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魔法使い令嬢、勝手なことを言い出した婚約者にその場でお仕置きする! ~そして偉大な聖女様となる~

 魔法使い令嬢リリーナには婚約者がいる。

 その婚約者というのは、リリーナより一つ年上の青年で、名はオルカッドという。


 美男美女でお似合いの二人。

 周囲はそう言うけれど。

 皆はそういうものと思い込んでいるけれど。


 実際にはそうでなく、オルカッドの勝手さにリリーナはいつも苦労していた。


 それでも何とか二人がやっていけているのはすべてリリーナの我慢の賜物である。


 だが、ある日、オルカッドは非常に勝手なことを言い出した。


「なぁリリーナ。婚約、破棄することにしたんだ。いいな」

「はい?」


 あまりに唐突な展開に怪訝な顔をするリリーナ。


 だがオルカッドは決意したような顔をしている。

 心からの言葉を発している様子で。

 悪いな、なんて、少しも思ってはいないようであった。


「婚約破棄、だ」

「……また急ね、どうして?」

「リリーナより条件の良い女性と知り合ったんだ!!」


 呆れ果てるリリーナ。


「……本気で言ってる?」


 眉間にしわを寄せるリリーナ。

 だがオルカッドは彼女の表情が凄まじく変化していることに気づいていない。

 だから夢をみているような目をしていて。

 輝きを見つめるかのように、条件の良い女性についてぺらぺらと話す。


「ああ! 彼女は俺を愛してくれているし生涯忠実な妻で合ってくれるらしい! しかも! 家は金持ちで、もし結婚したなら俺と親を死ぬまで経済的にも面倒みてくれるらしいんだ! 俺も働かなくていいって言ってるし! こりゃ、これ以上の相手はいないだろ! 条件最高すぎ!」


 オルカッドは何も隠そうとはしていなかった。

 純粋に、喜びの中で、すべてを明かしていた。


「それだけのことで婚約を破棄するの?」

「ああ!」

「……私に借りがあることは忘れたのかしら」

「覚えてるよ、ねずみの群れから助けてもらったって話だろ。でもさ、過去のことなんて、どうでもいいことじゃないか。もう過ぎたことだし。それに、お礼はちゃんと言ったろ」


 恩を忘れたか。

 過ぎたことゆえ軽く見ているのか。


 リリーナはもう爆発寸前。


「だからさ、もう、どうでもいいだろ?」


 ――その一言で、リリーナは爆発した。


「オルカッド……よくそんなことが言えたわね!!」


 リリーナは魔法を発動。

 ちなみにコオロギが大量発生する魔法だ。

 どこからともなく急に大量発生したコオロギは一斉にオルカッドへと突進してゆく。


「う、うわああああああああああ!!」


 コオロギの群れに襲撃されたオルカッドは叫んで気絶した。

 その後コオロギたちに激しく身体のあちこちを齧られて。

 流血したままの状態で放置された彼は、それから一週間ももたず――死亡した。



 ◆



 あれから数年、リリーナは今、国民たちから『偉大な聖女様』と呼ばれ愛されている。


 婚約破棄直後に起きた他国からの侵略。


 その戦いの中で魔法使いとして戦い敵を退けたリリーナは、多くの人たちから尊敬されるようになったのだ。


 また、その後も、戦争被害のせいで食糧不足に陥る国民たちのために、大量のコオロギを生み出した。彼女が作り出したコオロギを粉にしたものを練って食べることで国民は生き延びることができたのであった。


 その件もまたリリーナの評判を高めたと言えるだろう。


 彼女は恋はしない。


 ただ、多くの人たちから敬愛の対象とされており、愛の海を泳いでいるようなものだ。



◆終わり◆

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