わがまま王子に婚約破棄を告げられ城から追い出されましたが、意外な人に拾われ、穏やかに暮らせることとなりました。
私の婚約者は王子だ。
名はフルスロッテン。
彼は、その位に見合わない、非常にわがままな人だ。
少しでも気に食わないことがあると周りを侮辱して回るような人物である。
そのため、国民からも人気がない。
将来あの人が王になるのが嫌過ぎる、という理由で自殺者も出ているくらい、人気がない――否、嫌われている。
そんな彼と婚約したとしても幸せになれるはずがない。
皆そう思うだろう?
私もそう思っている。
実際、彼と婚約している身だが、彼といて良かったと思ったことはほぼほぼない。
そんなある日。
「お前! またそんな派手な服を着て! 白かベージュ以外の色が少しでも入っている服は着るなと言っただろうが!」
前から着るものにはあれこれ口出しされていたが、怒られないようそれなりに気をつけてはいた――にもかかわらず、やはりまた、怒られてしまった。
しかも。
「言うことが聞けない女はもう消えろ! 婚約なんか破棄だ!!」
感情的にそんなことまで言われてしまった。
それでも怒っているから勢いに乗って言っているだけだろうと思って流していた――けれども意外に本気だったようで、フルスロッテンは私を無理矢理城から追い出した。
行くあてがなくなってしまった。
だがその直後に私は知り合った――魔界から旅行に来ていた魔族の王に。
どうしようもなかった私は彼についていくことにした。
抵抗はあったけれど。
どうしようもないのでそうすることにした。
◆
あれから数年。
私は魔族の王の妻となっている。
そして、かつて暮らしていたあの国は、今や魔族のものとなっている。
あの国は滅んだ。
いや。
厳密には、王家が滅んだ、に近い。
国という形は崩れてしまったけれど、あの場所はある。
そして、国民のほとんどは、魔族の国の下に入りはしたもののかつてとさほど変わらない――否、むしろ改善しているくらいで、かなり良い暮らしをしている。
ちなみにフルスロッテンはというと。
王家による支配が終わりかけていた頃に、国から逃げ出そうとしたところを国民らに捕まってしまった。
そして、殴られ蹴られされて痛めつけられて。
抵抗できず、ぼろぼろになり……彼は傷だらけになった状態で、絶望の中で死んでいったそうだ。
ま、当然の報いだろう。
私はこれからも生きてゆく。
魔族の王の妻として。
どこまでも、いつまでも、穏やかに。
◆終わり◆




