その日、婚約破棄を告げる手紙が届きました。~さぁ! これでもう自由です! これからは好きなように生きてゆけるのです!~
私の婚約者は口うるさい。
上品ながら目立たない服を着ろ、だの、口紅は自分に確認して許可を取ってから使え、だの、とにかくいろんなことに口を挟もうとしてくる人だ。
だが、ある日、彼から一通の手紙が届いた。
『君との関係は解消する』
つまり、婚約破棄。
それが手紙の内容だった。
手紙の中身を見てその内容を理解した瞬間、私は、星五つほどが連鎖的に爆発するくらいの衝撃を受けた。
湧き上がるのは歓喜。
思わず、一人寂しくガッツポーズをしてしまったくらいだ。
「いよっしゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
叫んだ拍子に窓が割れてしまったが……まぁ修理は後で頼めばそれでいい。
私はしばらく狂ったように躍り続けた。
足裏の皮が剥けてしまったけれど。
でもそんなことはどうでもいい。
それほどに嬉しかったのだ。
「これで自由うぅぅぅぅぅぅ……だああぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
躍りながらガッツポーズを繰り返す。
「……ふう」
さて、これからどうしようか。
「母さん、婚約破棄された」
「ええっ!?」
「だからもう自由」
「そ、それはそうだけれど……い、いいの……?」
「もちろん。とっても嬉しい」
手紙を見せると母親は驚いていた。
「あ、そうだ」
そう、伝えなくてはならないことがある。
「何?」
母親は年だが今日も美しい。
年齢を重ねたからこその麗しさがある。
「実はさっき、叫んだ拍子に窓が割れてしまって」
「……前もそんなことがあったわね、いいわ、修理を頼むわ」
「ごめん、いっつも」
「いいのよ。ただし、次は気をつけて。まぁ無理かもしれないけれど、なるべく気をつけて」
「うん!」
こうして私は自由を手に入れた。
もう服も口紅も自分で選べる。彼に口出しされることはない。いちゃもんまがいのことを言って私物を没取されることもない。私は私として、私の判断で生きていけるのだ。
「あー、最高」
そうして私は幸せを手に入れた。
もちろん、悪いことはしない。犯罪に手を染めるようなことはしない。が、自由度が大きく上がった。あらゆることに関して選択肢が増え、人生の幅が広がった。
一方、元婚約者の彼はというと。
彼は職場で新入社員から虐めを受け、退社してしまったそうだ。
今は家で親と喧嘩ばかりしているとのこと。
◆終わり◆