すべての復讐の望みを叶える力を持った女ですが、その力を人々のために使う方法を見つけられました。
すべての復讐の望みを叶える力を持った女がいる。
それは私だ。
私は生まれながら復讐系のすべての望みを一瞬で叶えることができた。
◆
ある日の昼下がり。
婚約者ドッツが金のロングウェーブヘアの女性を連れてやって来た。
「俺ら、結ばれることにしたから! アンタとの婚約は破棄な!」
彼はさらりと言ってくる。
婚約破棄、それは、人生においてとても重要なことだ。
軽く言って良いようなことではない。
けれども彼はその重大性に気づいていないようだ。
「ごめんなさいねぇ~、奪うみたいで~。でもあたしの意思じゃないですからぁ。彼があたしの惚れただけですからぁ、勘違いしないでくださいねぇ~」
ロングウェーブヘアの女性は勝ち誇ったような顔で言ってくる。
私の能力のことは知らないのだろう。
だからこんなことが言える。
「聞いてるか?」
「……ええ」
「なんだよその態度! 婚約破棄されたからって子どもみてぇにいじけやが――っ!?」
まずはドッツからいこう。
私は彼へ視線を向ける。
すると復讐能力が発動されて。
「あ、あだだだだっだっだだっだだだ!?」
彼は急に全身の痛みを訴えのたうち回る。
「イダイイダイ何これ痛すぎぃぃぃ!? あばばばば、あががががが、助けてぇぇぇぇーッ!?」
女性は驚いたような顔をして隣の彼を見ている。
まぁ驚くだろうな。
いきなりこんなことが起きたら。
「さようなら、ドッツ」
呟けば、彼の身は爆散した。
「い、いやあああああ!!」
悲鳴をあげたのはロングウェーブヘアの女性だ。
愛する人が粉々になった恐怖。
きっとそれは凄まじいものだろう。
「な……何を、したの……これは……」
「説明する必要はありません」
「な、何よそれ! 説明しなさいよ! せめて!」
「その必要はないのです、だって――次は貴女、ですから」
笑みを浮かべれば、彼女は顔をひきつらせる。
「い、いやああああ!」
逃げようと走り出して。
その背を光の矢に貫かれる。
「きゃあああああ!」
女性はその場で倒れ込む。
「な、に……よ、これ……」
「他人の婚約者には手を出さない方が良いのですよ。……これ、常識でしょう? ふふ」
数分後、女性も息を引き取った。
悪女でも構わない。
これが私の生き方だから。
◆
ドッツうんぬんの件から二年半、私は今、国防軍の若き長である男性の妻となっている。
その力は国を護るために使える――そう言って、彼は私に求婚した。
悪に見える力だって使い方によっては善にも変わる。
たとえ人を傷つけるものだとしても。
理不尽な剣ではなく盾として使えば人のためになるというものだ。
これまでは私自身のために使ってきた能力だが、これからは、この国のためにこの国の人々のために使う。
◆終わり◆




