身勝手な婚約破棄ですね。まぁ構いません、お金だけしっかり貰って去ることとしましょうか。
星降る夜、婚約者プトレットから告げられる。
「貴女との婚約だが、破棄とさせてもらうことにした」
それは二人で夕食の時間を過ごした後の宣言で。
それまで一切予兆がなかったためなおさら驚きであった。
だってそうだろう?
つい先ほどまで、普通に、仲良さげに美味しい料理を口にしていたのだ。
そこから婚約破棄の話が出てくるなんて。
誰だって思わないだろう。
そんな展開、誰も想像しないだろう。
窓の外に広がる夜空には数多の星が輝き、硝子越しに見ていてもなおとても眩い夜。
「婚約破棄……どうして?」
「貴女は確かに美人だ。けれども、美人なだけでしかない。だから飽きたんだ」
「飽きた……」
そんな、おもちゃか何かみたいに。
「ごめんな。すまないとは思っている。だが、婚約破棄こそが、わたしの誠意なのだよ」
「そうですか……」
「ということなので、縁は今日で切れるものとしよう。それでは、さらば」
「はい……分かりました、さようなら」
その日がプトレットと過ごした最後の日となってしまった。
――婚約破棄後、私は知人の親に相談し、身勝手過ぎる理由で婚約破棄したプトレットから慰謝料を取ることに成功した。
そして、そのお金で、庭園を造った。
家からは少し離れたところの土地ではあるが、徒歩で行ける程度の距離なので、毎日美しく華やかなそこを見に行くことはできる。
そこへ行くのが私の楽しみで。
毎日のようにそこへ通った。
◆
あれから数年が経った。
私は今かなりの富を築き裕福になれている。
造った庭園に客を入れ入場料を取る、というビジネスで成功したのである。
安定した収入があるので、ゆっくり暮らすことができる。
これは人生においてかなりありがたく嬉しいことだ。
今後もより一層素敵な庭園を生み出しつつ――ある程度自由気ままに暮らせればと思っている。
ちなみにプトレットはというと、共通の話題があって気が合うけれど死神が憑いている女性と結婚してしまい、それから身内を続々亡くしてしまうこととなったそうだ。
で、発狂するに至ってしまったらしい。
彼は生きている。
けれども彼の精神は崩壊しきっていて。
かつての彼はもうこの世にはいない。
そして、今夜もまた、暗い夜空には数多の星が煌めく。
◆終わり◆




