出来ないだろう。
しかもその時、自分は満たされた顔をしていたのだ。
それでも代わりといっては何だが、夫に比類する強さを持つ男が、大切な息子に剣の稽古をつけてれるようになった。
ただそれすら虐待と変わらず、途中で彼女が男に泣きつき、自分を好きにしてくれと止めなければ、男は間違いなく木刀で息子を殴り殺していた事だろう。
そして息子の前で痴態を晒し、夫の仇である男の相手をするのだ。
そんな劣悪な環境でも、二人目の息子は逞しく育っている。
最近では最愛の夫だけでなく、無意識の内に長男であるアカシックの顔も、シンシアは思い浮かべないようにしていた。
なぜなら、愛した夫の面影が、色濃く残っているから……
「ああっあっくぅ~~……、イ◯ます……もうお許しになって~~~」