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婚約者の母親がいきなり一方的に婚約破棄を告げてきました。なにやら厄介そうなので、縁を切ることにしました。

「ミフォニさん、貴女は我が息子に相応しくないわ――ということで、息子との婚約は破棄ね」


 婚約者オッツレイの母親は私を良く思っていなかった。

 だから勝手にこんなことを言ってきた。


「待ってください、オッツレイさんもそうしたいと言っていらっしゃるのですか?」

「すべては私が決めるのよ」

「ええー……」

「当たり前でしょう? 私はオッツレイの母よ、息子の人生くらい私が決めていいじゃない」


 画期的な発想……。


「だ、か、ら、婚約は破棄ね」

「オッツレイさんとも話をさせてください」

「馬鹿ね、駄目よ」

「そんな! 婚約するのは私と彼なのですよ?」

「知らないわよ、そんなのは貴女の妄想でしょう。すべてを決めるのは私、母なのよ。だから貴女は消えて。母がそう言っているのだから、今すぐ消えなさい!!」


 オッツレイの母親は鬼のような形相で睨んでくる。


 これは厄介だ……。

 この先良いことはなさそう……。


 ということで、婚約破棄を受け入れることにした。


「分かりました。では、さようなら」


 こうして私とオッツレイの関係は終わってしまった。


 まさかの終わり方だ。

 彼が無関係だなんて。

 けれどもそうなってしまったのだ。



 ◆



 あれから二年半、私はある晩餐会にて歴史ある家の子息で領主の男性に見初められ彼と結婚した。


 年齢差は五つ。


 周りからは「少し離れ過ぎている」とも言われたけれど。

 でもお互いに気を遣いあって上手くやれている。

 結婚から一年以上が経った今も関係は良好だし一緒にいれば楽しいと思える。


 悪い関係ではないと思う。



 ◆



 今年で五十歳になる。

 私は今も夫婦で仲良く暮らせている。


 子二人はもう成人した。だから、最近また、夫婦で穏やかに過ごす時間が増えて。子どもがあまり家にいなくなるのは寂しいけれど、良いこともあった。夫と二人でゆったり過ごす、こういう時間もたまには悪くない。


 ちなみにオッツレイはというと――あれからも母親に邪魔され続け、結局、今日まで誰とも結婚できないままだそうだ。


 彼自身は結婚を望んでいるそうで。けれども母親が絶対に話を壊すらしく。どうやっても上手くいかず、婚約しても話が消える、ということばかり繰り返されて。そんなだから本人も生に疲れてきているそうだ。



 ◆



 前にオッツレイの話を聞いてから一年、オッツレイの母親が亡くなったという話を聞いた。


 彼女は不治の病にかかってしまったそうで。

 苦しみ、血を吐きながら、一年にも満たない時を生きて。

 そうして果てたそうだ。


 最期の言葉は「我が息子に女など要らないのよ」だったらしい。



◆終わり◆

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