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コバルトブルーの海が見える家で、私は告げられる――婚約破棄、その言葉を。

 コバルトブルーの海が見える家で、私は告げられる。


「君にはもう飽きた。だから婚約は破棄とする」


 婚約者エディアス。彼との出会いは風邪を引いた姉の代わりに参加した晩餐会。そこでたまたまぶつかってしまい、謝罪も兼ねて少し喋った。そのうちに彼が私に興味を持ったようで。そこから定期的に会うようになり、やがて、婚約ということになった。


 婚約するまでの期間、彼はとても親切で思いやりのある人だった。

 けれども婚約すると変わってしまって。

 日に日に私への接し方は雑になってゆき、しまいには一緒にいてもほぼ無視するようなこともあって。


 そんな果ての、婚約破棄。


「飽きた、って……身勝手ですね」

「男は己の道を自分で決めるものだ。これは身勝手などではない。これは、男らしい決断力だ」


 だから驚きはしない。

 彼が私への興味を薄れさせていたことは知っていたから。

 驚く理由がどこにあるだろうか。


「そういうことだから、もう去ってくれ。そして、二度と、俺の前に現れるな。君との縁は本日をもって完全に切ったこととなる」


 エディアスは冷ややかな目をして言いきった。


 こうして私と彼の時間は終わる。

 そして関係も。

 彼の選択と発言によって崩れてしまった。



 ◆



「あ~、あいやあいあい、あいほれふぅぁ~!」


 エディアスに婚約破棄を告げられ関係を壊された日から今日で二年となる。私はあの直後から気を紛らわせるために地域の伝統舞踊を始めたのだが、みるみるうちに上達し、今では定期的なライブに踊りで参加するようにまでなっている。個人の貯金額も一年ほどで十倍以上に増えた。


「あぁ~、はいや~あいはい、はい~、っ、っ、っ、ぁいはぃッ!! あいあいはいあいはいあぁほれふぅ~、へいっ、へいっ、へいへいへへへい、はぁ~い~ほぉ!」


 急激に有名人となった私。

 何人か怪しい人からプロポーズを受けもしたが、すべて断った。


 今はまだ踊りに集中していたいから。


 恋とか結婚とか、そういうことをしていられるほど余裕はない。



 ◆



「共に生きましょう」


 ――踊り手になって数年、私はついに結婚することになった。


 相手は歌い手の人だ。

 仕事で出会った。

 多数の仕事を共にこなし、そのうちに愛が生まれた。


「ええ、よろしく」


 私は彼と生きてゆこうと強く思っている。


「貴女と一緒になれ嬉しいです」

「ありがとう。……私もよ」


 ちなみにエディアスはというと、あの後高潮に巻き込まれ自宅ごと流れていったしまったそうだ。


 彼はそれで亡くなったらしい。

 しかも、悲しいことだが、亡骸は見つからないままだったそうだ。



◆終わり◆

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