妖精遣いですが、結婚前からふらふらしているような男性とはやっていけません。
婚約者アズーリが白銀の髪の女性と馬車に乗るところを目撃した私は、どこへ行くのか聞いてみた。するとアズーリは急に怒り出し「お前には関係ない!!」などと叫んで。こちらはただ行くところを聞いただけなのに、すっかり怒って、飛び出すように行ってしまった。
そこで私は昔から使役している妖精に頼んで二人が何をしているか調査してもらうことにした。
すると、アズーリの白銀の髪の女性は、男女として深い仲になっていることが確認された。
妖精は二人の姿を映像記録魔法で残してくれていた。
『婚約者いるんでしょ? いいの?』
『ああ、いいんだよ。それより、結婚したら会いづらくなるから、今のうちに可愛いお前と一緒にいたいんだ』
『結婚したらもう無理?』
『ああいやそういう意味じゃない。また会えるようにするさ。ただ、少し色々しなくちゃならないから、しばらくは会える時間が減りそうだ』
『……いいわ、わたし、ずっと待っているから』
『ありがとう。忠実なお前のことはずっと一番大好きだよ』
これがあれば婚約破棄だってできる!
私はその方向で考え始めた。
結婚前からふらふらしているような人と人生を共にするなんて絶対に無理だから。
その後私は自宅へアズーリを呼び出し、親と共に、婚約の破棄を告げた。
「はぁ!? 何を言い出すんだ!! 勝手な!! そのようなことをするなら慰謝料払えよ!!」
彼は威勢よくそんなことを言っていたのだが。
「……っ、ま、まぁいいさ、去ってやるよ」
魔法で記録した映像の一部を見せると急激に大人しくなった。
その後私たちは婚約を破棄することとなった。
すべてこちらの思い通りに進んだ。
そして、勝手なことをした償いとして、慰謝料を支払ってもらうことにも成功した。
◆
あれからどのくらい時が経っただろう。
私は今、国で一番の妖精遣いとなり、多くの妖精と共に暮らしながら定期的に入ってくる仕事をこなしている。
アズーリと白銀の髪の女性はというと、あの後、私が使役する妖精から流れた情報によって怒った野生の妖精たちに襲われて死亡したそうだ。
妖精は基本小さい。
けれども魔法を使えるなど普通の人間よりは戦闘能力がある。
だから一斉に襲われれば抵抗できないだろう。
ちなみに、女性の亡骸は野生の妖精の巣へ持ち帰られ、アズーリの亡骸は大型魔物の餌とされたそうだ。
そして私はもうすぐ――国王の長男である王子と結婚するかもしれない。
◆終わり◆




