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さくっと読める? 異世界恋愛系短編集 2 (2022.3~12)  作者: 四季


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婚約者の姉の指示で殺められました。けれど、女神の計らいで舞い戻り――復讐の果てに、彼とまた共に歩めることとなったのです。

「あの女、やって」


 私は知らなかった。


「承知いたしました、王女」


 婚約者のルッツ王子の姉が私を嫌っていることなんて。

 その人が私を殺めたいほど嫌がっていたことなんて。


 だから分からなかった――送り込まれた刺客に殺められても、それでも、何が起こったのか分からないままで――そのままあの世へ旅立った。



 ◆



 しかし死後、出会った女神から、私は聞くこととなる。


 私がどうして襲われたのか。

 そしてどうして殺められたのかを。


「まさか……ルッツのお姉様の指示だったなんて」


 女神は言った。すべてを知った状態で舞い戻り、復讐を果たし、幸福に生きよと。彼女が言うには、それをしなければ死にきれないらしい。今のままでは安らかには眠れないのだそうだ。


 そして私は帰ることとなる。

 あの世界に。

 一度は死んだ、あの場所へ。



 ◆




「貴女は――とても、とても美しい人だ」


 私は蘇った。

 そしてルッツ王子の前に現れた。


 彼はすぐに私に惚れ込んでくれた。


「ああ……嘘みたいだ」


 彼は涙を流す。


 彼は私が私であるとは知らない。けれどもその涙は確かに私のために流されているものだ。彼は、ルッツ王子は、私を確かに愛してくれていたのだ。彼の心を、本当の想いを、こうして知ることができて良かった。


「嘘みたい、とは?」

「かつて愛している婚約者がいたんだ、その人が貴女にとても似ていて……ごめん、こんなことを言って」

「その方は……」

「謎の死を遂げてしまったよ。もう会えないんだ……」


 そう言って泣く彼を見ていたら、やはりこのまま終われない、と思ってきた。

 彼もまた被害者なのだ。

 真実は知らないのだろうが、彼は、姉の悪質で勝手な選択によって愛する人を失った。


「それは……とても、辛かったでしょうね」

「ごめん……こんな、未練たらたらで……」

「いえ。その女性は愛されて幸せだったと思います」

「でも……僕と一緒にいなければ死なずに済んだかも、って……」

「そんなはずありません」


 そう、私は、ルッツを愛していた。

 否、今でも彼のことは愛しているし大切に想っている。


「その女性は、貴方に出会えて良かったと思っています」


 言いきれるのだ。

 だって私だから。

 もう肉体的には昔には戻れないけれど、心と記憶は確かなものだ。


「――信じてください、彼女の想いと愛を」


 その後私は活動を開始。

 いろんな人脈と方法で調査を行い。

 やがて尻尾を掴むことに成功。


 私を殺すよう指示したのは、やはり、ルッツの姉だった。


 女神の言葉に偽りはなかった。


 それから数ヶ月、私は彼女の行いを世に出した。

 ルッツの姉は世間から批判を浴び。

 国王は彼女との縁切りを強行し、さらに、城からも追放した。


 ルッツの姉はすべてを失うこととなった。


 真実を知ったルッツは怒ることさえできず泣いていたけれど、私に怒りを向けるようなことは一切しなかったし、むしろ感謝の意を示してくれた。


「ありがとう、彼女の死の真相を教えてくれて」

「ルッツ……」

「え?」

「あっ」


 言ってから後悔。

 もうかつての私ではないのに、彼を呼び捨てにするなんて。

 どうかしている。


「す、すみません! 無礼なことを!」

「い、いや、そうじゃないんだ……違うんだ、その……」

「何でしょうか」

「貴女はとても似ている! 愛していた、かつての婚約者に!」


 ……ば、ばれてる!?


「まるで生き写しみたいだ……ルッツ、って、その呼び方も……ああ、どうしてだろう……貴女といると死んだ彼女と一緒にいた頃みたいな気持ちになる……とても幸せな、幸福な、そんな気持ち……」


 その後私はプロポーズされ、ルッツと結婚した。


 彼は知らない。

 私がかつて殺された女性と同一人物だということを。

 それでも感じるところはあるようで。

 彼はいつも、現在の私の中に、過去の私の姿を見ている。


 こうして私はルッツと幸せに生きた。



◆終わり◆

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