表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

977/1194

ある日突然落ち着いた雰囲気で婚約破棄を告げられ絶望しました。が、その後私には良縁がもたらされました。

「なぁ、あのさ、言いたいことがあって」


 婚約者ボルドーはある日突然そんな風に切り出してきて。

 けれどもすぐには気づかない。

 彼が何を今から言おうとしてるのかなんて。


「言いたいこと?」

「そうなんだ」

「ええ、いいわよ。何でも言って? 私にできることなら協力するし」

「ありがとう、じゃあ、言わせてもらうよ」


 少し間を空け、彼は続ける。


「君との婚約は破棄とすることにしたよ」


 空気が凍りついた。


 いや、空気だけではない。


 脳までも。

 脳の奥までも。


 すべてが一瞬で氷と化す。


「え……あの、それは一体……?」

「これが言いたかったことだよ」

「婚約、破棄、って……何よそれ、いきなり過ぎるわ、本気なの?」

「もちろん。本気だよ」

「……そんな、どうして」


 声が無意識に震えてしまう。


「ずっと仲良しだったじゃない、私たち。喧嘩なんてしなかった。だから私、順調にいっているって、そう思っていたのに。貴方はそうは思っていなかったの? 何かが嫌だった? 私のこと、本当は嫌いだったの?」


 ボルドーは首を横に振る。


「好きだったよ。でも、もっと素晴らしい女性に出会ったんだ」

「もっと、素晴らしい……」

「彼女は僕に最上級の愛をくれる、それこそ、君なんて紙くずに見えるくらいにね」


 酷い……どうしてそんなこと……。


 紙くず、なんて……。


「だからさ、これでお別れにしよ? じゃあね」

「待って! お願い、もう少し話をさせて!」

「私にできることなら協力する、そう言ったよね? だったら婚約破棄を受け入れることだって協力だよ」

「違うわ! それは違う、そういうことを言っているのではないの!」


 あれはこういう話と知っていて発した言葉ではない。

 今それを持ち出すのは卑怯だ。

 それに何でもすると言ったわけではない。


「じゃああの言葉は嘘だったのかい?」

「そうではないけれど……本当に協力するって思っていたけれど……でもまさかこんな話だったなんて! 知らなかったから! 喜んで協力できないことだってあるわ」

「協力してよ」

「できないわ! こんなの!」

「じゃ、ばっさりいくよ。君との婚約は破棄するから、さよなら」


 その日以降、しばらく、私はずっと泣いていた。


 実家の自室で。

 親の気持ちなんて一切気にせずに。



 ◆



 早いもので、あれからもう三年になる。


 悲しみと絶望を越えて。

 私は幸福を得た。


 釣りが趣味で料理が得意な資産家の青年と結婚した私は、今、何の悩みもなく生活できている。


 ボルドーと結ばれるより良かったかもしれない。

 今はそんな風に思う部分もある。

 彼と出会えて私の人生は色づき方が変わった。


 ちなみにボルドーはというと、あの後惚れ込んでいた女性にはプロポーズを拒否されたらしい。で、それと同時期くらいにその人とは別のしめじのような女性からストーカーされるようになり、その行為の恐ろしさにやられ、今では自室から一歩も出られなくなってしまったそうだ。彼はストーカーに心を破壊されたのだ。


 けれど同情はしない。


 彼だって一度は私の心を壊したのだから。



◆終わり◆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ