不思議な力と共に生きる私でも幸せにはなれました。人生、何がどうあったとしても諦めては駄目ですね。
「あなたってホントいつも駄目よね。地味だし、可愛げないし、男受けも悪い……あり得ないわ。あなたみたいな子が娘でがっかりよ、絶望する」
そう言った母は、私の身に宿っている謎スキル『酷いやつ全員ネズミ』によってネズミになった。
あれは私が十八歳くらいだった頃。
毎日のように言葉で虐められていた。
そんなある雨の日、私を侮辱する言葉を並べていた母は急にネズミになった。
そして母は近所の人が定期的に撒いていたネズミ駆除薬によって死んだ。
思えばそれは始まりだったのだ。
意味不明で興味深いこの人生の。
◆
「君は顔は好きだったんだけどさぁ、正直真面目で面白くないよ。てことで、婚約は破棄な」
婚約者エルフレッド。
彼は私のことを愛してくれているようなことをいつも言っていた。
けれどもある日突然萎えたような目で見るようになってきて。
「これで関係は終わり、ばいばい」
そんなある日、婚約破棄を告げられてしまった。
この件によって私とエルフレッドの関係は終わる――が、その翌日ネズミになった彼は、ネズミ嫌いな母親に棒でしばき回されて死亡した。
「うちの息子、あの娘に婚約破棄を告げた途端行方不明になったのよぉ」
「ええ~? 怖いわね、恐ろし過ぎるわ」
「でしょぉ。何なのかしらあの女、不気味だわぁ。一時でも縁があったということが絶望でしかないわぁ。それに、カラスを飼ってるとも聞くのよ。悪魔か何かかしらぁ?」
その後私に関する悪い噂――それも嘘――そんなものを流したエルフレッドの母親もまた、数日のうちに小さいネズミとなり、彼女の嘘の話をよく聞いていた女性たちもまた小型ネズミとなった。
そして蜘蛛に食べられた。
婚約破棄後、私は近所の衣服店で働き出したのだが、そこの先輩店員に少々性格の悪い人がいて。
「あの子ってさぁ~、不気味な噂があるみたいよ」
「ええっ、そうなの?」
「そうみたい~。なんかさ、関係者が消えたりするんだって」
「うそぉ」
「しかも~、呪いとか裏でやってるって噂でぇ。他人の男取ったりもするらしいよ」
「ええ! 何それ! やっば!」
その人とその取り巻きも、数ヶ月も経たずネズミとなった。
そしてどこかへ消えた。
店員らが一斉に店に来なくなったことに店長は驚いていた。
「みんな来なくなっちゃうなんて……ごめんね、一人に仕事を押し付けるようなことになっちゃって」
「いえ、大丈夫です」
「貴女は来てくれてるね、ありがとうね」
「はい。これからも来ます。信じてください」
「もちろんだよぉ! 頼りにしてるからね」
◆
二十五歳になった春、私は結婚した。
相手は干物の製造販売を行っている青年だった。
周囲には「そんな人でいいの?」とも言われたけれど、私は彼の性格が好きだったので、何を言われても「私は彼と生きていきたい」と答えた。
彼は、私が初めて出会えた、純粋に好きになれるような人だった。
◆終わり◆




