義母によって塔に閉じ込められた私は復讐の時を待っていたのですが……。 (前編)
私、リリー・オルテトッテは、領地持ちの家に生まれた。
しかし私がまだ幼いうちに母親は病気にかかり、放置されたため亡くなってしまい、その数年後父親は女性と再婚した。
それからだ、地獄が始まったのは。
義母は、もともと少しながら魔法が使えた私のことを『化け物』と呼び、西の塔へ閉じ込めた。そして、夫婦と彼女の前の夫との子である義妹の三人だけで生活するようになった。義母は私を塔へやった理由を「私のことが気に入らないようで暴れるから」と夫に伝えているようだ。夫、私の父親も、そのくらいの説明だけで納得したようである。もしかしたら、彼自身も、私を少し鬱陶しく思っていたのかもしれない。
とはいえさすがに私を殺す気はないようで、一応少しの食べ物は与えられる。
西の塔は寒い。
しかも見張りは多いもののそれ以外の人はおらず、寂しく不気味だ。
けれども私は折れなかった。
「いつか必ず復讐してやるわ」
それが私の魔法の言葉。
いつだってその言葉が私を支えてくれた。
私は黙々と魔法の練習を続けた。
いつかこの手であの義母を討つ。
そのためになら、いくらでも頑張れた。
◆
二十歳になったある日、私は、一人の青年に出会う。
彼を最初に見たのは、塔の上から。私が住んでいる部屋の窓から下を眺めていると、彼が通りかかった。で、その時たまたま目が合って。予感があった。彼とは仲良くなれるのではないか、と。
それからは上と下で喋るようになった。
で、やがて、彼は私の部屋まで来るようになる。
彼は魔物狩りの仕事をしているらしい。
何でも、異常な腕力を持っていたため、その仕事に就くことを強制されたそうだ。
名はフルルンという。
彼もまた悲しい運命を背負っていたようだ。
しかも、彼は過去に、腕力が一般的な範囲を越えていたために婚約者からも嫌われ切り捨てられるという経験をしたそうだ。
向こうが事情を話してくれたのでこちらも事情を打ち明けることにした。
すると。
「そんなことって! 駄目だよ、そんなの。逃げようよ」
「無理よ、今はまだ」
まだ準備は整っていない。
「どうして!? 諦めるの!?」
「ええ。見張りもいるし……一人で今すぐというのは厳しいわ」
「なら僕も協力するよ!」
「え。やめて、巻き込みたくないわ」
私はいつかここを出る。
けれどその時はまだ来ていない。
もっと力がいる。
そういう意味では協力者の存在はありがたいのかもしれないが……でも、赤の他人を巻き込むのは、あまり良い気がしない。
「君の話を聞いていたら放っておけないよ、酷すぎる」
彼は感情を隠さない。
今にも泣き出しそうな面持ちだった。
そこまで感情的にならなくて良いのに、と思ってしまう部分もある。
「貴方は悲しまなくていいわ」
「でも! そのお義母さんおかしいよ!」
「そうね、だからいずれ私は……彼女を討つつもり」
「だから、協力するって」
「駄目!」
「いいんだ、協力させてほしい」
そして、彼と協力することが決まった。