驚くくらいさくっと婚約破棄されてしまったので、大人の力を使ってさくっとざまぁしてやります。
その日は突然やって来た。
「お前との婚約さ、破棄するわ」
婚約者レィズン。
薄紫の長くさらりとした髪が特徴的な青年が、関係の終わりを告げてくる。
彼はもう完全に心を決めているようで。
今さら説得などできはしないようだ。
しかも、こちらには何かを主張する権利はないようである。
「そうですか、分かりました」
よいのだろうか?
レィズンが勤めている会社は私の父が管理する大会社の系列会社なのだが。
彼がそこに勤められるよう力を貸したのは私の父だ。
彼が一方的に婚約を破棄なんてするのなら、きっと、父は彼をそこに置いてはおかないだろう。
「本気なのですね?」
「ああ!」
「では、さようなら」
帰り道、特に意味なく空を見上げてみたら、いくつもの色の絵の具を混ぜて水を含めて描かれた絵画のような空だった。
◆
その後私は両親にそのことを話した。
するとやはり父は怒り。
その権力を使い、レィズンをクビにさせた。
そうしていきなり職を失ったレィズンは、一旦実家で暮らすようになったようだ。だが、あれこれ指摘してくる鬱陶しい母親を殴って殺してしまい、それによって拘束された。で、後に処刑されたそうだ。
レィズンは私との関係を壊したために人生を破壊されたのだ。
◆
あの婚約破棄うんぬんから数年、私は歴史ある家の長男である三つ年上の男性と結婚した。
「ぼくを選んでくれてありがとう」
「いえいえ」
「本当に……ありがとう、こんな幼稚な男を」
「いえ、ちょっとおっとりした感じの貴方のことが好きです」
「っ……! て、照れてしまうよ」
彼はすぐに真っ赤になる。
でもそこも好きではある。
可愛らしい感じがするから。
「あはは、可愛いですね!」
「あ、ありがとう……感謝するよ」
◆終わり◆




