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街を護る一族の娘ですが、婚約者から勝手な理由で婚約破棄されてしまいました。~彼の末路は切ないものでした~

 我が一族は代々儀式をすることでこの街を護ってきた。


 災難が降りかからないように。

 実りがあるように。

 人々に幸福があるように。


 そう祈り、ただ、民たちのために身を捧ぐのだ。



 ◆



「悪いけど、婚約は破棄するよ」


 婚約者ドレッチはそう告げてきた。


 私には子孫が必要だ。

 儀式ができる存在を受け継いでゆくためである。


 だから、本来、我が血筋の者との婚約破棄などは認められていない。


 母と父も共に歩んできた。


 その前の代も。


 その前の前の代も。


 ずっと前の代も、だ。


「婚約破棄……!?」

「ああ」

「そんな、なぜ……」

「もっと可愛い女性を見つけたから」

「待ってください、そのようなことは認められていないのですよ。この血筋の者との婚約は破棄できないと街の掟で。それは貴方だって知っているでしょう?」


 ドレッチは「知っているさ」と言いながらも。


「けど、掟なんてどうでもいいことだ」


 彼は自分の決定を変えようとはしなかった。


「婚約は破棄。これは決定事項だよ」

「……本気、なのですか」

「もちろん本気だよ。男なら誰でも、可愛い女性の方がいいだろう?」


 こうしてドレッチは私を捨てた。


 しかしすんなりは終わらない。

 なぜって街の平穏に関わることだから。


 ドレッチの思い通りにはいかなかった。


「ドレッチ! お前! 勝手に婚約破棄したそうじゃないか!」

「何やってんだ!」

「この街を未来を駄目にする気か!?」

「そもそも納得して婚約したんじゃん、婚約前なら拒否できたんだから」


 ドレッチが私との婚約を勝手な理由で破棄したという話が流れると、彼は街の人たちから敵意を向けられるようになって。


「ぎゃぁあああああああ!!」


 ある晩、彼は夜道で何者かに刃物で襲われたうえ樽に入れられて、その狭い場所で一人寂しく死亡した。


「ドレッチさん、亡くなったんですってね」

「ま、あんなことしたらなぁ。そりゃあ誰かはやるよな」

「可哀想に……と言いたいところだけれど、無理ね」

「この街を駄目にするようなことを勝手にしたわけだからな、自業自得だな」


 亡くなったドレッチを憐れむ者はこの街にはいなかった。



 ◆



 ドレッチの死後、私は、街で装飾品の店を営む青年と結ばれた。


 彼は心を固めてくれている。

 共に歩む、と。

 強い決意を胸に隣にいることを決めてくれたようだ。


 私は今日も祈る――街の平穏を。



◆終わり◆

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