浮気のような行為、二度目ですよね? なぜあやまちを繰り返すのですか? いい加減にしてください、もう許せませんよ。
婚約期間中一度目の浮気のような行為、その際私は許すことにした。なぜなら、問い詰めた時、婚約者である彼シイタマが謝罪したからだ。謝らなかったとしたら、多分、許していなかっただろう。でも彼は懸命に謝罪した、だから、今回だけは見逃すと伝えた。
だが、それから数週間ほどが経った頃、シイタマはまたしてもあやまちを犯した。
彼は飲み屋で出会った女性とその日のうちに深い仲になってしてはならないことをし、さらには、以降も定期的に会うようになったのである。
これはさすがに許せず。
親にも話し、今回は本格的に婚約を破棄する方向で考えることにした。
「シイタマ、あいつ、なんてことしやがるんだ……!」
話を聞いた父は激怒していた。
顔を真っ赤にし、目を大きく開き、眼球を血走らせて。
ふーっ、ふーっ、と息をしている。
まるで正気の失った獣のよう。
「あり得ないわね……」
母は腕組みしながら溜め息をついている。
「二回目とか論外だ! 父に任せろ! 仕留めてきてやる!」
「あなた、仕留めるは言い過ぎよ」
「だが!」
「……大丈夫、分かっているわ。だから……お仕置きはわたしに任せてちょうだい。あなたじゃ上手くやれないでしょう」
「あ、あぁ、そうだな。では、よろしく頼む」
「うふふ。……任せて」
その後私は父と共にシイタマのもとへ行った。
そして父に頼んで婚約破棄を告げてもらう。
婚約を破棄する、その言葉を発したのは、私ではなく父だ。
重要なところを任せてしまうのは申し訳ないような気もして――でも自分で言っても舐められそうで――だから父に頼んだのである。
「婚約破棄ぃ!? どうしてですかぁ!? イミフですぅ!!」
おろおろし始めるシイタマ。
婚約破棄は嫌なようだ。
別れたくて色々やっている、というわけではなかったみたいだ。
「シイタマくんとはもう終わりだ」
だがもはや手遅れ。
私はいつまでも彼のもとにはいない。
彼が大事にしないのなら、私は彼の前から消えてやる。
「ええぇっ!? 誰よりも愛してますよぉ!?」
「浮気のような行為に至っておいて良くそのようなことが言えるな」
「それは誤解なんですよぉ!?」
「馬鹿なことを言うな、証拠物もあるんだ。言い逃れなどできやしない。ではな。さようなら、シイタマくん」
こうして、私とシイタマの婚約は破棄となった。
帰り道、青く澄んだ空には虹がかかっていた。
光ゆえに生まれる奇跡。
それはまるで苦痛や不幸な婚約から解放された私を祝福してくれているかのようであった。
◆
後日、シイタマが亡くなったことを知った。
そんなことは想像していなかった。
でもそんなことになってしまった。
ちなみに、死因は不明らしい。親のかかりつけ医に診てもらっても、死因は不明のままだったよう。ただ、目撃情報によれば、部屋にあった飲み物を飲んだ直後に倒れたそうである。
毒でも盛られたのだろうか?
謎は謎のまま。
時は過ぎて。
次第に忘れられていって――いつしかその話題は消えていった。
◆
「君と巡り会えて良かったよ」
「私もそう思います」
今日、結婚する。
夫となる彼との出会いは、伯父の紹介で顔を合わせてみることとなったことであった。
はじめは乗り気でなかった。
そして一度会った後も「断ろう」と思っていた。
けれども彼はとても気に入ってくれていて。
彼は以降も定期的に私のところへやって来て、熱心に尽くしてくれて――そんな風にしてもらっているうちに、私も彼に惹かれるようになっていっていた。
初めての贈り物がウナギだったのにはかなり驚いたが……。
でも、彼なりの気遣いは感じられたので、それはそれで嬉しかった。
「ずっと無理についてまわってごめんね」
「いいえ」
「でも、今は、少しは好きになってくれてる?」
「もちろんです」
「共に歩もうと思ってくれている?」
「ええ、もちろん」
空に虹がかかる。
未来へと歩み出す私を祝福するかのように。
◆終わり◆




