私に一方的に婚約破棄を告げた彼は翌日からフルボッコ!
「お前との婚約、破棄するから!」
突如そんなことを言われた。
婚約者ルートビビと婚約したのは今から一ヶ月半ほど前。
それから何か揉め事があったわけではない。
にもかかわらず、ここにきて婚約破棄を告げられるという展開。
意味不明としか言えない……。
「お前みたいな鼻が高くなくて花がない女と一緒にいたら俺まで不細工な地味男になっちまう。そんなことになったら高潔かつ偉大な俺の血が劣化してしまうだろう。それだけはどうしても我慢できない。よって、お前との縁を切ることに決めた。代々受け継がれてきたこの国でも一位二位を争う素晴らしい血を守るのが俺の使命なんだ、お前は大人しく消えてくれ」
こうして一方的に婚約を破棄された。
ここまで急に話が進むとは思っていなかった。しかも理由の説明が意味不明ときている。でもこちらが言い返しても話は平行線になるだけだろう。結局受け入れて流すしかないのだ、悔しさがないわけではないが。
◆
あの婚約破棄から六○二日、私は別の男性と結婚した。
今は二人で暮らし始めたところ。
色々な意味で戸惑っているが、彼との未来を前向きに捉えることはできている。
そういえば先日ルートビビについて聞く機会があったのだけれど、どうやら彼はあの後不幸に見舞われ続けたようだ。
私に婚約破棄を告げた翌日、飼っていた犬三匹が一斉に急死。
獣医に調べてもらっても死因は不明、犬には持病はなかったし死ぬ可能性が高まる要素もなかったとのこと。
突然の別れを嘆き悲しんでいたルートビビは、その次の日、階段で足を滑らせてほぼ一階分転落。頭は打たずに済んだものの、身体のあちこちを強く打ってしまい、激痛の中で入院となる。
入院初日、入っていた病院の二階で爆破事件が発生し数人が亡くなってしまう。
二日目には施設内で大規模停電が発生。三日目には強盗が入り入院していた者たちが多数襲われ、血の海となってしまう。四日目には病室一室で立て籠り事件が起き、そうして殺伐とした空気の中迎えた五日目にルートビビはまたしても階段から転落してしまう。そのまま気を失い、しばらく意識を取り戻せなかった。
怪我に怪我が重なったルートビビは、数ヵ月後、ようやく健康になり退院する。
しかし、彼が帰宅すると、両親は何者かに襲われて亡くなっていた。
絶望してしまったルートビビは家の近くの木で首を吊ろうとしたが準備不足のため失敗に終わり、またしても入院することとなる。
二度目の入院の三日目には財布を奪われた。
……と、彼は随分酷い目に遭っていたようだ。
◆終わり◆