私と彼の愛、それは、妖精の術などで壊れるものではないのですよ。舐めないでくださいね。私たちは絶対に幸せになりますから。
「これからもずっと愛してるよ、エリザ」
「ありがとうオーウィン」
私たちが出会ったのは学園に通っていた頃。
そして卒業後結ばれるべく動き出し。
家柄が近かったこともあってか周囲からの反対は少なく、スムーズに婚約することができた。
――だが。
「ねぇオーウィン、最近、森へ行く回数多くない?」
婚約から二ヶ月ほどが経った頃、オーウィンの様子がおかしくなった。
彼はやたらと森へ出掛けていく。
けれどそこで何をしているのかは教えてもらえない。
「そうかな? そんなことないと思うけど」
「だって、毎日に近いくらい行っているでしょう。行き過ぎよ。誰かと会っているの?」
「べつに」
「なぜ教えてくれないの?」
「うるさいな! どうでもいいだろ、そんなこと!」
怪しい、怪し過ぎる……。
ということで、私は、直接聞くのではなく尾行して調査することにした。
――結論から言うと、オーウィンが会っていたのは人間の女性ではなかった。
「今日も来てくれたノォ! ありがとォ!」
「ああ、今日もとってもセクシーだね」
ただ、女性と会っているというのは、ある意味合ってもいた。
正解の部分もあったのだ。
彼が会っているのは妖精の女性であった。
「ねぇ、今日サァ、お尻見せてあげるからぁ、生命力搾り取らせてちょうだいネェ」
「いいよ!」
「やったァ、大好きィ」
妖精の酷い行いをどうしても見ていられなくて。
私は隠れることをやめてしまった。
「ちょっと! 何しているの!」
声を出し、二人の前へ出てしまう。
「え、エリザ!?」
「あーうっぜェー」
オーウィンの瞳には不思議な紋章が映り込んでいる。
まさか……妖精に何か術でもかけられているのだろうか?
もしそうだとしたら。
やりようはある。
まだオーウィンとやっていける可能性はある。
私は一気に駆け寄って、片手で妖精の女性を掴む。
「ふぎゃ! は、は、離しなさいヨォッ!」
「貴女、オーウィンに術でもかけている?」
「う、うっさいわネェ! 何でもいいでしょ、放っておいてヨ!」
言わないなら簡単なこと。
彼女を掴む手に力を加えるだけ。
「死にたくないなら話しなさい」
「う――うるさいわネェ! ちょこっと魔術をかけただけ! べつにどうってことなイワ! ただ少し寿命が縮むだ――」
刹那、彼女を握り潰した。
「あ……あれ? どうしてここに……」
「オーウィン、気がついた?」
「エリザ、どうしてこんなところにいるんだろう。何か知ってる?」
「貴方は妖精に術をかけられていたのよ」
「ええ!? 何それ!?」
「この森には妖精が住んでいるのよ」
「ああ、そうだよね、それは聞いたことあるよ」
その後私は分かっていることをすべて話した。
すると彼は謝ってくれた。
そして私と関係を続けていくことを宣言してくれた。
「じゃ、改めてよろしくね」
「こちらこそ。本当にごめん、きっと償うから」
その後私たちは無事結婚できた。
◆
妖精の一件から五年、私は子にも恵まれ、今は四人家族として一つの家に住んでいる。
私たち夫妻と、その子である第一子と、婚約者に理不尽に婚約破棄されて行く場所を失っていたオーウィンの妹――それが今の家族構成だ。
オーウィンの妹は、私をとても慕ってくれている。
だから家に受け入れることを私も許可したのである。
もし彼女が嫌な感じの人だったら、多分、彼女と同じ屋根の下で暮らすことを受け入れはできなかったと思う。
ちなみに、気の毒な彼女の災難の根源である元婚約者の男は、彼女と離れた後に安い酒場で出会った女性に無理矢理手を出してしまい、それによって法に違反してしまって首を落とされることとなってしまったそうだ。
もっとも、それまでの行いが行いなので、自業自得だとしか思わないけれど。
◆終わり◆




