婚約破棄!? 分かりました、自由に暮らします!
ありふれた日は案外急にありふれた日でなくなってしまうものだ。
「君との婚約は本日をもって破棄とするのん!」
金色の巻き毛が目立つ婚約者エルトンはいきなりそんなことを言ってきた。
かなり驚いたけれど。
けれど婚約破棄を受け入れることにした。
私は自由を選ぶ! ……こうなったなら、だが。
「分かりました」
「なっ、いいのん!? 受け入れるのん!?」
「はい」
「んぅぅ……のおぉぉぉぉん!? びっくりぃ~っん!? 物分かり良すぎぃぃぃ~!!」
エルトンは喜び踊り出す。
何を見せられているのだろう、これは。
「では私は帰りますね、さようなら」
「待って! 躍りはまだ終わってないのん!」
「もう他人ですので」
婚約者同士でなくなった今、彼の行動に付き合う気はない。
私はそのまま彼の前から去った。
◆
あのいきなり過ぎる婚約破棄から一年半、私は親の仕事の知り合いの子息と結婚し、今は恵まれた環境で生きることができている。夫のすすめで、外国語を習ったり、お菓子作りを彼の母から教えてもらったり、色々している。おかげで趣味も増え、毎日、とても楽しい。多趣味というのもなかなか良いものだと今は思う。
ちなみにエルトンはというと。
あの後惚れた人から「口調がキモい、無理」と言われてしまい、家から出られないようになってしまったらしい。
今は、未来に希望がない、と嘆く日々だとか。
◆終わり◆




