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おっとり系一人娘フィオネは婚約破棄されるもより良い縁を得る。~動じない者の勝利です~

 良家の一人娘であるフィオネと婚約者カインズは、カインズ宅近くに位置する庭でお茶を飲んでいる。


 これは、婚約者同士となった二人のいつもの行動だ。

 二人でのお茶会は珍しいことではないのである。


 ただ、今日のカインズは、これまでとは違ったことを考えている。


 彼には言いたいことがあるのだ。

 けれども勇気がなくて。

 なかなか言い出すタイミングを見つけられずにいる。


「今日はいい天気だな」

「そうね~」

「まるで空までもが俺の背中を押してくれているかのようだ」

「なぁに? でもそうかもしれないわね~」


 カインズは時折それをほのめかすような発言を入れ込む、が、当然気づいてはもらえない。


「……なぁ」


 やがて彼は重苦しく話を切り出す。


「なぁに?」

「婚約、破棄したいんだ」


 ついに――本題が口から出る。


「何の話?」

「君との婚約を破棄したい、って話」

「冗談ではなくて?」

「ああ、そうだ」

「本気で言っているの?」


 フィオネは少し戸惑ったような顔をしたけれど、数秒後、笑顔になって。


「そう~、分かったわ。カインズの願いだものね、受け入れましょう~」


 こうして二人の関係は終焉を迎えることとなった。


 その後話を聞いたフィオネの父は激怒していた。けれどもその父をフィオネは「きっと、もっと良い縁が待ってるわ~」と柔らかく言って宥めた。フィオネの中には悲しみはないようだった。


 ――後日、フィオネの婚約が破棄となったことを知った富豪の息子がフィオネに婚約してほしいと申し込み、それによってフィオネはその男性と婚約することになった。


「お前の言った通りだったな、フィオネ」

「うふふ~」

「嬉しそうだな」

「そうね、今はとても嬉しい気持ちよ」

「カインズとのことは残念だったが……」

「気にしないでお父様、相手がカインズでなくたってきっと幸せになれるわ~」



 ◆



「ママ! これ食べたい!」

「駄目よ~」

「もー! ケチ! 最悪ママ!」

「そういうことを言うのはやめなさい」


 あれから数年、フィオネは今、第一子の世話に明け暮れている。


 だが育児を強制されているわけではない。

 彼女自身がそれをすることを強く望んだのだ。

 それで育児に集中しているのであって。

 誰かに言われて子どもの面倒をみせられているというわけではない。


 だからフィオネも充実した日々を堪能できている――かなり忙しくはあるけれど。


 ちなみにカインズはというと、あの後女性関係で揉め事を起こすことを繰り返したために『女を不幸にする男』と皆から呼ばれるようになってしまい、女性が誰も寄ってきてくれないようになってしまった。また、彼から声をかけようとしたり接近しようとしても、逃げられるようにまでなってしまって。そのせいで、結婚などとてもできそうにないカインズである。


「どうしようどうしよう、このままじゃ結婚できない……女なんていくらでもいるって思ってたのに……いくらでも代えがきくって思ってたのに……誰に声かけても逃げられる、どうしようどうしようどうしよう」


 今のカインズの口癖はこれだ。


 彼は精神崩壊の一歩手前にいる。



◆終わり◆

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