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納豆を食べていただけなのに……婚約破棄されました。まさかそれだけで、驚きです。が、納豆を食べることはやめませんよ。

 東国から輸入されている食べ物、納豆。

 私はこれが好きだ。


 以前家の前に来ていた納豆売りから購入して食べたところ、豆とは思えぬ美味しさで。


 それからというもの、私は納豆を定期的に食べるようになった。


 豆が苦手な私でもこれなら豆を食べられる。

 それも嬉しい点だったのだ。


 だが。


「なんちゅーもん食ってんだ! きったねぇやつ! くそかよ! ……ったく、がっかりしたわ。まぁいい、婚約を破棄するだけだ!」


 納豆を食べているところを見られてしまったために、婚約者フルーギンから婚約の破棄を告げられてしまった。


 正直驚いた。

 それだけのことで? と。

 浮気でも何でもない。

 ただ納豆という珍しいものを食べていただけ。


 それでも婚約破棄なんてされるの――?


「あーあ、やっぱ、顔で選ぶんじゃなかったわ。こんな変質的な趣味があったなんてなぁ。くっせぇ豆とか食いやがって、女のくせに。くずだろ」


 こうして婚約破棄された私は、それからも納豆を食べ続けた。


 どうせ別れたのだ。

 今さらやめる必要なんてないだろう。

 そのために婚約破棄を受け入れたようなものなのだから――無理に納豆から離れるようなことはしない。


 それから数年。

 同じ納豆好きの男性と知り合い、彼と結婚した。


「死ぬまで、ずっと一緒に、納豆を食べましょう」


 そのプロポーズで私は彼に惚れてしまったのだ……。


 で、今は毎日のように彼と共に納豆を食べている。


「このタレ! 珍しい味ね」

「新しい味が売ってたんだ~」


 好きなもの、好きな味、それを夫婦で共有できるというのはとても楽しいことだし嬉しいことだ。


「なかなかいいわね」

「好きそう?」

「ええ! 美味しいわ」

「今まででだったら何位くらい?」


 最近は納豆もいろんな味が出てきた。


 はずれもあるけれど。

 あたりもある。


 定番の味が最高だが、変わり種を試してみるのも楽しい。


「うーん……三位、くらい、とか?」

「あー、分かるー」

「結構好きよ」

「なら良かった。ちなみに僕も結構気に入ってる感じ!」

「また食べたいわ!」

「同感!」


 ちなみにフルーギンはというと、あの後親の事業が失敗したために家が借金まみれになり、親に勝手に売り飛ばされたそうで――彼は物として扱われる奴隷となってしまったそうだ。


 そして、運悪く、納豆の売り子をさせられて。


 その仕事に心が耐え切れず。

 働き始めて数日で一日中涙がとまらないようになり。

 その数日後に自ら死を選んだそうだ。


 死を選んでしまったのは悲しいことだが――彼の場合はそれもまた運命だったのだろう。



◆終わり◆

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